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この度、婚約破棄の場に居合わせてしまいました。〜モブ視点〜

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「わたくし、貴方に一つ頼み事があるのです。」
「何がだ?」
「ここに貴方のサインをしていただきたいのです。」
「良いだろう。」
「ペンはここにありますから。早くしてくださいませ。」
「分かった分かった。」
「はい、サインが書かれました。婚約破棄が成立いたしましたから、もう貴方とは赤の他人ですね。さようなら。」
えっ?

わたしは、リースマン伯爵令嬢のコンスタンツェです。
今日は、わたしの友人であるケッセルリング侯爵令嬢のカロリーネ様と一緒に王妃様主催の庭でのお茶会にお招き頂いています。有り難いことです。
そして、わたくしはカロリーネ様に、カロリーネ様のご友人のゲンツマー侯爵令嬢のヘルタ様、ヴィーヒェル辺境伯令嬢のテレーザ様、同じくエルツェ辺境伯令嬢のザンドラ様にご紹介いただき、ようやく打ち解けることが出来ました。
しかし、何故この場は婚約破棄の行われる場になったのでしょう?
話は先程に戻ります。

「少し待て!何故私と婚約破棄をする!お前は側室にしようと考えていたのに。」
「なぜなら、貴方は婚約者であるわたくしとの貴族学園の終業式でのダンスを踊りもせず、そちらのナターリエ嬢でしたかしら?と踊っていたのでしょう?」
「それは、お前が地味で私と全く釣り合わなかったからだ。お前が地味なのが悪い。私は悪くない。」
そう言って、マティアス様は胸を張りました。
ヴィンフリーデ様は、確か一年生の最優秀者に選ばれて壇上でのスピーチを行うために紺色と決められた美しいドレスをまとっていらっしゃったはずです。そして、そのまま踊られていたはずです。紺色のドレスに散りばめられた夜空の星のような黄金の宝石が美しく、それはそれは見事でした。
多くの男性陣からも、暫く噂になっていたそうですから「地味」ではないでしょう。

「またそう言ってらっしゃる。自分を正当化して。わたくしは、貴方のお父様から強く頼まれて貴方との婚約を渋々許可したのです。ところがどうですか。準備の為の支度金と言っては、ナターリエ嬢にドレスや宝石、その他装飾品などをたくさん買い与えていたというではないですか。ナターリエ嬢には聖祭のプレゼントを送っていたそうですが、わたくしはそのような物何一つとして頂いていません。それに、一応婚約者から狂言を吐き散らされて名誉を毀損したのですよ、貴方は。婚約者としてまずどうなのでしょう?」
「私はお前と婚約する気などなかった。父上から言われただけだ。もともと婚約破棄はどちらでも良かったが、私は真実の愛に従い、ナターリエを正妻に、お前は側室にしようと考えている。真実の愛で得た恋人のほうが、そうでない者より大切だ。それくらいは分かるだろう。それでも不満か?」
「そうですか。不満なら多くありますよ。わたくし、終業式で求婚の申込みが多く来たのです。婚約式での指輪で断ってきましたが、それがなければどこにでも嫁げるくらいですわ。第一、貴方が次期当主になれるのはわたくしが嫁としてくることが決まっていたからです。わたくしがいなければ、、、ふふっ。どうなるでしょうね。兎に角、マティアス様が婚約破棄の書類にサインをした。ただそれだけのことです。城の役人へ渡しますからね。貴方もわたくしがいないことを望んでいたのですから、それで良いでしょう?」
意味深長な言葉を残し、ヴィンフリーデ様は去っていかれました。

マティアス様は、悲しむかと思っていました。しかし、私の予想とは裏腹にナターリエ様の手を取って喜びを伝えあっています。
、、、よく分かりませんわ。

後日、ヴィンフリーデ様が隣国のデュヴェルノワ王国の王太子のジョスラン様の第二夫人になることと、マティアス様が次期当主の地位を失ったことがわたくしたちに伝わりました。
ヴィンフリーデ様も、それで良かったのなら良いでしょう。マティアス様はよく分かりませんが。
わたくしも、クラウディア様とも仲が良いザンドラ様と顔見知りになったことで婚約者を見つけやすくなると良いのですが。そうわたくしのメイドに言うと、メイドのべルタはこう言いました。
「コンスタンツェ様もお勉強に力を出せば婚約者にと望まれやすいのではないでしょうか?伯爵も事業に成功しているそうですし、現に婚約打診もコンスタンツェ様に数件来ているそうですし。来年頑張ればもう少し増えるのではないでしょうか?」
、、、わたくし、あまりお勉強は好きではないのですよ。無理なことを言わないでくださいませ。


キリトリキリトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
モブのリースマン伯爵令嬢、コンスタンツェの視点の話です。クラウディアからは見えなかった婚約破棄の場面です。ヴィンフリーデ様、お幸せに!
同じくモブのキャラの名前は、どうでも良いですがちゃんと決めたくなります。いや~、名前決めのほうが話を作るのよりワンチャン大変でした。いつも利用させていただいている欧羅巴人名録様にはマジ感謝です。
次話は設定です。その後は父親断罪とナターリエ関連かな。
コンスタンツェ等も話に入れたいな。出てくる(かも)しれません。(作者の気まぐれ)
近況ボード、「お詫び」もみてくださると幸いです。
https://www.alphapolis.co.jp/mypage/diary/view/175206
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