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勇者追放編

最初の冒険

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「――私を好きになってなのですー!」

 世界は暗転して俺は懐かしいその声色が気になってーー

「……またあの夢か?」

 ベッドの上で目を覚ました俺は呟いた。

 久しぶりに見た気がする。確か最後に見たのは一ヶ月前だったはず。いや、でも最近はずっと見ていなかった気がするぞ?

「最近見ることが無かったんだけどなぁ」

 寝起きにポツリと呟いて、目覚まし時計を見て慌ただしく動きだした。

 いつもと変わらない日常。俺の環境が変わる日は来るんだろうか。

 うつらうつらと電車に揺られて1時間。そこから先はいつもの「振る舞う」時間だ。

「お早うございますー、課長今日も頑張っていきましょう」

「おいおい、今日も仕事がたっぷりあるんだ。おまえの為に用意しといてやったからよろしく頼むぜ」

「はい。 任せてください……」

 そう言って仕事を始める俺だが、頭の中はさっきの夢の事ばかり考えていた。

 なんで今更あんな夢を見たんだろう。


   それにしてもこんな仕事の量、普通の人ならこなせるわけない。また嫌がらせか、いつものことだ、できるだけ早く仕事を終わらせよう。


 サービス残業を三時間してようやく帰路につけた。夜はすっかり遅くなっている。


 いつもならコンビニに立ち寄って酒を買い込むのだが、足取りは重い。

 コンビニには立ち寄らずそのまま帰路につこう。

「キャーッ!!」

 人通りの少ない路地で、若い女性の甲高い悲鳴。この辺りはめったに車も通らないはずだ。

  俺が振り返るとそこには男がナイフを持って立っていた。

「なに見てんだテメーっ!」

 俺はすかさず男の手首を掴み捻り上げる。

 男は痛みに耐えかねてナイフを落とした。

 落ちたナイフを蹴飛ばしてから手刀を食らわせ、俺は女学生とおぼしき人影に話しかける。

「大丈夫ですか!?」

 声をかけるとその人はこちらを振り向く。 

 彼女は驚いた表情を浮かべていた。人助けをするのは当然のことだ。



 しかし背後からザクッという音が聞こえた。
 
  しまった油断してしまい返り討ち。

 視界が真っ白になり、俺は意識を手放した。あぁ、もう少しで俺の人生が始まるところだったのに……。


 しかしまだ意識がある。


 えっと……。

 これってまさか……。



「もしかして俺、異世界転生したのか?」

 そうだ俺は今、異世界にいる。周りを見渡せば草原が広がり遠くの方に大きな森が見える。 

「ここが異世界……」  

 誰も俺を知らないなら、本当に目指セルかもしれないな。

 美少女を隣に侍らしてのんびりスローライフを送ろう。


 とりあえずダンジョンを目指すことにした。

 その理由はダンジョンに行けば何か貰えるのではないかと思ったからだ。

 一応チート能力を手に入れなくては不安で仕方がない。

 堅実なスローライフを送るのに用心するにこしたことはないから。
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