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一章 マルジュシエールの姫君

ⅲ マルジュシエール王家家族形態観察記

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既にわたしたちの前には朝から甘そうな食事が並んでいる。
クロワッサンみたいな生地だけど、中にはおそらくなにか入っているパン。
朝から100%お腹にたまるであろうパフェみたいなスイーツ。
それと、クリーム系スープ。
その他、甘い物達達。
、、、この世界、甘いもの大好きなの?
が、
「うわー、美味しそう。ねえ、ファスモーデュ。貴女、姉には優しくするべきだと思わないかしら?」
どゆこと?
わたしがボーッとしているのを見たカルムイェリスは、
貴女、あまり食べないでしょう?無駄になってしまいますよ?」
そこで気づいた。わたしのものをよこせと言いたいのだろう。
一見優しそうな笑顔のお姉様だが、実態はただただ人のものを奪って優越感に浸りたいだけだ。
視線で圧力をかけてくる。じーっと。
呆れて見かねたのか。フィルクガローレが
「カルムイェリス。いい加減におやめなさい。姉だからという理由で人にたかるなど淑女として、、、いえ、次期王としてもどうかと思われますよ?姉だから優しくすべきと言いたいのであれば、優しい優秀な姉と思われるような行動を普段から取ってからにしてくださいませ。はしたないですよ。」
フィルクガローレ様、最強!
カルムイェリスもこれで引き下がってくれると思った。しかし!
「まあ、フィルクガローレ様にも分かってもらえていなかったのですね、、、わたくしはいつも色々譲って差し上げているのですよ?少しくらいわたくしがもらったとしてもこれで公平になるくらいですが、、、」
そう涙目で訴える。
わたしも爆弾発言しよう。そうしたら少しは静かになってくれるかな?記憶とゲームの番外編をフル活用だ。
「譲っているのはいつもわたしですよ?お姉様はわたしの朝食を半分持っていっていますし。何かお姉様が失敗してしまった時はいつもわたくしに後片付けをさせておりましたし。
「側室の子は黙って従え」で何度も宿題をさせていました。」
必死に記憶の中の「青の光」を思い返して考える。
おおう、フィルクガローレが絶対怒ってる顔になってる。激おこ。
というか、王も顔色変わってる。リトマス試験紙のアルカリ性を指す青色に。
「え?い、いや、そんなことは流石に、、フィルクガローレも言い過ぎだけど、、、少なくともカルムイェリス、そんなことはしては駄目だよ。」
超気が弱そうな声だ。半分震えながら、ラルキューミアの方を見る。

「カルムイェリス。貴女はもう少し考えるべきでしたね。そして、ファスモーデュ。貴女は第三夫人の娘ですから、もう少し態度をわきまえなさい。黙って従うべきですわ。フィルクガローレ。貴女は今日一日食事はなしです。与える価値すら無いみたいですから。いくらあのオクタヴィアン様の孫だとしても、調子に乗って悪口を言うことは許されませんわ。だから貴女は王になれないのです。早く与えて差し上げた離宮に戻っていなさい。」

わたしたちがいじめを告発したのに、なぜ怒られるのでしょうか?が本音だったけど、我慢、我慢。全く理解できない人の言葉には、変に逆らわないのが楽だろう。
それに、もう期待しても無駄だと悟った。
テーブルマナーは「ヴァルキューレ・プリンセザ」をもとにしてなるべくさっさと朝食を食べてしまう。
これでさっさと離宮に戻れる!っと思ったその時、
「ねえ、ファスモーデュ。お茶会をしましょう。5タームにわたしの離宮に集合ね。いい?」
ここでは、「ターム」という時間の単位を使う。1タームは三時間、即ちこれは午後三時という意味になる。けど、
「わたくし、今日はしなければいけないことがあるのです。残念ながら、欠席させていただきますわ。」
こんな人とお茶会なんてしたくない。胃薬と頭痛薬が大量に必要になる。
すると、カルムイェリスは少しうつむき、顔を手で覆った。
「まあ、ファスモーデュ、、、貴女はわたくしの誘いを断るほどの人間だったのですか?わたくし、悲しんでしまいますわ。けれど、人のことを考えられない者は次期王にはなれませんもの、、、お母様の仰ることがよく分かりますわ、、、」
ああ、と思った。嘘泣きだ。
ここで断ったらカルムイェリスは「ファスモーデュは人の心を推し量れない酷い人間です。そんな人は王になんてなれません」と言うのだろう。
確か、ファスモーデュ編でも断ったら悪口を他貴族にばらまくと言っていた。
けど、残念ながらわたしは王になんてなる気がない。
それより、推しに会いたい。
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