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33,噂話
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「そういや、面白い話を聞いたぞ」
その日の夜はハンナさんたちはダンジョンに潜っていて、代わりにゴボスさんとケージくんが泊まることになっている。
「面白い話ですか?」
「ああ、ミリーフの町からやってきた人が町にいて、このダンジョンまで送り届けたんだが、ミリーフの町で悪さをしてた潰し屋がいなくなったようだ。あいつら結構いろんな国でやらかしてるらしかったな」
「ミリムちゃんたちを陥れようとしていた人たちですね。ああ、それなら良かった」
ミリムちゃんとキースくんが聞いたらスカッとするだろうな。
「他にも、あのギルドマスターのトマスって男が森の火事を消したってことだな。ちょうど俺らが出発した数日後だったかな。結構酷い火事だったってな。まあ被害は森の一部だけだ」
「トマスさんは水魔法が使えるんでしたっけね。そうか、空気が乾燥する日々が続いてましたからね、何事もなくて良かった」
消防隊というのがあるのかどうかはわからないけど、水魔法を使える人が火事の時に大活躍するという話は聞いたことがある。
火は怖いからなあ。ミリーフの町にいた時にもぼや騒ぎがあったよな。
「でも父さん、魔物の大群もやってきただろう? そっちの方が事件じゃないか」
「魔物の大群?」
ケージくんの説明によれば、火事が起きた後に魔物が大勢ミリーフの町に押し寄せてきたらしい。
ミリーフの町の冒険者たちが今このダンジョンにも来ていて、ベテランとか強い人たちが少ない状況だった。魔物も簡単に討伐できるような魔物ばかりじゃなくて、かなり苦戦する魔物が多くやってきたようだ。
「なんだ、それならもう大丈夫って言ってただろう。まあ、3週間くらいか、そのくらいでなんとか全部退治したって話だな。めっぽう強いやつがいて、大活躍したらしいぞ」
「それなら良かったです。ダンジョンが新しくできるとそういう問題もあるんですね」
いつ何時魔物が現れるかは予測ができない現実はあるらしい。魔物にも知性があるから、人間たちの隙を突いて襲ってくることだって過去にはあったという話だ。
「でも、嫌な話も聞いたよね?」
「嫌な話?」
「なんでも、このダンジョンに新しい潰し屋が来ているんだって。もしかしたらミリーフの町のやつらかも。だからチカさんも戸締まりをしてた方がいいよ。今はみんなこの家にいるわけじゃないからさ」
潰し屋というのはどこにでも発生するようだ。
酷い話になると、ダンジョンで裏切ったりして、仲間を置き去りにすることがある。元々仲間ではなく、ピンチの時のおとりとしてパーティーを組んでいる、そういうことなんだろう。
こういうキャンプ地みたいなところにでもやってきて、夜に襲うという犯罪行為に及ぶようだ。何ともやりきれない。
「私も今は不用意に出歩かない方がいいのかも」
「そうだな。まあ、嬢ちゃんはこの店でずっと『くりーにんぐ』をしてりゃ安心だ」
そりゃそうだけど、外にも出てみたいよ。
ケージくんから護身術を習って、どこを潰せばいいかを教わった。まあ、人間の急所のどこかで本気で蹴飛ばしたら、時間は稼げるのは世界共通だ。
次の日はゴボスさんは馬を休ませるために休みをとって、ケージくんに付き添ってもらってダンジョン近くの店などを回っていた。
建物は宿屋、鍛冶屋、ラーメン屋だけど、小さな屋台や日用雑貨類なんかも売っている。屋台はスキルとかじゃなくて、持ってきたようだ。店の人たちは同じ場所で会うことも多くて、互いに勝手知ったる関係らしい。
宿屋からアルバートさんが出てきたのを見かけた。私たちには気づかずにどこかへ行ってしまった。
アルバートさんはシリルちゃんのところに滞在しているのか。そうだよね、あんな格好をしてるのにテント暮らしだとすぐに衣類がしわくちゃになってしまうだろう。
宿屋に行くと、ロウくんがいたので、昨日のことを話した。
「ロウくんの判断は良かったと思うよ。あの衣類はちょっとこの子たちには荷が重いと思う」
「俺もそうだと思ったけど、こいつらが拒否したんだ」
「そうなの? 君たちも偉いなあ」
2体のスライムのブルーとグリーンが一斉にぷにぷにと返事をする。この子たちも自分ができることとできないことがわかっているというのは大きな成長だなと思う。
「あっ、チカちゃん」
シリルさんが男性の従業員と出てきた。どうやらシリルさんの彼氏さんらしい。この宿の食事の担当をしていて、シリルちゃんよりも数歳年上のようだ。
「そういえば、アルバートさんってここに泊まってたんだね。私のところのお客様なんだけどね」
「アルバートさんって、不思議な人だよね」
「不思議?」
まあ不思議な格好の人ではある。今は別の服を着こなして、全然印象が違うけどね。
「だってここに来てるのにダンジョンに入っている様子はないっていうか」
「まあ、いろんな事情のある人がいるんじゃない? 私だってダンジョンは怖くて入れないし」
「あはは、そうだよね。いろんな客がいるよね」
そんなことを話しながら、時間が経っていった。
夜はラオウさんのところに行って、みんなでラーメンを食べた。チャーハンや餃子も改良されて、非常に食べやすいものになっているから、やっぱりプロなんだなと思う。
その日の夜はハンナさんたちはダンジョンに潜っていて、代わりにゴボスさんとケージくんが泊まることになっている。
「面白い話ですか?」
「ああ、ミリーフの町からやってきた人が町にいて、このダンジョンまで送り届けたんだが、ミリーフの町で悪さをしてた潰し屋がいなくなったようだ。あいつら結構いろんな国でやらかしてるらしかったな」
「ミリムちゃんたちを陥れようとしていた人たちですね。ああ、それなら良かった」
ミリムちゃんとキースくんが聞いたらスカッとするだろうな。
「他にも、あのギルドマスターのトマスって男が森の火事を消したってことだな。ちょうど俺らが出発した数日後だったかな。結構酷い火事だったってな。まあ被害は森の一部だけだ」
「トマスさんは水魔法が使えるんでしたっけね。そうか、空気が乾燥する日々が続いてましたからね、何事もなくて良かった」
消防隊というのがあるのかどうかはわからないけど、水魔法を使える人が火事の時に大活躍するという話は聞いたことがある。
火は怖いからなあ。ミリーフの町にいた時にもぼや騒ぎがあったよな。
「でも父さん、魔物の大群もやってきただろう? そっちの方が事件じゃないか」
「魔物の大群?」
ケージくんの説明によれば、火事が起きた後に魔物が大勢ミリーフの町に押し寄せてきたらしい。
ミリーフの町の冒険者たちが今このダンジョンにも来ていて、ベテランとか強い人たちが少ない状況だった。魔物も簡単に討伐できるような魔物ばかりじゃなくて、かなり苦戦する魔物が多くやってきたようだ。
「なんだ、それならもう大丈夫って言ってただろう。まあ、3週間くらいか、そのくらいでなんとか全部退治したって話だな。めっぽう強いやつがいて、大活躍したらしいぞ」
「それなら良かったです。ダンジョンが新しくできるとそういう問題もあるんですね」
いつ何時魔物が現れるかは予測ができない現実はあるらしい。魔物にも知性があるから、人間たちの隙を突いて襲ってくることだって過去にはあったという話だ。
「でも、嫌な話も聞いたよね?」
「嫌な話?」
「なんでも、このダンジョンに新しい潰し屋が来ているんだって。もしかしたらミリーフの町のやつらかも。だからチカさんも戸締まりをしてた方がいいよ。今はみんなこの家にいるわけじゃないからさ」
潰し屋というのはどこにでも発生するようだ。
酷い話になると、ダンジョンで裏切ったりして、仲間を置き去りにすることがある。元々仲間ではなく、ピンチの時のおとりとしてパーティーを組んでいる、そういうことなんだろう。
こういうキャンプ地みたいなところにでもやってきて、夜に襲うという犯罪行為に及ぶようだ。何ともやりきれない。
「私も今は不用意に出歩かない方がいいのかも」
「そうだな。まあ、嬢ちゃんはこの店でずっと『くりーにんぐ』をしてりゃ安心だ」
そりゃそうだけど、外にも出てみたいよ。
ケージくんから護身術を習って、どこを潰せばいいかを教わった。まあ、人間の急所のどこかで本気で蹴飛ばしたら、時間は稼げるのは世界共通だ。
次の日はゴボスさんは馬を休ませるために休みをとって、ケージくんに付き添ってもらってダンジョン近くの店などを回っていた。
建物は宿屋、鍛冶屋、ラーメン屋だけど、小さな屋台や日用雑貨類なんかも売っている。屋台はスキルとかじゃなくて、持ってきたようだ。店の人たちは同じ場所で会うことも多くて、互いに勝手知ったる関係らしい。
宿屋からアルバートさんが出てきたのを見かけた。私たちには気づかずにどこかへ行ってしまった。
アルバートさんはシリルちゃんのところに滞在しているのか。そうだよね、あんな格好をしてるのにテント暮らしだとすぐに衣類がしわくちゃになってしまうだろう。
宿屋に行くと、ロウくんがいたので、昨日のことを話した。
「ロウくんの判断は良かったと思うよ。あの衣類はちょっとこの子たちには荷が重いと思う」
「俺もそうだと思ったけど、こいつらが拒否したんだ」
「そうなの? 君たちも偉いなあ」
2体のスライムのブルーとグリーンが一斉にぷにぷにと返事をする。この子たちも自分ができることとできないことがわかっているというのは大きな成長だなと思う。
「あっ、チカちゃん」
シリルさんが男性の従業員と出てきた。どうやらシリルさんの彼氏さんらしい。この宿の食事の担当をしていて、シリルちゃんよりも数歳年上のようだ。
「そういえば、アルバートさんってここに泊まってたんだね。私のところのお客様なんだけどね」
「アルバートさんって、不思議な人だよね」
「不思議?」
まあ不思議な格好の人ではある。今は別の服を着こなして、全然印象が違うけどね。
「だってここに来てるのにダンジョンに入っている様子はないっていうか」
「まあ、いろんな事情のある人がいるんじゃない? 私だってダンジョンは怖くて入れないし」
「あはは、そうだよね。いろんな客がいるよね」
そんなことを話しながら、時間が経っていった。
夜はラオウさんのところに行って、みんなでラーメンを食べた。チャーハンや餃子も改良されて、非常に食べやすいものになっているから、やっぱりプロなんだなと思う。
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