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エロ.49
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元貴の家に着くと、住居部分の玄関のチャイムを押した。
だが返事はない。
時間的に美世は仕込みをしている最中だ。
やはり店の方に二人はいるのだろう。
店の勝手口に鍵はかかっておらず、チャイムもない。
高広は「おじゃまします」と言ってそこから店内に入った。
「おお、高広やっと来たか」
「やっとってお前、俺は別に来るつもりじゃなかったんだ。ただ、お前が話の途中で出てっちゃうから」
当然美世もその場にいるが、とてもそちらを見ることは出来ない。
「じゃ、役者が揃ったって事で、姉ちゃん本当のことを話してよ」
「元貴、何言ってるの?本当ってなによ。もう全部話したでしょ」
「姉ちゃん、俺は姉ちゃんのこと大好きだよ。だけど同じくらい高広のことも好きなんだ。だからさ、二人には幸せになってもらいたいって思ってる。俺に変な気遣いとかして、二人が自分の気持ちに素直になれないのとか、近くで見てて耐えられないんだよ。俺ももう子供じゃないんだからさ、姉ちゃんは自分の気持ちに正直に生きてよ。じゃないと俺だけ自由にとか自分の気持ちに正直に生きるとか出来ないよ。俺の言いたいのはそれだけ。じゃあ、あとは二人でちゃんと話しして。あ、姉ちゃん、俺、昨日服部さんに弟として会ってきたんだ。それで、姉ちゃんの高広に対する気持ちもちゃんと聞いたから。嘘だと思うなら、直接服部さんに聞いてくれていいよ」
「えっ!ちょっと、元貴!」
元貴は自分の言いたいことを言い終えてすっきりしたのか、「俺はこの辺で」と言って店を出ていってしまった。
「元貴!」
美世が叫んだあとの店内はシンと静まり返った。
「すみません、もう俺の顔なんて見たくないですよね。心配しなくてもいいですよ、もう帰りますから」
高広は二人の関係は終わったのだからと、つい敬語を使ってしまった。
「ちょっと待って」
美世は携帯を取り出すと高広に背を向けた。
「あ、もしもし、今大丈夫ですか?すみません急に電話なんかして。あの、昨日元貴が会いに行ったって本当ですか?ええ・・・、それで、どんな話を・・・。そうですか・・・、分かりました。いえ、いいんです、私の身勝手に付き合わせてしまって、すみませんでした。それでは・・・」
話を終えると美世は高広の方に向き直った。
「ああ、もう・・・、元貴ったら・・・。まだ子どもだと思ってたのにね」
「・・・」
高広は美世が何を言おうとしているのか分からず、無言のまま次の言葉を待った。
「今、服部さんに電話して聞いたわ。元貴が言ってた事本当だった。あれかしらね・・・、やっぱり男同士の方が分かり合えるのかしら。それとも末っ子で甘え上手なのかしら」
美世の独り言の意味が全く分からない。
「私が言わなくても、元貴が話すんだろうけど、私がちゃんと言わないと、きっと元貴にすごく叱られちゃうんだろうな」
ますます意図するところが分からず、高広の困惑は増すばかりだ。
「服部さんとは何にもないわ。兄妹っていうのは本当だけど。高広君が疑ってたようなことは一切ない」
「そうですか・・・」
高広はもうそのことについてあまり興味を覚えなかった。
そうであっても、自分と美世の関係が復活することとは別の話なのだから。
「高広君が見たキスマークは自分でつねってわざとつけたの」
「えっ・・・」
「どうしてかって?他に男の人がいるって高広君に思わせるため」
「意味が分かりません」
高広は困惑した表情で美世の顔を見た。
だが返事はない。
時間的に美世は仕込みをしている最中だ。
やはり店の方に二人はいるのだろう。
店の勝手口に鍵はかかっておらず、チャイムもない。
高広は「おじゃまします」と言ってそこから店内に入った。
「おお、高広やっと来たか」
「やっとってお前、俺は別に来るつもりじゃなかったんだ。ただ、お前が話の途中で出てっちゃうから」
当然美世もその場にいるが、とてもそちらを見ることは出来ない。
「じゃ、役者が揃ったって事で、姉ちゃん本当のことを話してよ」
「元貴、何言ってるの?本当ってなによ。もう全部話したでしょ」
「姉ちゃん、俺は姉ちゃんのこと大好きだよ。だけど同じくらい高広のことも好きなんだ。だからさ、二人には幸せになってもらいたいって思ってる。俺に変な気遣いとかして、二人が自分の気持ちに素直になれないのとか、近くで見てて耐えられないんだよ。俺ももう子供じゃないんだからさ、姉ちゃんは自分の気持ちに正直に生きてよ。じゃないと俺だけ自由にとか自分の気持ちに正直に生きるとか出来ないよ。俺の言いたいのはそれだけ。じゃあ、あとは二人でちゃんと話しして。あ、姉ちゃん、俺、昨日服部さんに弟として会ってきたんだ。それで、姉ちゃんの高広に対する気持ちもちゃんと聞いたから。嘘だと思うなら、直接服部さんに聞いてくれていいよ」
「えっ!ちょっと、元貴!」
元貴は自分の言いたいことを言い終えてすっきりしたのか、「俺はこの辺で」と言って店を出ていってしまった。
「元貴!」
美世が叫んだあとの店内はシンと静まり返った。
「すみません、もう俺の顔なんて見たくないですよね。心配しなくてもいいですよ、もう帰りますから」
高広は二人の関係は終わったのだからと、つい敬語を使ってしまった。
「ちょっと待って」
美世は携帯を取り出すと高広に背を向けた。
「あ、もしもし、今大丈夫ですか?すみません急に電話なんかして。あの、昨日元貴が会いに行ったって本当ですか?ええ・・・、それで、どんな話を・・・。そうですか・・・、分かりました。いえ、いいんです、私の身勝手に付き合わせてしまって、すみませんでした。それでは・・・」
話を終えると美世は高広の方に向き直った。
「ああ、もう・・・、元貴ったら・・・。まだ子どもだと思ってたのにね」
「・・・」
高広は美世が何を言おうとしているのか分からず、無言のまま次の言葉を待った。
「今、服部さんに電話して聞いたわ。元貴が言ってた事本当だった。あれかしらね・・・、やっぱり男同士の方が分かり合えるのかしら。それとも末っ子で甘え上手なのかしら」
美世の独り言の意味が全く分からない。
「私が言わなくても、元貴が話すんだろうけど、私がちゃんと言わないと、きっと元貴にすごく叱られちゃうんだろうな」
ますます意図するところが分からず、高広の困惑は増すばかりだ。
「服部さんとは何にもないわ。兄妹っていうのは本当だけど。高広君が疑ってたようなことは一切ない」
「そうですか・・・」
高広はもうそのことについてあまり興味を覚えなかった。
そうであっても、自分と美世の関係が復活することとは別の話なのだから。
「高広君が見たキスマークは自分でつねってわざとつけたの」
「えっ・・・」
「どうしてかって?他に男の人がいるって高広君に思わせるため」
「意味が分かりません」
高広は困惑した表情で美世の顔を見た。
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