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四章 雪闇ブラッド

見えちゃうよ

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人に見られるなんて事はしてはいけない。
だって禁忌なんだから。
触れる事だって許されない。
颯太や美空が許されているのは王族だから。
特別だから。
だけど普通なら王族は関わろうとしないから。
だから美空と颯太が特別。
「んーん、無いよ。でも、なんとなくわかるんだ。理久が見せてくれた映画にそういうワンシーンがあるやつがあって」
だからわかるんだ。
そう言うと美空は納得した顔をした。
舞踏会の実体験なんてものはない。
そんなの体験出来ないから。
ただ、映像で見たものについて言うだけ。
けれど、なんとなく覚えているセリフがあったから。
それを言おうと思って、美空にいった。
「僕をエスコートしてよ、王子様。一緒に踊ろう?」
と美空を誘う。
すると、本当に嬉しそうな顔をして美空は笑う。
いいんですか?なんて言いながら。
「喜んでエスコートさせていただきます。俺の姫」
そう美空は返して、僕の手を掴んだ。
手を掴んで、僕を氷上で操る。
僕は上手く滑れないから。
美空に導かれながらじゃないと滑れない。
手を引いて、一緒に回ったり。
何処へ行くわけでもなく滑ってみたり。
視線を絡ませてみたり。
たわいない会話を繰り返してみたり。
「どうしてそんなに滑るのが上手いの?」
そう美空に問いかける。
すると美空は、
「それは練習したからですよ。俺も最初上手く滑れなくて。でも、凪先輩に凄いっていって欲しかったから頑張りました」
そう言って笑った。
美空は凄い。
上手く滑って、僕と一緒に踊る。
美空は僕を慈しむような瞳で見つめるから。
その視線がくすぐったくて。
時々視線を外しながら踊っていた。
そうやって二人で滑っていると。
近くを通りかかった人の声が聞こえた。
普通なら聞こえないはずなのに。
やけに大きな声で聞こえてしまって。
「あの二人、恋人同士みたいね。情熱的に視線を絡ませて。二人だけの世界に浸ってる感じ。なんだか熱いわね」
その言葉に思わず手を離してしまった。
だって、恋人同士だなんて、美空は見られたくないだろうから。
一緒に滑って幾分か時間が経過したおかげか、バランスを取るくらいの事は出来たから。
問題はなかった。
急に手を離した僕に、美空は不思議そうな顔をする。
どうして手を離すの?とでも言いたげに。
「どうしたんですか?凪先輩。一緒に踊りましょうよ」
首を傾げながら僕に問う。
「でも、さっき恋人同士って...。美空、良いの?僕ら恋人同士に見えちゃうよ?」
この場合の良いのには、美空は王族なのにという意味も含まれていた。
それに王族なんだから僕と恋人だと見られたら。
だってそうだ。
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