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凪編
アテネ
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少し小高く人の少ない場所に着いた。
美空は、
「ここ、知る人ぞ知る穴場スポットってやつなんです」
と言って教えてくれた。
夜空に花火が上がる。
色とりどりの光が空を照らす。
それが何故か空を汚しているように見えた。
美しい星々を光で埋め尽くして、隠しているように見えて。
花火は上がる。
次々と。空を見上げていれば、美空が急に抱きついてきた。
「俺は、渚先輩が好きです。だけど、俺よりアテネを選ぶことだって知ってます」
「うん」
「...否定、してくれないんですね」
美空の顔は涙に濡れていた。
花火の音が五月蝿いくらいこの空間に響く。
「...ねぇ、渚先輩。アテネは生き返ってるってこと知ってますよね?...普通はそんな事できません。何かしらの条件があるはずです。アテネは、何か言っていませんでしたか?先輩とあったときに」
アテネは、
「もう一度、夏をやり直しませんかって言ってた」
その途端僕は答えがわかってしまった。
美空が何を言いたいのかを。
夏が終わって仕舞えばアテネはまた死ぬ。
今度は二度と生き返ることなく、永遠に事切れる。
アテネの待つ家まで歩き、ドアを開き玄関に入る。
アテネはこちらを見てから、何となく察したみたいで、
「ばれちゃいましたか」
なんて言って笑った。
そして、立ち尽くす僕をそっと抱きしめる。
頭をまるであやすかの様に撫で初めて、耳元でそっと僕にこう言った。
「そうです。僕は夏が終われば死んじゃいます」
それを聞いて、涙が抑えきれなくて泣いてしまって。
アテネは僕を撫でる手を止めたかと思ったら、僕の左手を掴んで、薬指に噛み付いた。
思わず悲鳴を上げてしまいそうになったけど、なんとか堪える。
「ねぇ、渚。僕が生きてた証を付けさせてください。こんなのダメだってわかっているけど」
答えるように僕もアテネの左手の薬指を噛む。
噛み跡がまるで指輪のようで。
僕はそれを見た途端、見覚えがある気がして少し頭が痛くなった。
けれど、気にしちゃいけない気がして。
そっとアテネを抱きしめる。
「良いよ、つけて。僕も付けるから」
時計を見たらもう零時は過ぎていたのに。
もう昨日のことになった火の花が咲く音が耳元で響いた気がした。
なんとなく、二度と聞かない気がした。
美空は、
「ここ、知る人ぞ知る穴場スポットってやつなんです」
と言って教えてくれた。
夜空に花火が上がる。
色とりどりの光が空を照らす。
それが何故か空を汚しているように見えた。
美しい星々を光で埋め尽くして、隠しているように見えて。
花火は上がる。
次々と。空を見上げていれば、美空が急に抱きついてきた。
「俺は、渚先輩が好きです。だけど、俺よりアテネを選ぶことだって知ってます」
「うん」
「...否定、してくれないんですね」
美空の顔は涙に濡れていた。
花火の音が五月蝿いくらいこの空間に響く。
「...ねぇ、渚先輩。アテネは生き返ってるってこと知ってますよね?...普通はそんな事できません。何かしらの条件があるはずです。アテネは、何か言っていませんでしたか?先輩とあったときに」
アテネは、
「もう一度、夏をやり直しませんかって言ってた」
その途端僕は答えがわかってしまった。
美空が何を言いたいのかを。
夏が終わって仕舞えばアテネはまた死ぬ。
今度は二度と生き返ることなく、永遠に事切れる。
アテネの待つ家まで歩き、ドアを開き玄関に入る。
アテネはこちらを見てから、何となく察したみたいで、
「ばれちゃいましたか」
なんて言って笑った。
そして、立ち尽くす僕をそっと抱きしめる。
頭をまるであやすかの様に撫で初めて、耳元でそっと僕にこう言った。
「そうです。僕は夏が終われば死んじゃいます」
それを聞いて、涙が抑えきれなくて泣いてしまって。
アテネは僕を撫でる手を止めたかと思ったら、僕の左手を掴んで、薬指に噛み付いた。
思わず悲鳴を上げてしまいそうになったけど、なんとか堪える。
「ねぇ、渚。僕が生きてた証を付けさせてください。こんなのダメだってわかっているけど」
答えるように僕もアテネの左手の薬指を噛む。
噛み跡がまるで指輪のようで。
僕はそれを見た途端、見覚えがある気がして少し頭が痛くなった。
けれど、気にしちゃいけない気がして。
そっとアテネを抱きしめる。
「良いよ、つけて。僕も付けるから」
時計を見たらもう零時は過ぎていたのに。
もう昨日のことになった火の花が咲く音が耳元で響いた気がした。
なんとなく、二度と聞かない気がした。
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