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四章 雪闇ブラッド

喧嘩

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後ろを振り返ると、月光に横から照らされながら、立っている理久がいた。
戦場から帰ってきたばかりだから、本来返り血が激しいはずなのに。
ちゃんとシャワー浴びて綺麗にして。
凪が来る前の理久ならそんなの気にしないと思ったのにな。
理久は俺のそばで眠りにつく凪の顔を見てから、俺に手招きをした。
それに従ってベッドに出る。
理久の部屋から出て、少し歩いて広間に出る。
昼間であれば人が行き交い騒がしいここも、夜になれば途端に静かになる。
理久と二人きりになった瞬間。
理久は俺の胸ぐらを掴んだ。
「ねぇ、凪と二人きりで寝るとかなに考えてるの?凪に手出ししたら雪でも怒るよ?」
そう理久が言う。
その目はどう見ても本気で。
本気で怒り狂っていた。
「そんな事言うなら常に理久が凪の傍にいてやれよ。それもできねーんだろ?…、普段。凪がどんな顔してご飯食べてるのとか、どんな気持ちで過ごしているのかわからないのかよ」
そう理久に問う。
大切なら常に凪の傍にいてやれよ。
お前は王様なんだろ?
お前が望めば世界は思うがままなんだろ?
暴君らしく自分の意思を貫き通せよ。
あんな老害どもに従ってテメェの意思を曲げる意味なんて全くないじゃん。
「なに?凪よりあの老害どものが大事なの?だから凪なんてほっぽってあいつらの言うこと聞くわけ?バカみたいじゃん。フツーに考えてみろよ」
そう馬鹿にしたように笑えば、理久は普通にブチギレたみたいで。
アイアンメイデンを召喚した。
これ以上余計な事を言うならばこれで殺すという脅しだろう。
俺は吸血鬼だから。
ただ首絞めただけじゃ死なないよ。
心臓に杭を打ち込んでもらわないと。
それも銀で出来た杭を。
そんな事理久も知っているはずだし、無意味だって事もわかっているはずだ。
なのにそれをするのは。
きっと、どうにもならない気持ちの発散だろう。
そうするしかなかったのだろう。
でも、俺にそんな事をする気はやっぱり無いみたいで。
徐々に理久の処刑道具は消えていった。
「僕だって…、僕だって!凪の傍にずっと居れるならいたい!朝から晩までずっと一緒にいたい!けどさぁ、凪をこの国に置くには言う事聞けって老害どもうるさいんだ。」
そう理久が溜め込んでいたものを吐き出すように言う。
ポタポタと床に涙を溢しながら。
「僕が言うことを聞かないと、凪をあの老害どもの実験道具として扱うって…!そりゃ僕が直接抵抗すればいいのかもしれないけど…。…、怖いんだ。あいつらを前にすると凄く震えるんだ。昔から植え付けられたトラウマって言えばいいのかな…」
そう、震えながら理久は言う。
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