54 / 55
エロ.54
しおりを挟む「よっ!」
手を上げた元貴のとなりには、なんと服部さんがいた。
「どうも・・・」
高広はどんな距離感で話せばいいのか分からず、とりあえず挨拶だけして元貴の前に座った。
「お前、何も言ってなかったじゃん」
「別に問題ないだろ?」
「そうだけど、びっくりするだろ」
目の前の二人が美世とのことを知っているのかと思うと、高広は変な汗が出て止まらなかった。
「今度こそ、やっとうまくいったみたいだな」
「想像にお任せするよ」
「え~、想像してもいいの?」
「バカ、そういう意味じゃないよ」
高広は顔を真っ赤にして元貴を睨んだ。
「仕事中じゃないんですか?」
おかしな空気を変えようと、高広は服部さんに話を振った。
「服部さん営業だから、ちょっとだけ時間作ってもらったんだ」
「元貴~」
「いいんだよ、今日の仕事は午前中で終わったようなもんだから、どうせあとは喫茶店で時間を潰す予定だったんだ。そこに元貴君から連絡が入っただけだよ」
「そうですか」
「美世はちゃんと君に本当のこと話したみたいだね」
「はい」
「美世には元貴君には絶対に言わないでって言われてたんだけど、元貴君に君と美世の関係を応援したいって言われてね、僕はどっちの味方になればいいのか迷ったけど、元貴君の話を聞いたら、美世が心配してることって無駄なことだなって思ってね。だって、二人はちゃんと両思いだし、元貴君もそれには大賛成だって言うんだから」
そんな服部の横で、元貴は目を輝かせながら高広のことを見つめてくるため、高広はどんな顔をしていればいいのか分からない。
「だけど、まだ分からないことがあります。逸子さんと赤ちゃんと三人で一緒に映ってた写真はどういうことなんですか」
「ああ、だって、僕は実際に結婚してるからね。もちろん奥さんは逸子さんじゃないよ。それで、赤ちゃんが最近産まれた。で、あの写真はちょっと手を加えて顔だけ逸子さんにしたんだよ。本当の家族みたいだっただろう?」
そう言われても、まだ今は笑って聞ける余裕がない。
「そうだったんですか・・・。でも、僕が言うのも変ですけど、単純に二人がつきあってるっていう設定じゃなくて、なんでわざわざ不倫なんてややこしい嘘にしたんですか?」
「まあ、僕たちもこんなことするの初めてだからね。ドラマみたいにうまくはできないよ。だいたい、その話も美世に突然頼まれたんだから・・・。めざとい高広君が僕の指輪を見ているっていう前提でやるしかなかったっていうのが正直なところかな。美世のアパートを訪れたり、夜一緒に出かけてみたりしたって、それを高広君が目撃するかどうかは賭けだったからね。唯一、効果があるだろうっていうのは海でバッタリの時くらいかな」
「そうですか・・・」
今はすべてが嘘だと分かっていても、高広が美世と服部の関係を疑うために様々なことが行われていたのだという事実を服部の口を聞くのはやはり複雑だ。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
【短編】愛することはないと、嫁ぎ先で塔に閉じ込められた。さあ。飛ぼう!
サバゴロ
恋愛
十年続いた戦争が終わり、和平の証として、両国の王子と王女が結婚することに。終戦の喜びもあり結婚式は盛大。しかし、王女の国の者が帰国すると、「あんたの国に夫は殺された」と召し使いは泣きながら王女に水をかけた。頼りの結婚相手である王子は、「そなたを愛することはない」と塔に閉じ込めてしまう。これは王女が幸せになるまでの恋物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる