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エロ.05
しおりを挟む「ヤッター!待ちに待った夏休みがついにやって来ました!!」
徳馬は大声ではしゃぎながら元貴と高広の周りを駆け回った。
今日は終業式で、明日からは夏休みに突入するのだ。
「何言ってんだ、徳馬は毎日塾通いだろ?」
元貴は呆れた様子で言った。
「それはそうだけど、休みがないわけじゃないし、夏は夏だろ?海行こうぜ、海!」
「海?」
元貴はありえないという表情に変わる。
「でさ、出来たら元貴の姉ちゃんも一緒に行けないかな~なんて!」
「んなの無理に決まってんだろ」
「なぁ頼むよ。俺の夏はこのままじゃ塾と模試だけで終わっちゃうんだよ?そりゃ、受験生だってのは分かってる。だけど、高校最後の夏休みだぜ。元貴と高広は遊びに行く余裕があるだろうけど、俺は海というこれぞ夏という一日が過ごせれば、もうあとは贅沢言わない。だからさ、お願いします!元貴、姉ちゃんに聞くだけでもいいから、頼む」
確かに、同じ受験生でもほとんどの時間を塾に奪われる徳馬と違って元貴と高広には自由に使える時間がある。
しかも徳馬の場合、家では母親が待ち構えていて、息つく暇もないということだ。
元貴たちは、勉強の息抜きにカラオケに行ったり、ゲーセンに行くことは普通に出来る。
丸一日出かけたってそんなに問題にはならない。
そう思うと、徳馬の過酷な状況に対して同情する気持ちが湧いてきた。
「分かったよ、聞くだけだからな。期待するなよ」
そう答えた元貴に高広は驚いた。
「おい、元貴は海行きたいのかよ。俺は行かないからな」
「何でだよ。俺、お袋が生きてた頃はよく連れてってもらったから、海好きだぜ。高広は海嫌いなのか?」
死んだ母親の話などを持ち出されては、非常に反論しづらくなる。
「嫌いってわけじゃないけど・・・」
高広の両親はバリバリのアウトドア派で、小さい頃は両親と三つ下の妹ひよりの家族四人でしょっちゅうキャンプに出かけた。
しかし、高広もひよりも思春期に入ると家族と一緒に出掛けるよりも友達と過ごすようになり、今は両親二人で気ままに出かけているのだった。
だから、海も山も川も好きだし、その楽しみ方も知っている。
しかし、普段の高広はインドア派で通しているため、そんな部分を知られるのは気恥しかった。
「じゃあ、高広もオッケーってことでいいんだな?でさ、行くのはやっぱお盆休みしか無理なんだけど、元貴の姉ちゃんの店もお盆は休むよな?」
「まあな、母さんの墓参りもあるし。お盆や正月は会社が休みだから店開けても客が来ないから」
「そっか。神様!どうか元貴の姉ちゃんがOKしてくれますように!そしたら俺、もっと勉強頑張ります」
徳馬は天に向かって願いをかけている。
「じゃあまた連絡するよ」
「うん!ありがとな元貴!」
徳馬はもう決まったかのごとく、軽やかな足どりで去って行った。
「まだ決まったわけじゃないのに、徳馬のやつあんなにはしゃいじゃって。元貴、安請け合いして大丈夫なのか?」
「ああ。姉ちゃんにもさ、たまには息抜きして欲しいと思ってたところなんだ。世話になってる分際で偉いこと言うつもりなんて無いけど、姉ちゃん仕事と家の事ばっかで、自分の楽しみのために出かけるとか、全然しないんだよ。そりゃ、店は楽しんでやってるみたいだけど、それだけじゃやっぱ申し訳ないていうか・・・、まあ今の俺に出来るのは頑張って勉強して、公立の大学に入ることしかないんだけど」
「だよな・・・。それにしても海か~」
元貴と高広はファミレスで昼飯を食べたあと、そのまま美世の店が開く時間までそこで勉強をした。
高広はこんな真っ昼間から問題集を広げて、必死で勉強するのは格好悪いから自分だけだったら絶対にやらなかっただろう。
だけど、元貴の家の事情を思うと、そんなくだらないプライドにしがみついている自分の方が格好悪く思えるのだ。
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