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素直になれるでしょうか

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 差出人は、エメルト・ダンケシン公爵。社交界で知らぬ者はいないほどの名門の公爵であり、冷徹で無口な人物として有名だった。
 レディアとはほとんど面識がなく、彼が何のために手紙を送ってきたのか、全く見当がつかなかった。

「会いたいと書いてあるけど……」

 公爵様からのお誘いを断るのは不敬にあたってしまう。
 不思議に思いながらも、レディアは公爵の招待に応じることにした。

 公爵の邸宅は、広大な庭園と美しいバラの咲き乱れる中庭で知られていた。
 レディアが到着すると、彼女は庭の一角で静かに佇むエメルトの姿を見つけた。
 彼の姿は、冷たい風に揺れるバラの花びらのように孤独でありながら、どこか魅惑的だった。

「来てくれてありがとう、レディア嬢」

 彼の声は低く、穏やかで、意外なほど温かかった。
 レディアはその声に驚きながらも、一歩前へ進んだ。

「どうして私をここに呼んだのですか、公爵様?」

 エメルトは一瞬目を細め、そしてふっと微笑んだ。

「あなたが今、誰よりも傷ついていることを知っているからだ。しかし、その傷は決してあなたのせいではない。あなたは愛を信じ続けてきた。それはとても美しいことだ、レディア嬢」

 彼の言葉は、冷たく重い鎖に縛られていた彼女の心を解きほぐしていくようだった。

「でも、私はもう……」

 レディアが言葉を続けようとした瞬間、エメルトは彼女の前に進み、優しくその手を取った。

「あなたはまだ、真実の愛を知らない。パイル伯爵があなたを裏切ったことが、あなたの価値を決めるわけではない。私は、あなたが本当の愛とは何かを知るまで、そばにいるつもりだ」

 レディアはその手の温もりに驚き、目を見開いた。
 彼の瞳には、冷たい表情の裏に隠されていた深い優しさが宿っていた。
 彼が自分を見つめるその眼差しは、ただ同情ではなく、真剣な感情が込められていることに気づいた。

「エメルト様……」

 彼の名前を呼んだ瞬間、レディアの心は確かに変わり始めていた。
 彼女はこれまで、自分を束縛していた過去から一歩を踏み出す勇気を少しずつ取り戻していた。

 エメルト・ダンケシン公爵は、彼女に本当の愛を教えるために現れたのだ。
 彼のそばで過ごす時間が増えるにつれ、レディアは徐々に新たな感情に気づいていく。

 それは、これまで知ることのなかった温かさと安心感、そして――新たな恋の芽生えだった。
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