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エロ.32
しおりを挟むもう一度シャワーを浴びたあと、美世が言った。
「泊ってく?」
「えっ・・・」
どうしてそんなこと言うの?
俺なんかより服部さんのことが好きなんじゃないの?
嬉しいはずの美世の言葉が高広を混乱させる。
だけどその口はいつの間にか「いいの?」と言っていた。
「・・・うん。お店休みだから」
少し微笑んだ様に見えたのは欲目だろうか。
「私のジャージじゃ小っちゃいかな?」
美世はクローゼットの中から高広が着られるものを探している。
夢みたいだ・・・。
だけど、俺をこんなに喜ばせておいて、やっぱりその時が来たらポイっと捨てたりするんだろうか。
「ごめん、こんなのしかないけど」
「いいよ、なんでも」
高広は美世から受け取ったジャージの上下を着た。
「ちんちくりんだね」
「笑うなよ」
「だって」
こんな幸せでいいんだろうか。
美世の狭いベッドでくっついて眠った。
美世の香りでいっぱいの空間は高広の心を満たした。
美世の身体に触れては元気になってしまう自身と格闘しながら朝を迎えた。
「朝帰りとかして大丈夫?」
「うちの親、昨日から友達の別荘に泊まってスキー三昧。休みが終わるギリギリまで帰って来ないよ」
「あら、元気なご両親ね」
「元気っていうか、じっとしてられないみたい」
「高広君はご両親に似なかったの?」
「小さい頃連れ回されたから、もう沢山」
こんな話もしたことがない。
美世とは夜に会ってセックスをするだけだったから。
美世のことは放っておいても元貴がべらべらと話してくれる。
だけど、美世は高広のことをあれこれ詮索したりしなかった。
自分からそんな話をするのも変だし、美世はそういうことに興味がないのだと思っていた。
「じゃあ、今日もずっとうちにいる?」
「えっ・・・」
「そんなのはさすがにつまんないか」
「つまんなくない!!」
つい声が大きくなってしまって慌てた。
美世はクスッと笑うと「朝ごはん作るね」と言って台所へ行ってしまった。
「どこか行きたいところないの?」
「ない」
「・・・そう」
美世が作ってくれた温かい朝ごはんを食べた。
美世が何を考えているのかは分からない。
だけど、美世の方からそんなことを言ってくれるだけで十分だった。
「美世さん・・・」
結局さっき出てきたばかりの寝室に戻って、再び身体を重ねた。
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