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もう君を絶対に離さない.74
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「ハ、ハハッ、私って本当にバカだよね・・・。耕太の近くにいたら、きっといつか振り向いてくれるんじゃないかって、ホントは思ってたんだ・・・。そばにいるだけでいいって言っておきながら、やっぱりずっと期待してた。だって、好きなんだもん、しょうがないじゃん。気持ちが止まらないんだもん、ねえ・・・、耕太が好き・・・、大好き・・・」
泣きながら野崎の背中に向かって美子は思いの丈を全てぶつけた。
だけど、野崎は振り向くことはなかった。
美子は止まらない涙を拭いながら、服を着て、荷物をまとめた。
「さよなら・・・、耕太」
「ああ、元気でな」
玄関を出るとき、野崎は美子にそんな言葉を掛けた。
「ほんと・・・、無神経」
こんな時に優しい言葉なんて要らない。
余計につらくなるだけなのに・・・、耕太は本当に女心が分かってない。
美子はいつになったら忘れられうのか分からないこの気持ちを抱えたまま、一人ぽっちのアパートに帰るのだった。
みこ・・・、ごめんな。
俺は本当に勝手な奴だな・・・。
利用するだけ利用して・・・、みこの気持ち分かってたくせに、冷たく突き放して・・・。
だけど、いくら一緒にいても、みこには心が動かないんだ・・・。
耕太も男だ。だから抱こうとすれば抱けたと思う。
でも、美子は俺にとっては大切な友人で、俺のことを好きでいてくれるからって、そんな関係にはなりたくなかった。
野崎はしばらくそんなことを考えていたけれど、頭を振って気持ちを切り替えた。
今はこの作品を仕上げることに集中しよう。
そうやってよい作品を世に出して一人前になったら、美子と一緒に仕事ができるかもしれないんだから。
・・・まあ、美子は嫌がるかもしれないけど。
野崎と離れた寂しさと悲しさに押しつぶされそうだった美子のことを、助けてくれたのはやはり養成所の存在だった。
レッスンで体を動かし、大きな声で歌ったり、セリフを言ったりといった養成所では当たり前のことが、落ち込んでいた美子のことを徐々に元気にしていった。
今でも野崎のことを好きな気持ちは変わらない。
だけど野崎と離れて一ヶ月経った今、少しだけ自分は野崎と再会する前の自分に戻ってきた様に感じていた。
野崎と出会ってからは、野崎が自分の全てになっていた。
もちろん大学にも養成所にも行ってはいたけれど、心はいつも野崎でいっぱいだった。
その割合が少しずつだけど、変化しているのを感じる。
そして、野崎に気に入られようとするあまり見失っていた自分自身を取り戻しつつあった。
美子と会わなくなってからも、結局は美子が紹介してくれた養成所の子からの紹介で、演者探しに困ることはなくなっていた。
本当はそのことだけでも美子にお礼が言いたかったが、今はまだその時ではないと、野崎はもっと先の未来に自分の想いを託していた。
守はあの日、キスだけで終えたことを一ヶ月経った今、とんでもなく後悔していた。
守のバイトは家庭教師だ。
そして、十二月の今、高校受験は大詰めにさしかかっているのだ。
しかも、教え子三人のうち二人が受験生ときている。
当然、守のバイト時間も回数も以前とは比べ物にならないくらいに増えた。
つまり、瑠璃子とゆっくり会う時間がほとんどなくなってしまったのだ。
泣きながら野崎の背中に向かって美子は思いの丈を全てぶつけた。
だけど、野崎は振り向くことはなかった。
美子は止まらない涙を拭いながら、服を着て、荷物をまとめた。
「さよなら・・・、耕太」
「ああ、元気でな」
玄関を出るとき、野崎は美子にそんな言葉を掛けた。
「ほんと・・・、無神経」
こんな時に優しい言葉なんて要らない。
余計につらくなるだけなのに・・・、耕太は本当に女心が分かってない。
美子はいつになったら忘れられうのか分からないこの気持ちを抱えたまま、一人ぽっちのアパートに帰るのだった。
みこ・・・、ごめんな。
俺は本当に勝手な奴だな・・・。
利用するだけ利用して・・・、みこの気持ち分かってたくせに、冷たく突き放して・・・。
だけど、いくら一緒にいても、みこには心が動かないんだ・・・。
耕太も男だ。だから抱こうとすれば抱けたと思う。
でも、美子は俺にとっては大切な友人で、俺のことを好きでいてくれるからって、そんな関係にはなりたくなかった。
野崎はしばらくそんなことを考えていたけれど、頭を振って気持ちを切り替えた。
今はこの作品を仕上げることに集中しよう。
そうやってよい作品を世に出して一人前になったら、美子と一緒に仕事ができるかもしれないんだから。
・・・まあ、美子は嫌がるかもしれないけど。
野崎と離れた寂しさと悲しさに押しつぶされそうだった美子のことを、助けてくれたのはやはり養成所の存在だった。
レッスンで体を動かし、大きな声で歌ったり、セリフを言ったりといった養成所では当たり前のことが、落ち込んでいた美子のことを徐々に元気にしていった。
今でも野崎のことを好きな気持ちは変わらない。
だけど野崎と離れて一ヶ月経った今、少しだけ自分は野崎と再会する前の自分に戻ってきた様に感じていた。
野崎と出会ってからは、野崎が自分の全てになっていた。
もちろん大学にも養成所にも行ってはいたけれど、心はいつも野崎でいっぱいだった。
その割合が少しずつだけど、変化しているのを感じる。
そして、野崎に気に入られようとするあまり見失っていた自分自身を取り戻しつつあった。
美子と会わなくなってからも、結局は美子が紹介してくれた養成所の子からの紹介で、演者探しに困ることはなくなっていた。
本当はそのことだけでも美子にお礼が言いたかったが、今はまだその時ではないと、野崎はもっと先の未来に自分の想いを託していた。
守はあの日、キスだけで終えたことを一ヶ月経った今、とんでもなく後悔していた。
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そして、十二月の今、高校受験は大詰めにさしかかっているのだ。
しかも、教え子三人のうち二人が受験生ときている。
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つまり、瑠璃子とゆっくり会う時間がほとんどなくなってしまったのだ。
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