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「貴様、何をしておる!」
「ふぇっ?」
わたしがいたのは、どこかの綺麗な家。初めて来る場所だ。
、、、あちゃ~、失敗か。
よし、こういう時はこうだ。
「誠に申し訳ございません。わたくしはノヴォメア王国のグラナドス公爵家のブリセイダと申します。先程転移呪文を使ったのですが、失敗してしまったようなのです。」
「証拠は?」
「これを見てください」
わたしは、お母様のものだった腕輪を見せる。この腕輪には特殊な呪文がかかっていて、所有者を変える際に前の所有者が許可しなければ触っても痛い目を見るのだ。それに、お母様の名前もついている。
「そうか。」
「大変申し訳ございませんが、城に案内していただけないでしょうか?」
わたしがグランメリアの王女の血を引いていると悟ったのだろうか、いきなり対応が丁寧になった。
「申し訳ございませんでした。私はカサリージャ子爵家の当主、エヴェラウドと申します。城に行きたい、とのことですね。であれば、家の馬車を用意させます。よろしければそれまで、ジェルッタ(黄色の実の果物)の飲み物を飲むなどしてお待ち下さい。」
いただきましょうね、こういう時は。
「お願いいたしますね。」
取り敢えず、取り押さえられるとか大変そうな危機は脱出したね。イェイ!

甘酸っぱいジェルッタの飲み物を飲んでいるうちに、馬車の準備がようやくできたようだ。
恐ろしいほど丁寧に馬車まで案内され、乗り終わった後も馬車が見えなくなるくらいまで跪いていた。こっちが驚いて恐縮してしまうくらいに。

そうこうしているうちに、あっという間に城についてしまった。
門は大きく、重厚感があった。わたしは門の横にいた門番×2に入れてくれるよう頼んだ。
「城に入れてくださいませんか?わたくしはノヴォメア王国のグラナドス公爵家令嬢、ブリセイダと申します。証拠ならこの腕輪を差し出せますわ。」
けれど、この門番達は子爵家のときとは違って簡単に入れてくれはしなかった。それはそうなのだけど。
「よりわかりやすい証拠はないのか?」
「そうですね。では、こちらはどうでしょう?『グランメリアの碧薔薇』」
この言葉は、城に自分が王家の血を継いでいる者だと認知させられる合言葉のようなもの。勿論秘匿されていて、文字通り門番たちが慌てふためいた。
「そ、それをっ!なぜ知っているのですか?!」
「言われてみれば、ロレラーナ様の面影があるな。ほら、目の辺り、、、」
「それもそうだな。では、選別の間へ行ったほうが早いのではないか?」
ロレラーナとは、わたしのお母様のことらしい。まあ、ほぼ記憶はないけれど。
そしてこれから、選別の間という場所へ行くらしい。

門番二人の後ろを、わたしはついていく。すると、大きな金色の鍵穴のついたドアの前で二人が立ち止まった。
鍵を開けると、そこには巨大な本がおいてあった。
二人がかりでその本を開くと、そこには樹形図のように歴代の王や王女、王妃などの名前と肖像画が書いてあった。
そして、随分と下の方まで続いていた。
「木の根の中心、ここに手を当ててください。」
そこには、金色の大きな魔石がはめ込んであってそこに触れればいいらしい。
わたしが手を触れた、次の瞬間。
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