上 下
2 / 16
一章 それから充実した環境を手に入れるまで

二食目 相棒は、、、

しおりを挟む
どうしようか、と思ってもどうにもしようがない。
どこに行けば町なのか、どっちへ行ったらいいのかも、さっきから人が通った気配もしないので分からなさすぎる。
けれど、わたしには「料理」のスキルが有ることが分かった。前世の影響だろうか。
まあいい。

取り敢えずわたしがさっきから倒れていた場所から右へ歩くことにした。
幸い川もあるので、のどが渇いたとしても水は飲める。
食料は、森だから実とかでいいだろう。少しは持つはずだ。
すると突然、耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。
何事だろうかと思ったわたしは声のする方へ向かっていった。

見ると、そこには大きな黒っぽい鳥がいてその口には赤色の鳥がいる。
地面には赤の羽がいくつも飛び散っていて、何が起こっていたのかよく分かる。
けれど、この鳥は今にも食べられてしまいそうだ。
どうしようか。

答えは一瞬で出た。
わたしは手早く地面に落ちていた石を拾い、渾身の力で鳥へ向かって投げつけた。
けれど、届かなかった。
石はカツンと木に当たって落ちていった。
その音で鳥はわたしに気づいたのだろう。
口に赤い鳥を加えたままこちらを向いた。
真正面から見ると大きな鳥は目がギョロッとしている。大きさで言えば、カラスより全然大きいだろう。
数秒、わたしと鳥は睨み合った。
だんだん、苛立ってきた。いい加減、放してあげればいいのに。
けれど、届かない。そんな虚しさがふっと一陣の風のように心の中を吹き抜けていった。
すると突然、黒い鳥は赤い鳥を放して去っていった。

ああ、食べられなくてよかった。
そう思った瞬間、赤い鳥はわたしの方へ飛んできた。
そして、手へ止まった。
ぴい。そう、一声高く鳴いた。
ああ、可愛い。そう思った。
けれど、野生の鳥は病原菌を持っていることも多い。
それに気づいたわたしは慌てて地面へ鳥を戻した。

しかし、あろうことかその鳥が喋った。
「はあ?何やってんねん。助けてもろたことはありがたいんけどな、もう少しいさせてもらうわ。」
うん、これは幻聴だ。幻聴。鳥が喋るなんてことありえないから。
が、鳥はそんなわたしの思いをぶった切っていくかのようによりによって関西弁で話し始めた。
「うちな、炎鳥の一族のもんなんや。そんでな、成人したからってオトンに言われてな、餌探しに来たんや。ま、けどあの鳥にな、捕まってしもたんや。ありゃ痛かったわ。黒鳥に会ったらさっさと逃げろっていうの、確かやって思ったわ。」
わたしは一度、頬を叩いた。けれど、痛かった。
ああ、ホントなんだ。

「炎鳥さん、これからどうするんですか?」
いい加減はなれてくれないと困る。
「ああ、うちか。ここ、うちの実家からめちゃめちゃ遠いねん。そやから、うちアンタと一緒に旅させてもらうから。よろしくな。」
勝手に決めるな!と言う思いが強いが、ぱっと見炎鳥は目がくりくりしていて可愛い。けど、駄目だ。
そう思っていたら、お母さんの声が蘇ってきた。
「いい、ミライ。人との縁は大事にするんだよ。一期一会って言うから。」
あの時、わたしはなんと答えたんだったろうか。
ああ、あれだ。
「うん。分かった、お母さん。」
お父さんと離婚して、シングルマザーでわたしを育ててくれたお母さん。
大人になったら親孝行しようとか考えてたけど、結局死んじゃった。
「孝行のしたい時分に親はなし」だ。
だったら、そのお母さんとの約束を大切にすることは親孝行になるんじゃないか。そう思った。
「、、、分かった。ついてきていいよ。でも、名前は?」
「ああ、うちね。アラージア言うねん。そやかて、アンタは?」
ちょっと困った。わたしはこっちでは名前がない。
じゃあ、これでいい。
「わたし、ミライ。」
「ふーん。ミライ、ね。初めて聞く名やわ。」
でも、「アラージア」では少し長い気がする。
「ねえ、アラージア。あなたの名前、長いから『ジア』って呼んでもいい?」
「もちろん、ええよ。『ミライ』はそのままでええと思うけどな。」
こうして、わたしには「ジア」ことアラージアと言う仲間ができた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

平穏の神に見放されていますワタクシは、異世界ではスローライフを送りたいのですが許されない様です。

リーゼロッタ
ファンタジー
とある日、わたしはグッズの販売会から帰る時に、死んだ。 前世では出来なかったスローライフを送りたいけれど、運命様が許してくれない様です。大好きかつ中学校生活を捧げた乙女ゲー「ヴァルキューレ・プリンセザ」の、自分が嫌っていたあるエンドの場合に出てくる狂いまくった一国の王女になってしまいましたが、破滅したくはありません。 初投稿なんで、内容にとやかく言われると悲しむのでやんわりお楽しみ下さい。リーゼロッタワールド全開です。 更新は亀以下のカタツムリです。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺わかばEX
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する

Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...