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努力追放編
風前の灯
しおりを挟む俺は超高速移動をして、あっという間に兵士達の目の前に現れると。
「おらー!!」
ブンッ!
「ぐえっ!」
まずは一人の首根っこを捕まえて、ぶん投げてから、空中にいるそいつに向かってキックを放つ。
ドカッシャーン!
「ん?」
俺の蹴りをまともにくらったその男は、なんとそのまま施設内の精密機械にめり込んでしまった。
高級そうなパーツが破損している。緑色の液体が漏れ出し床に広がっていった。
俺は慌てて機械に駆け寄ろうとしたのだが、その時だった。
先程の緑色の液体が爆発的に膨れ上がると、その体積を数倍にして部屋中に飛び散ったのだ。
【雲泥城壁《バリアー》】
飛び散る緑色のどろどろした液体が襲いかかってくるがバリアーを張って、一安心である。
そして兵士達が液体に触ると…………。
―――ビリッ!!
電撃のような光が走ったかと思うと、兵士の一人が煙を上げて倒れてしまった。
「精密機械ってバラバラになったらもう使えないよな」
俺はそう言いながら、さらに精密機械に攻撃を加えようと振りかぶる。
と、その時。外がガヤガヤと騒がしくなった。
「侵入者だ!」
「捕らえろ!」
下をみるとマルティネ軍が施設内を取り囲んでいた。やっとお出ましのようだ。
俺は建物内にいる残りの兵士を全て倒して、素早く階下へと降りていく。
「おい!あれを見ろ」
「なんだあのスピードは?人間なのか?」
「とにかく捕まえるぞ」
マルティネ軍は俺のあまりの素早さに驚いているようだ。まだ、10分の1の実力も出していないけどね。
外に出た俺は両手を広げて、わざとらしく立ち止まる。早く攻撃してくるのだ。
マルティネ軍の魔法隊が一斉に詠唱を唱え始めた。
「さあこい」
「「「「乱離骨灰《ドラゴンファイアー》!」」」
ズガガガーーン!
数十に及ぶ火球が放たれるが、全て俺の前で消滅する。
兵士達はあまりの出来事に目を丸くするしかできない。
「何が起きたんだ?」
「もう一度だ」
「「「乱離骨灰《ドラゴンファイアー》!」」」
今度は先ほどより少し多い、百を超える火球が俺に迫る。
しかし、俺が手をかざすと全て消滅してしまう。
「「乱離骨灰《ドラゴンファイア》ー」」
ズガガガーン!
しつこいな、0ダメージなんだから何発打とうが無意味なのである。
「バカな、全部消滅しただと……」
俺には魔法も物理も効かないんだぜ!
と、余裕綽々だったら魔法一発も飛んでこなくなってしまった。もう魔力切れなのか?
なら、そろそろ終わりにしようか。
「撤退しろ、勝てる相手じゃない」
開始数分で魔法隊は後退りし始めたので、
「逃がすか」
俺は逃げようとする魔法隊の前に一瞬で移動し、衝撃波を放ち全員を地に伏せさせる。
もうマルティネ軍魔法隊の半数が気絶してしまった。
残りは恐怖の余り腰が抜けてしまっている。
俺はマルティネに話しかける。
「エルフを『使い捨て魔力タンク』として扱った事、俺は世間に全部知らせるからな」
マルティネは苦虫を噛み潰したような顔をする。
そしてボソリと呟くように言う。
「国家機密を漏らさないでくれ、頼むリュウ」
「でも街中でフラハイが堂々と『使い捨て魔力タンク』とか言っていたじゃないか? 周知の事実じゃないの? 」
「誰も『使い捨て魔力タンク』がエルフを指すなんて考えないさ。真相を知っているのは一部だけなんだよ」
なるほど、殆どの人はマルティネのやった行いを知らないのか。
もしマルティネのしている事が公表されれば、勇者の資格を失うだろう。いやそれだけで済むはずがない。
おそらく、どん底まで転がり落ちていくのであろう。
よし、絶対に公表しよう。エルフのみんなを解放する為である。
「ところで疑問に思わないかい?」
藪から棒にマルティネはそんなことを言いだした。
たしかに、もう公表される寸前なのに、なぜ焦らないのかと俺は思う。
しかもマルティネの顔は自信満々といった感じなのだ。……まさかとは思うが。
俺を倒して口封じできるとマルティネは思っているのかな? 絶対に無理なのに。
そもそも、マルティネの動きははっきり言って雑魚にしか見えない。上級魔法一発で勝てるくらいである。
「君だって3000人の兵士をたった一人で倒せるなんて思ってはいないよね」
「もし俺が倒したらどうするの?」
「それはね、僕が負けるくらいありえないんだよ。リュウ、君はここで土に還ることになるのだ」
マルティネは両手を広げて、兵士達は嫌々ながら拍手を送っていた。
兵士達も生きるためにマルティネに従わなければならないのだ。
俺は兵士達を無力化する方針に変更した。
この程度の人数なら余裕である。
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