上 下
14 / 19
努力追放編

勇者と使い捨て魔力タンク

しおりを挟む
    ギルドを出た俺達は、大通りに向けて足を運ぶことにした。 


  清々しい朝の空気は、俺がギルドに出入りした所で変わりはしない。

  まだ時間は早いはずだが、もう街は賑わいを見せている。


  露店が多く出ており、野菜を売っている者や魚屋などの食材を売る店が多く見られる。

 歩いている人は人間が多かったが獣人も見かけた。もふもふの尻尾をゆらりと揺らして歩く姿を見ると心が和むのだ。

「まずは、朝ごはんだな」


「はいなのですっ!」


 俺は朝から元気いっぱいなアイリを見て微笑ましく思った。

 アイリは可愛くて素直だしいい子だと思う。    

「リュウーどうしたのです?」

   不思議そうに首を傾げて問いかけてくるアイリ。


「いや、なんでもないよ」


 そんな彼女を両腕で抱えると、俺は彼女の頭を撫でながら答えた。

「えへへ、嬉しいのです」

 嬉しそうにする彼女を抱きかかえたまま、通りにある食堂へと入る。

  店内に入ると、そこは賑やかな雰囲気だった。

  朝食を求めてお客さんも多く来ているようである。

 俺達が中に入っていくとすぐに店員がやってきた。

 おっ可愛いケモ耳だ。その耳を見た瞬間に俺はもふもふしたくなる衝動に駆られる。

 しかし、ここは我慢だ。俺は今、アイリと一緒にいるのである。

 ここで仲間であるアイリのことを最優先にしなくてどうするというのか。

 アイリと一緒に朝食を食べる、ただそれだけで俺は幸せな気分になれるのだ。
 
 メニューが決まり店員が来て俺達が注文をする、ほんのわずかな数秒間の猶予。

 …ちょうどそんな時だった―――

 ガシャーンッ!! 俺の耳に激しい音が聞こえてきた。



 それはガラスが割れるような音である。



 一体何事かと思って音の鳴った方へ顔を向けると、どうやら一人の男が店の窓ガラスを雷魔法《サンダー》で粉砕したようである。

 わざと注目を集めようとしているようだ。


「我の名はフラハイである。王都北方軍において司令官で対魔王、特殊作戦を指揮しておる」

 フラハイと名乗った男は、二十代前半くらいだろうか? 長身で筋肉質、長い青髪と鋭い目つきをした美男子である。

 年齢は若いかもしれないが、歴戦を感じさせる雰囲気がある。



 ちなみに、男が北方軍の司令官であるのは、俺にとってどうでもいい。

 しかし、窓ガラスを割られてしまっては他の場所で食事を取った方がよいだろう。
 


 店の外へ出て、フラハイに背を向けて、俺はアイリの好きそうな食べ物屋を探す事にした。

「この街には『勇者』がいるはずだ! 英雄として我々の軍にぜひとも入り悪逆非道の魔王を倒してもらいたい! 」
 
 フラハイの怒声が街に響き渡った。それは悲鳴にも聞こえるほど、大きな声だった。


 まさか、俺に話しかけてきてないよな。

  俺一人で魔王倒せるけど、束縛されるのは嫌なので軍に誘わないでくださいね。




  それとも、フラハイは俺が追放したマルティネの関係者か?  もしマルティネがこの街に残っていたなら、勇者として颯爽と登場してフラハイの軍に入っていたのだろう。

 俺が追放したから、勇者いませんけどね。



 できればもう二度とマルティネとは関わらないでいたい。マルティネは馬車で王都に帰ったので、まさかまだカイナにいるはずがない。


 
「リュウ……あの人好きになれないです。 危ない人なのです……」

 アイリが俺の袖をしきりに引っ張って早くフラハイから離れたそうにしている。 よほど嫌らしいな。

「俺もああいう奴は苦手だなぁ」

 俺達は朝食を食べる為と、ついでに今晩の宿屋を探すべく大通りから裏口へと歩き始める。




  

 

「店を破壊したのはここの店主が『使い捨て魔力タンク』の情報について嘘をついた疑いがあるからである! 我が軍はいかなる不正も断固として許さない! 魔王討伐に全力を挙げて――」


  嫌でも聞こえてくるフラハイの演説を聞き流しながら、ふと気になって俺は振り返った。

  やはり、誰もフラハイを逮捕できるはずがないか。中世ヨーロッパのこの時代では、軍に逆らう市民などいるはずもない。



 ただ、俺はアイリやカナデやマイナと楽しく過ごせればそれでいいのだ。フラハイをぶん殴っても意味がないので、やめることにした。

 その後、街の女の子に人気のヘルシー料理店にしようかと提案したら、アイリは個室で柔らかいパンを一個だけ食べて、元気なくベッドに横たわってしまった。

 と思ったら直後に決心したように、

「リュウ、街の外にデートしにいくです」
 
  そわそわしながらアイリが言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~

鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」  未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。  国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。  追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?

睡眠スキルは最強です! 〜現代日本にモンスター!? 眠らせて一方的に倒し生き延びます!〜

八代奏多
ファンタジー
不眠症に悩んでいた伊藤晴人はいつものように「寝たい」と思っていた。 すると突然、視界にこんな文字が浮かんだ。 〈スキル【睡眠】を習得しました〉 気付いた時にはもう遅く、そのまま眠りについてしまう。 翌朝、大寝坊した彼を待っていたのはこんなものだった。 モンスターが徘徊し、スキルやステータスが存在する日本。 しかし持っているのは睡眠という自分を眠らせるスキルと頼りない包丁だけ。 だが、その睡眠スキルはとんでもなく強力なもので──

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

盛平
ファンタジー
幼い頃に、貴族である両親から、魔力が少ないとう理由で捨てられたプリシラ。召喚士養成学校を卒業し、霊獣と契約して晴れて召喚士になった。学業を終えたプリシラにはやらなければいけない事があった。それはひとり立ちだ。自分の手で仕事をし、働かなければいけない。さもないと、プリシラの事を溺愛してやまない姉のエスメラルダが現れてしまうからだ。エスメラルダは優秀な魔女だが、重度のシスコンで、プリシラの周りの人々に多大なる迷惑をかけてしまうのだ。姉のエスメラルダは美しい笑顔でプリシラに言うのだ。「プリシラ、誰かにいじめられたら、お姉ちゃんに言いなさい?そいつを攻撃魔法でギッタギッタにしてあげるから」プリシラは冷や汗をかきながら、決して危険な目にあってはいけないと心に誓うのだ。だがなぜかプリシラの行く先々で厄介ごとがふりかかる。プリシラは平穏な生活を送るため、唯一使える風魔法を駆使して、就職活動に奮闘する。ざまぁもあります。

妖精王オベロンの異世界生活

悠十
ファンタジー
 ある日、サラリーマンの佐々木良太は車に轢かれそうになっていたお婆さんを庇って死んでしまった。  それは、良太が勤める会社が世界初の仮想空間による体感型ゲームを世界に発表し、良太がGMキャラの一人に、所謂『中の人』選ばれた、そんな希望に満ち溢れた、ある日の事だった。  お婆さんを助けた事に後悔はないが、未練があった良太の魂を拾い上げたのは、良太が助けたお婆さんだった。  彼女は、異世界の女神様だったのだ。  女神様は良太に提案する。 「私の管理する世界に転生しませんか?」  そして、良太は女神様の管理する世界に『妖精王オベロン』として転生する事になった。  そこから始まる、妖精王オベロンの異世界生活。

処理中です...