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御曹司のやんごとなき恋愛事情.04
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誰だ?
えらく親しげだな。
俊介はオフィスのドアを思い切り開けた。
「お帰りなさいませ」
「あ、どうも、お邪魔してます」
男は物怖じしない態度で頭を下げた。
「そちらは?」
俊介は自分がいない間に勝手に男を連れ込んでいた優子に、そいつは誰だと詰め寄りたいところだったが、立場上そういうわけにもいかず努めて冷静に対応した。
「丸菱物産で同期だった伊波賢二さんです。三年ぶりにアメリカから帰って来て、訪ねて来てくれたんです」
なんで事務所に?
いや、プライベートで会われても、それはそれでムカつくけど。
「それは積もる話もあるでしょう。どうぞ、ごゆっくり」
俊介は応接室の奥にある自室のドアに手をかけた。
「いえ、今日は顔を見に来ただけですから、これで帰ります。じゃあ、またな優子」
「ええ、連絡待ってるわ」
「失礼します」
そう言うと、伊波という長身で容姿も癪に障るくらい申し分ない男はオフィスを出て行った。
「何だあいつは」
「ですから、昔の同期です」
「そんなことを聞いてるんじゃない」
「昔の男か」
「・・・今は関係ありませんので」
「ということは、前の会社にいた頃はつきあってたんだな」
「もう、昔の話です」
「そう思ってるのはお前だけだ。あいつはまだ、きっとお前のことが好きなんだ」
「まさか、ただの友人です」
「じゃなきゃ、なんでアメリカから帰って来てすぐに顔を見に来たりするんだ」
一度疑い出したらもう止まらない。
「すぐにという訳じゃありませんし、私とだけ会っているわけでもありません。勘ぐり過ぎです」
「お前は、警戒心がなさすぎる!」
「そんなことおっしゃるのは桑原取締役だけです。世間では私なんかはもうとっくに旬が過ぎて、誰も恋愛対象になどにしませんから」
「じゃあ、俺の目がおかしいっていうのか」
俊介は優子に詰め寄った。
「もう、いいじゃありませんか。伊波さんとは何でもありませんから」
「いや、気に食わない。優子なんて呼び捨てにして」
俊介は、優子のことを壁際まで追い詰める。
「取締役・・・」
俊介は優子を強く抱きしめると、思いをぶつける様な激しいキスをした。
「んっ、んんんっ・・・」
ある日、あんな風に男が突然やってきて、優子のことをさらってしまうかもしれない。
自分はそんな時、それを阻むすべがない。
どんなに愛していても、優子との関係はせいぜい愛人止まりだ。
それで優子が幸せなのかと問われれば、普通の男と結婚した方が幸せだということくらい分かっている。
だから、怖かった。
優子に近づいてくる男の存在が・・・。
昔から、優子の周りには男の影がチラついていた。
優子には優子の人生がある。
当然、結婚を考えた相手もいるだろう。
しかし、俊介が最も恐れたことには今のところなってはいない。
えらく親しげだな。
俊介はオフィスのドアを思い切り開けた。
「お帰りなさいませ」
「あ、どうも、お邪魔してます」
男は物怖じしない態度で頭を下げた。
「そちらは?」
俊介は自分がいない間に勝手に男を連れ込んでいた優子に、そいつは誰だと詰め寄りたいところだったが、立場上そういうわけにもいかず努めて冷静に対応した。
「丸菱物産で同期だった伊波賢二さんです。三年ぶりにアメリカから帰って来て、訪ねて来てくれたんです」
なんで事務所に?
いや、プライベートで会われても、それはそれでムカつくけど。
「それは積もる話もあるでしょう。どうぞ、ごゆっくり」
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「いえ、今日は顔を見に来ただけですから、これで帰ります。じゃあ、またな優子」
「ええ、連絡待ってるわ」
「失礼します」
そう言うと、伊波という長身で容姿も癪に障るくらい申し分ない男はオフィスを出て行った。
「何だあいつは」
「ですから、昔の同期です」
「そんなことを聞いてるんじゃない」
「昔の男か」
「・・・今は関係ありませんので」
「ということは、前の会社にいた頃はつきあってたんだな」
「もう、昔の話です」
「そう思ってるのはお前だけだ。あいつはまだ、きっとお前のことが好きなんだ」
「まさか、ただの友人です」
「じゃなきゃ、なんでアメリカから帰って来てすぐに顔を見に来たりするんだ」
一度疑い出したらもう止まらない。
「すぐにという訳じゃありませんし、私とだけ会っているわけでもありません。勘ぐり過ぎです」
「お前は、警戒心がなさすぎる!」
「そんなことおっしゃるのは桑原取締役だけです。世間では私なんかはもうとっくに旬が過ぎて、誰も恋愛対象になどにしませんから」
「じゃあ、俺の目がおかしいっていうのか」
俊介は優子に詰め寄った。
「もう、いいじゃありませんか。伊波さんとは何でもありませんから」
「いや、気に食わない。優子なんて呼び捨てにして」
俊介は、優子のことを壁際まで追い詰める。
「取締役・・・」
俊介は優子を強く抱きしめると、思いをぶつける様な激しいキスをした。
「んっ、んんんっ・・・」
ある日、あんな風に男が突然やってきて、優子のことをさらってしまうかもしれない。
自分はそんな時、それを阻むすべがない。
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それで優子が幸せなのかと問われれば、普通の男と結婚した方が幸せだということくらい分かっている。
だから、怖かった。
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昔から、優子の周りには男の影がチラついていた。
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当然、結婚を考えた相手もいるだろう。
しかし、俊介が最も恐れたことには今のところなってはいない。
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