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― 参 ― ふたりのこども
ぼく、つよくなるんだ!
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コンラード先生を我が家にお迎えしてからそろそろひと月が経とうとしています。
初めの頃は待つ訓練…自分の食事が終わっていても他の人が食べ終わるまで待つだとか自分が絵本を読んで欲しい時でも侍女が仕事をしている時は待つだとか、そういった簡単な習慣付けと絵本を中心に文字や数字を覚える事を主にさせていたのですが、コンラード先生はその時々でアルに覚えさせる事や考えさせる事を思い付くので他家の同じ年頃の子供達より随分と聞き分けが良く賢い子に成長いたしました。
「かぁさま、あのね、ぼく、とぉさまみたいにつよくなりたいからけんをおしえてもらうの!」
午前中にお医者様の診察を受けて、近付いてきた出産に向けての話もする為という名目で、アンナも交えて女三人、お庭でお茶をいただいている時にアルが嬉しそうに声をあげながら駆けてきたのです。
「けん?」
テーブルに着いた私達も控えていた侍女たちも『けん』が何か、一瞬理解できませんでしたわ。
「うん!けんがあればわるいおとなをやっつけられるでしょ」
そこでやっとアルが習うと言っているのが『剣』のことだとわかりました。当然反対ですわよ。
「アル、お話しする前に何かすることはありませんか?ここにはいまお母様だけかしら?」
アルは興奮していたから忘れていたんでしょうが、きっとこれだけで思い出してくれるでしょう。
「あ!せんせぇ、こんにちわ!いつもかぁさまといもうとをみてくれてありがとうございます!ごあいさつがおくれてごめんなさい」
「アルフレッド坊ちゃま、ご丁寧なご挨拶をありがとうございます。いつも元気があって大変よろしいですね。きっとその元気がお母様とおなかの赤ちゃんにも伝わってすくすくと育ってくれているんでしょう」
先生が柔らかく応えてくれます。女性医師はこう言った気配りをしていただけますし、何より肌を、最終的にはとんでもない姿を見せることになるので最近では助産医の殆どが女性医師になっておりますの。
その中でも私を担当していただいている マーガレット・ヒッチャー先生はお母様と同じぐらいの妙齢の女性でとても落ち着いた雰囲気の国内でも名が知れ渡っているほどに優秀な助産医ですの。
もちろん、アルの時もお願いした方なので全幅の信頼を置いていますわ。
「ところでアルフレッド坊ちゃま、先ほど剣を習うと仰ってましたが…」
「そーなの!ぼく、けんをおしえてもらってとぉさまみたいにつよくなるの!」
どうやらアルの中では『剣を習う』ことは決定事項のようですわね。でもやっぱり母としては色々心配してしまいますもの…ついつい何とか止めさせられないかと思ってしまうのです。
「剣は危ないものだってわかってる?」
「うん!だからとぉさまがたんれんをしてるときはちかくにいっちゃだめなんだよ!」
「そうね、ケガをしてしまうかもしれませんものね。そんなに危ないのに教えてもらうの?お母様はアルに危険なことはして欲しくないわ」
「かぁさま、ちがうよ!あぶないからこそおしえてもらわなきゃなんだよ!」
あら?どうやら『大人の意見』も交えたものの様ですわね。
「じゃあアルは剣を誰に教えてもらうの?」
「もちろんフィリップだよ!」
皆様、もしかして誤解してらっしゃらないかしら?フィリップは、確かにアルの外出時は護衛の役割もしてくれていますが、彼は『執事』であって騎士ではないのだけれど…?
「それでとぉさまもじかんがあればおしえてくれるんだって!それにおじいちゃんとアロじいちゃんもだよ!」
護衛を務められる程度にはフィリップも強いことはわかっていますし、デュークが強いのは言わずもがななのでこの2人に教わるというのはわかるのですが…
「コンラード先生とアロ爺も?」
「うん!だっておじいちゃんはなんてもしってるからね!けんのこともおしえてくれるんだよ!それにアロじいちゃんはおはなをきるときはハサミをつかうけどきをきるときはギザギザのけんをつかってるんだよ!」
それは多分ノコギリのことですわね。なるほど、刃物の扱い方を簡単に教えながらどの様に危険か、もしも刃物を向けられたらどの様に対処するかを教えようとしているのかもしれませんわね。
「じゃあアルは色々教えてもらうことになるのねぇ。くれぐれもフィリップやお父様も言ううことを聞いて怪我をしない様に気を付けてね」
「うん!ぼく、いっぱいおべんきょうをしてとぉさまみたいなりっぱなりょーしゅになる!それにつよくなっていもーとをまもってあげないと!」
どうやら私が臨月に入った事で妹達を始め、周りの大人達がアルに対して『もうすぐお兄ちゃんだね』などお声を掛けることが増えた事で、アルも『妹を守らなきゃ』と強く思う様になっているみたいですわ。
アルのやる気に満ちた顔を見ていると本当に逞しく、頼もしくなったと唯々嬉しく思いますわね。
「アル?剣のお勉強をしましょうって言ったのはだぁれ?」
「ぼくだよ」
あら?やっぱりアルの勝手な予定なのかしら?
「それはお母様に言う前に誰かに言った?」
「うん!おじいちゃんにいって~とぉさまにききましょうっていったからとぉさまにいって~とぉさまがフィリップをよんで~フィリップがせんせぇになることになって~いまフィリップがアロじぃちゃんにせんせぇをしてっていいにいった」
なるほど、じゃあ後でデュークに色々確認をすることに致しましょう。
「いもーとがうまれるまでにつよくなるからね!だってぼく、おにーちゃんだからいもーとはよわいからまもってあげないと!」
生まれる前から兄バカのようですわね。まぁデュークといいお父様といい、ラインハルト様もアランさんも当家の男性陣は皆さん親バカ甥バカですから仕方ないのかもしれませんわね。
初めの頃は待つ訓練…自分の食事が終わっていても他の人が食べ終わるまで待つだとか自分が絵本を読んで欲しい時でも侍女が仕事をしている時は待つだとか、そういった簡単な習慣付けと絵本を中心に文字や数字を覚える事を主にさせていたのですが、コンラード先生はその時々でアルに覚えさせる事や考えさせる事を思い付くので他家の同じ年頃の子供達より随分と聞き分けが良く賢い子に成長いたしました。
「かぁさま、あのね、ぼく、とぉさまみたいにつよくなりたいからけんをおしえてもらうの!」
午前中にお医者様の診察を受けて、近付いてきた出産に向けての話もする為という名目で、アンナも交えて女三人、お庭でお茶をいただいている時にアルが嬉しそうに声をあげながら駆けてきたのです。
「けん?」
テーブルに着いた私達も控えていた侍女たちも『けん』が何か、一瞬理解できませんでしたわ。
「うん!けんがあればわるいおとなをやっつけられるでしょ」
そこでやっとアルが習うと言っているのが『剣』のことだとわかりました。当然反対ですわよ。
「アル、お話しする前に何かすることはありませんか?ここにはいまお母様だけかしら?」
アルは興奮していたから忘れていたんでしょうが、きっとこれだけで思い出してくれるでしょう。
「あ!せんせぇ、こんにちわ!いつもかぁさまといもうとをみてくれてありがとうございます!ごあいさつがおくれてごめんなさい」
「アルフレッド坊ちゃま、ご丁寧なご挨拶をありがとうございます。いつも元気があって大変よろしいですね。きっとその元気がお母様とおなかの赤ちゃんにも伝わってすくすくと育ってくれているんでしょう」
先生が柔らかく応えてくれます。女性医師はこう言った気配りをしていただけますし、何より肌を、最終的にはとんでもない姿を見せることになるので最近では助産医の殆どが女性医師になっておりますの。
その中でも私を担当していただいている マーガレット・ヒッチャー先生はお母様と同じぐらいの妙齢の女性でとても落ち着いた雰囲気の国内でも名が知れ渡っているほどに優秀な助産医ですの。
もちろん、アルの時もお願いした方なので全幅の信頼を置いていますわ。
「ところでアルフレッド坊ちゃま、先ほど剣を習うと仰ってましたが…」
「そーなの!ぼく、けんをおしえてもらってとぉさまみたいにつよくなるの!」
どうやらアルの中では『剣を習う』ことは決定事項のようですわね。でもやっぱり母としては色々心配してしまいますもの…ついつい何とか止めさせられないかと思ってしまうのです。
「剣は危ないものだってわかってる?」
「うん!だからとぉさまがたんれんをしてるときはちかくにいっちゃだめなんだよ!」
「そうね、ケガをしてしまうかもしれませんものね。そんなに危ないのに教えてもらうの?お母様はアルに危険なことはして欲しくないわ」
「かぁさま、ちがうよ!あぶないからこそおしえてもらわなきゃなんだよ!」
あら?どうやら『大人の意見』も交えたものの様ですわね。
「じゃあアルは剣を誰に教えてもらうの?」
「もちろんフィリップだよ!」
皆様、もしかして誤解してらっしゃらないかしら?フィリップは、確かにアルの外出時は護衛の役割もしてくれていますが、彼は『執事』であって騎士ではないのだけれど…?
「それでとぉさまもじかんがあればおしえてくれるんだって!それにおじいちゃんとアロじいちゃんもだよ!」
護衛を務められる程度にはフィリップも強いことはわかっていますし、デュークが強いのは言わずもがななのでこの2人に教わるというのはわかるのですが…
「コンラード先生とアロ爺も?」
「うん!だっておじいちゃんはなんてもしってるからね!けんのこともおしえてくれるんだよ!それにアロじいちゃんはおはなをきるときはハサミをつかうけどきをきるときはギザギザのけんをつかってるんだよ!」
それは多分ノコギリのことですわね。なるほど、刃物の扱い方を簡単に教えながらどの様に危険か、もしも刃物を向けられたらどの様に対処するかを教えようとしているのかもしれませんわね。
「じゃあアルは色々教えてもらうことになるのねぇ。くれぐれもフィリップやお父様も言ううことを聞いて怪我をしない様に気を付けてね」
「うん!ぼく、いっぱいおべんきょうをしてとぉさまみたいなりっぱなりょーしゅになる!それにつよくなっていもーとをまもってあげないと!」
どうやら私が臨月に入った事で妹達を始め、周りの大人達がアルに対して『もうすぐお兄ちゃんだね』などお声を掛けることが増えた事で、アルも『妹を守らなきゃ』と強く思う様になっているみたいですわ。
アルのやる気に満ちた顔を見ていると本当に逞しく、頼もしくなったと唯々嬉しく思いますわね。
「アル?剣のお勉強をしましょうって言ったのはだぁれ?」
「ぼくだよ」
あら?やっぱりアルの勝手な予定なのかしら?
「それはお母様に言う前に誰かに言った?」
「うん!おじいちゃんにいって~とぉさまにききましょうっていったからとぉさまにいって~とぉさまがフィリップをよんで~フィリップがせんせぇになることになって~いまフィリップがアロじぃちゃんにせんせぇをしてっていいにいった」
なるほど、じゃあ後でデュークに色々確認をすることに致しましょう。
「いもーとがうまれるまでにつよくなるからね!だってぼく、おにーちゃんだからいもーとはよわいからまもってあげないと!」
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