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勇者追放編
クエストをこなします
しおりを挟む翌朝。
みんなに呼ばれてギルドに行くと、そこには既にマイナがいた。ぷんぷんと頬を膨らませている。
どうやら先に待っていてくれたようだ。でもヒーラーも決まったのに何を怒っているんだろう?
そして、マイナの隣には当然のようにカナデの姿もある。今日は冒険にいくのでビールは飲んでいないようだ。
「おはようございます皆さん。今日はよろしくお願いしますなのですー」
「よろしくね」
元気なアイリを見ているとこっちまで心が安らいでくるよ。ほんわかしたロリキュートな笑顔に銀髪のストレートヘア。きちんと手入れがされていてサラサラだ。
さてと、いよいよクエストで金を稼がないと。
パーティでやっていくのだから、みんなのサポートをしてできるだけ俺一人で倒さないようにしないとな。
三人が成長できるように陰ながら手助けしていくのである。
バキッ、ドカッ、ドスドスドス――。
まずは何をしようかと考えていると、突然ギルドの扉が勢いよく開かれ、そこに筋肉むっちむちの大男が飛び込んできた。
「フィシュさん、あなたまたですか! 何度も言っているではありませんか、ドアを破壊しながら入ってくるのはもういい加減に……!」
どうやら、荒くれものの冒険者がドアを壊して入ってきたらしい。クエストで上手くいかなかったので腹いせだろう。
……相変わらず治安が悪いなあ。早く王都に行ってしまおう。そのうち巨大ゴーレムがくるらしいし。
……巨大ゴーレムって何だ?
「……ぜえったいに私は認めないわっ!
こんな可愛い子がパーティに入るなんて 、そんなの、認められるわけないじゃない……」
くわっと目を見開き、異論を認めないかのようにマイナが叫んだ。言葉尻はよく聞こえなかったがまあ問題ないだろう。
「なぜだマイナ。私はアイリがパーティに加わるのは賛成だ」
よしよしとまるで子供を甘やかすようにアイリの頭を撫でるカナデ。アイリも撫でられてニコニコと幸せそうだ。
子供が好きなんだなカナデ。
「カナデさんは優しいのです~。アイリを受け入れて嬉しいのです~」
「可愛い。だがアイリよ本当にヒーラーなのか?」
信じられないとばかりにカナデが呟いた。
マイナもうんうんと同意する。
そうなのだ。
アイリ
は魔法使いという割には、杖を持っていない。
それに、見た目はどう見てもロリキュート魔法少女。白いローブがよく似合っている。
回復魔法が使えるとは到底思えない。
だが、アイリは自信満々だ。そうだ、カナデの怪我を治してもらえばいいじゃないか。
本当にヒーラーなのかはともかくとして、銀髪のロリ系の美少女。
マイナのような喜怒哀楽を全面にだす活発さもそれはそれで可愛い。
「なんかうさんくさいのよね、あなた」
ジーっとアイリを睨むマイナ。嫌そうな視線を感じてアイリは俺の背中に隠れてしまった。
「ふえっ!? リュウ助けてなのー」
アイリは俺の背中から顔を出し、マイナの問いかけに舌をだした。
「べー、意地悪なマイナは嫌いなのー」
「な、なによ。それにいつまでリュウにひっついてるの。早く離れなさい!」
その仕草にカチンと来たのか、マイナが顔を真っ赤にして叫ぶ。
そんなに熱くなるようなことか?
冒険者ギルドの二階。
酒場も兼ねている食堂の一角で、俺達はテーブルを挟んで座っていた。
ちなみに、今日はマルティネはいない。
あの因縁つける野郎ーは、相変わらず何か企んでいるらしい。
「まずはクエスト受けそう」
俺の言葉を聞き、みんなが一斉に賛同してくれた。
そして、どんなクエストがあるか確認していく。
薬草採取に低級モンスターの討伐。どれも報酬が低いものだが、みんなのランクをあげるのなら、これらをこなすのも重要だな。
もっと熱い冒険がしたい。胸を焦がすようなチリチリした対決をしてみたい気分もあるが、そこはまあグッと我慢しよう。
「ほんとにアイリは泥棒猫さんよね、私のリュウが奪われそうで……ねぇ、リュウー」
マイナが豊満な体つきを俺に押し付けながら、同意を求めるように言った。
とはいわれても、泥棒猫ってなんのことだ?
俺は普通に冒険をクリアしてあっさりとスローライフを満喫したいだけなのだ。
「よしよし、マイナ元気だすんだぞ」
「えへへへ…………」
しまりのない表情でとろけた笑顔を見せるマイナ。さてと今日のクエストはどんなのにしようかな。
ボードに張られた大量の掲示依頼書からさっと一枚だけ抜き取ると、パーティのみんなに、
「まずは薬草採取をしようよ、小さなところから頑張って行こう」
「いいわよ」
「いいぞ」
「がんばりますなのですー」
よし、快く三人の同意が得られたので薬草採取に決定だ! 俺はサポート役に徹しなければ……。
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