エロ

星野しずく

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エロ.54

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「よっ!」

 手を上げた元貴のとなりには、なんと服部さんがいた。

「どうも・・・」

 高広はどんな距離感で話せばいいのか分からず、とりあえず挨拶だけして元貴の前に座った。



「お前、何も言ってなかったじゃん」

「別に問題ないだろ?」

「そうだけど、びっくりするだろ」

 目の前の二人が美世とのことを知っているのかと思うと、高広は変な汗が出て止まらなかった。



「今度こそ、やっとうまくいったみたいだな」

「想像にお任せするよ」

「え~、想像してもいいの?」

「バカ、そういう意味じゃないよ」

 高広は顔を真っ赤にして元貴を睨んだ。



「仕事中じゃないんですか?」

 おかしな空気を変えようと、高広は服部さんに話を振った。

「服部さん営業だから、ちょっとだけ時間作ってもらったんだ」

「元貴~」

「いいんだよ、今日の仕事は午前中で終わったようなもんだから、どうせあとは喫茶店で時間を潰す予定だったんだ。そこに元貴君から連絡が入っただけだよ」

「そうですか」



「美世はちゃんと君に本当のこと話したみたいだね」

「はい」

「美世には元貴君には絶対に言わないでって言われてたんだけど、元貴君に君と美世の関係を応援したいって言われてね、僕はどっちの味方になればいいのか迷ったけど、元貴君の話を聞いたら、美世が心配してることって無駄なことだなって思ってね。だって、二人はちゃんと両思いだし、元貴君もそれには大賛成だって言うんだから」

 そんな服部の横で、元貴は目を輝かせながら高広のことを見つめてくるため、高広はどんな顔をしていればいいのか分からない。



「だけど、まだ分からないことがあります。逸子さんと赤ちゃんと三人で一緒に映ってた写真はどういうことなんですか」

「ああ、だって、僕は実際に結婚してるからね。もちろん奥さんは逸子さんじゃないよ。それで、赤ちゃんが最近産まれた。で、あの写真はちょっと手を加えて顔だけ逸子さんにしたんだよ。本当の家族みたいだっただろう?」

 そう言われても、まだ今は笑って聞ける余裕がない。



「そうだったんですか・・・。でも、僕が言うのも変ですけど、単純に二人がつきあってるっていう設定じゃなくて、なんでわざわざ不倫なんてややこしい嘘にしたんですか?」

「まあ、僕たちもこんなことするの初めてだからね。ドラマみたいにうまくはできないよ。だいたい、その話も美世に突然頼まれたんだから・・・。めざとい高広君が僕の指輪を見ているっていう前提でやるしかなかったっていうのが正直なところかな。美世のアパートを訪れたり、夜一緒に出かけてみたりしたって、それを高広君が目撃するかどうかは賭けだったからね。唯一、効果があるだろうっていうのは海でバッタリの時くらいかな」

「そうですか・・・」

 今はすべてが嘘だと分かっていても、高広が美世と服部の関係を疑うために様々なことが行われていたのだという事実を服部の口を聞くのはやはり複雑だ。
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