96 / 125
第二部
29,ファッションと命
しおりを挟む
「そういえば、衣装に関しては特別なご配慮、痛み入ります」
「そうね。まだまだ時間がかかりそう」
何のことかといえば、ファッションについてである。
この世界ではコルセットがあったり、厚底の靴やヒールが社交界では一般的である。この世界というよりはバラード王国周辺の国々がそうであると言った方が正確かもしれない。
安全学や失敗学、あるいは安全工学という事故や災害を回避するために安全性を追求する分野がある。ある事故や災害の要因をヒューマンエラーという個人の資質や能力だけに求めるのではなく、広く環境やシステムの問題や責任として見ていく、そういうことである。
変な例だが、たとえばテストのカンニングがある。
見た側が悪いと考えることが一般的だが、前後左右の席の間隔はどうだったのか、「見られた」側は「見せた」側と言えるのではないか等のように、カンニングという行為を巡って様々な誘発要因を見つけ出していき、この「事故」を未然に防ぐために席の間隔をしっかり取ったり、全て解答欄を埋めて「さあ寝よう」と思う時にも裏返して眠ったりとか、そんな対策が求められる。
まあただ、これも突き詰めたら「私は悪くない」と居直り強盗みたいになってしまうところがある。
他にも有名なのは「逸脱の標準化」と呼ばれる、人間の慣れや心理が導いた最悪の事故が、1986年のスペース・シャトルの大事故や、1999年の東海村JCO臨界事故である。
21世紀になってからも、このタイプの事故は多く見られたものだ。
「ファッションと死」というテーマは、実は地球では長い間人々の中で問題となってきている。「きていた」と過去ではなく、現在も起きている。
長いマフラーが回転する物体に巻きこまれて人の首を絞めたり、19世紀に女性のスカートの膨らみを保つクリノリンというものをつけた女性が機械に巻きこまれたり、そういう事故は多発していたと言われる。
不謹慎だが、死のピタゴラスイッチとでも呼んでもいいのだろうが、何か一つが別の事象に干渉し、誘発し、人の命を奪っていくことはファッションに関わる世界では珍しくない。
もう20年近くなるだろうか、2000年前後だったと思うが、厚底ブーツや厚底サンダルが流行った時期があった。
その一方で自動車の運転操作を誤って死亡事故が起きたことが話題になったことがあった。私もたまに靴を新調して車に乗ると、ブレーキやアクセルの踏み心地が異なることがあったが、靴底が厚かったら困難だろうと思う。
パリコレと呼ばれる、フランスで開催されるファッションの新作発表会がある。ランウェイと呼ばれる細長い通路を往復しながら新作の衣装を見せているが、この通路をキャットウォークとも言う。
イギリスにヴィヴィアン・ウエストウッドというファッションデザイナーがいるのだが、1993年のファッションショーのランウェイで厚底の靴を履いたモデルが転倒するという事故が起きた。
そのモデルとは、この転倒から数年後、日本ではCMでナオミという少女がエステから帰ってきて「ナオミよ」と発した、あのナオミ・キャンベルである。
歩き慣れているプロのモデルでさえ転ける可能性があるのだから、一般人がそういう靴を履いたらどうなるかは容易に想像ができる。
安全性や健康という観点からファッションは捉え直す方が私は良いと思うし、この世界でもおそらく見えていないところで大小様々な事故が起きているのだと思う。
この件については、以前にアリーシャが「お父様、コルセットのことなのですが」と、身体に及ぼす影響について訊ねてきたことがあった。
アリーシャ自身は小さい頃はある種の憧れのようなものを抱いていたようだが、人体の構造を理解した際にコルセットが果たして本当に望ましいものなのかどうか、疑念が湧いてきたそうである。
地球では医療用のコルセットがあるとはいえ、何の問題もない人間が身につけることは私も望ましくないと考えていた。
さすがに纏足はこの世界にはないが、コルセット以外にも肉体を過度に矯正する装置はある。
靴に関していえば左右の違いのない靴が多い。つまり、左右が同型の靴である。
左右の足の形が違うのは見ての通りだが、左右兼用の靴というのはそれなりに利便性はあったのだろう。しかし、緩やかなスリッパならともかく、日常的にある程度の距離を歩く場合には健康的ではない。
私も革靴を買うことがあったが、店員はかなり丁寧に足を計測してくれた。
アベル王子の顔はシンメトリーだが、そういう人間は限られている。足も同じことがいえて、左右対称ではなく、骨格の差や癖によって非対称である。だから、靴についても改革したいと思っていた。
ガラスの靴を履くのに必要なことは足を切ることではなくガラスの靴を変えることである。
いろいろと経緯はあるのだが、何度か社交界で当たり前になっているファッションについては意見を述べたことがあった。だが、大顰蹙だった。それは男性からも批判があったし、当の女性たちからの大反対の声が強かった。
私の提言は伝統や文化、またそれらへの意識を変えることである。
一筋縄にはいかないわけだが、こんなにも反発があるとは思ってもみなかった。おそらくスーツからジャージにしなさいとかノーメイクでいなさいと言われるようなものなんだろう。
マリア王妃は、私の意図を汲んでくれた上で、少しずつファッションをずらしていっている。協力してもらっているのだった。王族が率先垂範してくれることはありがたいが、それでもなかなか手こずっている。
王室は地球の言葉を使えばインフルエンサーである。
さて、本来であれば従来の衣服に替わるような新しい身体のデザインやモデル、並びにその衣服を同時に提示しなければならないのだろうと思うが、この分野についてはなかなか手が回らないでいる。
ドジャース商会がこうした方面にあまり手を出していないのも強気に出られない理由でもある。
それでも何かしらの運動は必要だと思うので、草の根運動みたいに身近な人間と話をして理解をしてもらえるように少しずつ展開をしている。
「いらっしゃい」
王都には奇妙な店が何店舗かあるのだが、王宮から戻る道に魔道具屋という不思議な店がある。
王都に住み始めてから定期的に通っている。もう20回くらい通っただろうか。
店主は年齢不詳の婆さんで、魔女と言われても不思議ではない。黒いローブを身に纏った姿はまさしくそういう印象を受ける。
最初に来た時に話しかけたのだが、一切無視された。
なんだこの婆さんは?と思ったものだったが、陳列されてある商品がこの世界では珍しいものばかりで、しかしその機能ははっきりとわからない。
だから、「これはどういう商品なんだ?」と訊いたが、うんともすんとも言わず、ただ店に座っているだけである。売ってもくれなかった。
それが、たしか5回目だっただろうか、その時初めて「何かお探しかい?」と声を発したので、この婆さんが置物じゃなかったのだと妙に安心してしまった。
いったい商売をする気があるのか、経営は成り立っているのか、疑問だったが、街の評判では何回か通えば話してくれるという不思議な店だった。
それから何度か会話をしたのだが、商品の説明を訊いてもさっぱりわからない。
説明がわからないというより、どういう原理で動くのかがわからない商品ばかりだったからだ。
たとえば、羽がないのに風が出たり、何もないのに火が出たりする。電気で動くのかと思ったが、そういうものでもないようだ。なぜ無から有が生まれるのか、疑問ばかりが残る。
「秘密じゃよ」と、商品開発に関わる一切の秘密は教えてくれない。
「婆さん、まだ生きてたんだな」
「ひひひ、おかげさまでな」
この店に来る時にはいつもハートだけを連れてきていたのだが、クリスと一緒にやってきた時にクリスが言った。
「クリスは知ってたのか?」
「はい。この店は何でも屋なんです。まあ魔道具屋とも言われています」
何でも、魔法の素をエネルギーにして動く道具、それが魔道具だという。貴族街に近い場所なので、ハートは知らなかったのだろう。
魔道具の存在については知っていたが、その仕組みがわからない以上手は出さなかった。調べるにしても解析に時間がかかりそうだし、商売にはならないように思えたから放っておいた。どこかインチキ商品だと思っていたところはある。
しかし、今は商品開発が緩やかなのでようやく魔道具というものを本格的に調べてみようという気になったが、その原理がやはりわからない。魔道具職人という人間もいるようだが、王都内にいるのかは情報がない。それに作るのにも時間がかかるという。
クリスによれば、販売だけではなく、魔物の素材などを高く買い取ってくれる店のようである。
クリスが20代の時に見つけたので、もしかするとバカラの学生時代にはまだなかったのかもしれない。魔物の素材自体は特殊な効果のあるものがあって、その効果を巧みに発現させたのが魔道具である、ということになろうか。
それで何度か通い詰めて、いくつかの商品を買った日に、婆さんが思い出したように「そうじゃ」と言って小さな袋を取り出した。
「何度も通ってくれた礼じゃ。これをやろう」
「これは……種か?」
「ああ、そうじゃ」
小さな袋には5粒の種が入っていた。ひまわりの種のようなものだったが、ひまわりではないだろう。
「何の植物なんだ?」
「それは秘密じゃ。まあ、植えてみるといい。もしかしたら花を咲かせられるかもしれんのう。咲くまでは長いじゃろうが、一度咲いたらいつまでも咲き続けるんじゃ。どんな色の花が咲くかのう」
なんだか危ない種のように思えたが、種と魔法とを合成する、そういう技術でもあるということだろうか。
持ち帰って、土研究者のレイトや他にも植物研究者たちに話を訊いたのだが、誰も知らない種だという。
それで庭に5粒の種を土に入れたら、次の日にはなんと芽を出した。5粒すべてである。まるで何かのアニメ映画みたいである。
「成長が早いな」
「普通の種じゃないですね」
レイトに一日で芽を出す花の種のことを訊いたのだが、心当たりはないようだった。
ただ、一人の研究者が魔法の種ならあるいは、と言っていたので話を詳しく訊くと、特別な製法で種自体を作る人々がいて、そういう種は通常では考えられない成長をする、そんな話である。
「害はないんだろうな?」
「おそらく」
店主の婆さんといい、店の商品といい、魔法の種といい、どこまでも謎に包まれているが、どういう花を咲かせるのか、注視していきたい。
「そうね。まだまだ時間がかかりそう」
何のことかといえば、ファッションについてである。
この世界ではコルセットがあったり、厚底の靴やヒールが社交界では一般的である。この世界というよりはバラード王国周辺の国々がそうであると言った方が正確かもしれない。
安全学や失敗学、あるいは安全工学という事故や災害を回避するために安全性を追求する分野がある。ある事故や災害の要因をヒューマンエラーという個人の資質や能力だけに求めるのではなく、広く環境やシステムの問題や責任として見ていく、そういうことである。
変な例だが、たとえばテストのカンニングがある。
見た側が悪いと考えることが一般的だが、前後左右の席の間隔はどうだったのか、「見られた」側は「見せた」側と言えるのではないか等のように、カンニングという行為を巡って様々な誘発要因を見つけ出していき、この「事故」を未然に防ぐために席の間隔をしっかり取ったり、全て解答欄を埋めて「さあ寝よう」と思う時にも裏返して眠ったりとか、そんな対策が求められる。
まあただ、これも突き詰めたら「私は悪くない」と居直り強盗みたいになってしまうところがある。
他にも有名なのは「逸脱の標準化」と呼ばれる、人間の慣れや心理が導いた最悪の事故が、1986年のスペース・シャトルの大事故や、1999年の東海村JCO臨界事故である。
21世紀になってからも、このタイプの事故は多く見られたものだ。
「ファッションと死」というテーマは、実は地球では長い間人々の中で問題となってきている。「きていた」と過去ではなく、現在も起きている。
長いマフラーが回転する物体に巻きこまれて人の首を絞めたり、19世紀に女性のスカートの膨らみを保つクリノリンというものをつけた女性が機械に巻きこまれたり、そういう事故は多発していたと言われる。
不謹慎だが、死のピタゴラスイッチとでも呼んでもいいのだろうが、何か一つが別の事象に干渉し、誘発し、人の命を奪っていくことはファッションに関わる世界では珍しくない。
もう20年近くなるだろうか、2000年前後だったと思うが、厚底ブーツや厚底サンダルが流行った時期があった。
その一方で自動車の運転操作を誤って死亡事故が起きたことが話題になったことがあった。私もたまに靴を新調して車に乗ると、ブレーキやアクセルの踏み心地が異なることがあったが、靴底が厚かったら困難だろうと思う。
パリコレと呼ばれる、フランスで開催されるファッションの新作発表会がある。ランウェイと呼ばれる細長い通路を往復しながら新作の衣装を見せているが、この通路をキャットウォークとも言う。
イギリスにヴィヴィアン・ウエストウッドというファッションデザイナーがいるのだが、1993年のファッションショーのランウェイで厚底の靴を履いたモデルが転倒するという事故が起きた。
そのモデルとは、この転倒から数年後、日本ではCMでナオミという少女がエステから帰ってきて「ナオミよ」と発した、あのナオミ・キャンベルである。
歩き慣れているプロのモデルでさえ転ける可能性があるのだから、一般人がそういう靴を履いたらどうなるかは容易に想像ができる。
安全性や健康という観点からファッションは捉え直す方が私は良いと思うし、この世界でもおそらく見えていないところで大小様々な事故が起きているのだと思う。
この件については、以前にアリーシャが「お父様、コルセットのことなのですが」と、身体に及ぼす影響について訊ねてきたことがあった。
アリーシャ自身は小さい頃はある種の憧れのようなものを抱いていたようだが、人体の構造を理解した際にコルセットが果たして本当に望ましいものなのかどうか、疑念が湧いてきたそうである。
地球では医療用のコルセットがあるとはいえ、何の問題もない人間が身につけることは私も望ましくないと考えていた。
さすがに纏足はこの世界にはないが、コルセット以外にも肉体を過度に矯正する装置はある。
靴に関していえば左右の違いのない靴が多い。つまり、左右が同型の靴である。
左右の足の形が違うのは見ての通りだが、左右兼用の靴というのはそれなりに利便性はあったのだろう。しかし、緩やかなスリッパならともかく、日常的にある程度の距離を歩く場合には健康的ではない。
私も革靴を買うことがあったが、店員はかなり丁寧に足を計測してくれた。
アベル王子の顔はシンメトリーだが、そういう人間は限られている。足も同じことがいえて、左右対称ではなく、骨格の差や癖によって非対称である。だから、靴についても改革したいと思っていた。
ガラスの靴を履くのに必要なことは足を切ることではなくガラスの靴を変えることである。
いろいろと経緯はあるのだが、何度か社交界で当たり前になっているファッションについては意見を述べたことがあった。だが、大顰蹙だった。それは男性からも批判があったし、当の女性たちからの大反対の声が強かった。
私の提言は伝統や文化、またそれらへの意識を変えることである。
一筋縄にはいかないわけだが、こんなにも反発があるとは思ってもみなかった。おそらくスーツからジャージにしなさいとかノーメイクでいなさいと言われるようなものなんだろう。
マリア王妃は、私の意図を汲んでくれた上で、少しずつファッションをずらしていっている。協力してもらっているのだった。王族が率先垂範してくれることはありがたいが、それでもなかなか手こずっている。
王室は地球の言葉を使えばインフルエンサーである。
さて、本来であれば従来の衣服に替わるような新しい身体のデザインやモデル、並びにその衣服を同時に提示しなければならないのだろうと思うが、この分野についてはなかなか手が回らないでいる。
ドジャース商会がこうした方面にあまり手を出していないのも強気に出られない理由でもある。
それでも何かしらの運動は必要だと思うので、草の根運動みたいに身近な人間と話をして理解をしてもらえるように少しずつ展開をしている。
「いらっしゃい」
王都には奇妙な店が何店舗かあるのだが、王宮から戻る道に魔道具屋という不思議な店がある。
王都に住み始めてから定期的に通っている。もう20回くらい通っただろうか。
店主は年齢不詳の婆さんで、魔女と言われても不思議ではない。黒いローブを身に纏った姿はまさしくそういう印象を受ける。
最初に来た時に話しかけたのだが、一切無視された。
なんだこの婆さんは?と思ったものだったが、陳列されてある商品がこの世界では珍しいものばかりで、しかしその機能ははっきりとわからない。
だから、「これはどういう商品なんだ?」と訊いたが、うんともすんとも言わず、ただ店に座っているだけである。売ってもくれなかった。
それが、たしか5回目だっただろうか、その時初めて「何かお探しかい?」と声を発したので、この婆さんが置物じゃなかったのだと妙に安心してしまった。
いったい商売をする気があるのか、経営は成り立っているのか、疑問だったが、街の評判では何回か通えば話してくれるという不思議な店だった。
それから何度か会話をしたのだが、商品の説明を訊いてもさっぱりわからない。
説明がわからないというより、どういう原理で動くのかがわからない商品ばかりだったからだ。
たとえば、羽がないのに風が出たり、何もないのに火が出たりする。電気で動くのかと思ったが、そういうものでもないようだ。なぜ無から有が生まれるのか、疑問ばかりが残る。
「秘密じゃよ」と、商品開発に関わる一切の秘密は教えてくれない。
「婆さん、まだ生きてたんだな」
「ひひひ、おかげさまでな」
この店に来る時にはいつもハートだけを連れてきていたのだが、クリスと一緒にやってきた時にクリスが言った。
「クリスは知ってたのか?」
「はい。この店は何でも屋なんです。まあ魔道具屋とも言われています」
何でも、魔法の素をエネルギーにして動く道具、それが魔道具だという。貴族街に近い場所なので、ハートは知らなかったのだろう。
魔道具の存在については知っていたが、その仕組みがわからない以上手は出さなかった。調べるにしても解析に時間がかかりそうだし、商売にはならないように思えたから放っておいた。どこかインチキ商品だと思っていたところはある。
しかし、今は商品開発が緩やかなのでようやく魔道具というものを本格的に調べてみようという気になったが、その原理がやはりわからない。魔道具職人という人間もいるようだが、王都内にいるのかは情報がない。それに作るのにも時間がかかるという。
クリスによれば、販売だけではなく、魔物の素材などを高く買い取ってくれる店のようである。
クリスが20代の時に見つけたので、もしかするとバカラの学生時代にはまだなかったのかもしれない。魔物の素材自体は特殊な効果のあるものがあって、その効果を巧みに発現させたのが魔道具である、ということになろうか。
それで何度か通い詰めて、いくつかの商品を買った日に、婆さんが思い出したように「そうじゃ」と言って小さな袋を取り出した。
「何度も通ってくれた礼じゃ。これをやろう」
「これは……種か?」
「ああ、そうじゃ」
小さな袋には5粒の種が入っていた。ひまわりの種のようなものだったが、ひまわりではないだろう。
「何の植物なんだ?」
「それは秘密じゃ。まあ、植えてみるといい。もしかしたら花を咲かせられるかもしれんのう。咲くまでは長いじゃろうが、一度咲いたらいつまでも咲き続けるんじゃ。どんな色の花が咲くかのう」
なんだか危ない種のように思えたが、種と魔法とを合成する、そういう技術でもあるということだろうか。
持ち帰って、土研究者のレイトや他にも植物研究者たちに話を訊いたのだが、誰も知らない種だという。
それで庭に5粒の種を土に入れたら、次の日にはなんと芽を出した。5粒すべてである。まるで何かのアニメ映画みたいである。
「成長が早いな」
「普通の種じゃないですね」
レイトに一日で芽を出す花の種のことを訊いたのだが、心当たりはないようだった。
ただ、一人の研究者が魔法の種ならあるいは、と言っていたので話を詳しく訊くと、特別な製法で種自体を作る人々がいて、そういう種は通常では考えられない成長をする、そんな話である。
「害はないんだろうな?」
「おそらく」
店主の婆さんといい、店の商品といい、魔法の種といい、どこまでも謎に包まれているが、どういう花を咲かせるのか、注視していきたい。
21
お気に入りに追加
4,858
あなたにおすすめの小説
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね
いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。
しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。
覚悟して下さいませ王子様!
転生者嘗めないで下さいね。
追記
すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。
モフモフも、追加させて頂きます。
よろしくお願いいたします。
カクヨム様でも連載を始めました。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
【完結】妃が毒を盛っている。
佳
ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。
王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。
側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。
いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。
貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった――
見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。
「エルメンヒルデか……。」
「はい。お側に寄っても?」
「ああ、おいで。」
彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。
この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……?
※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!!
※妖精王チートですので細かいことは気にしない。
※隣国の王子はテンプレですよね。
※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り
※最後のほうにざまぁがあるようなないような
※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい)
※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中
※完結保証……保障と保証がわからない!
2022.11.26 18:30 完結しました。
お付き合いいただきありがとうございました!
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
婚約破棄ですか? ありがとうございます
安奈
ファンタジー
サイラス・トートン公爵と婚約していた侯爵令嬢のアリッサ・メールバークは、突然、婚約破棄を言われてしまった。
「お前は天才なので、一緒に居ると私が霞んでしまう。お前とは今日限りで婚約破棄だ!」
「左様でございますか。残念ですが、仕方ありません……」
アリッサは彼の婚約破棄を受け入れるのだった。強制的ではあったが……。
その後、フリーになった彼女は何人もの貴族から求愛されることになる。元々、アリッサは非常にモテていたのだが、サイラスとの婚約が決まっていた為に周囲が遠慮していただけだった。
また、サイラス自体も彼女への愛を再認識して迫ってくるが……。
お姉さまとの真実の愛をどうぞ満喫してください
カミツドリ
ファンタジー
「私は真実の愛に目覚めたのだ! お前の姉、イリヤと結婚するぞ!」
真実の愛を押し通し、子爵令嬢エルミナとの婚約を破棄した侯爵令息のオデッセイ。
エルミナはその理不尽さを父と母に報告したが、彼らは姉やオデッセイの味方をするばかりだった。
家族からも見放されたエルミナの味方は、幼馴染のローレック・ハミルトン公爵令息だけであった。
彼女は家族愛とはこういうものだということを実感する。
オデッセイと姉のイリヤとの婚約はその後、上手くいかなくなり、エルミナには再びオデッセイの元へと戻るようにという連絡が入ることになるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる