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四章 雪闇ブラッド

理久の為

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なんでそんな態度取るのか自分でもわからないけど。
「…、理久の主は誰なの」
普段なら絶対に言わない言葉。
言う勇気の無いヘタレなだけだけど。
理久は僕がこんな事言うなんて想像もしていなかったようで。
驚いたように目を見開いて、不思議な顔をしていた。
そんなこと言うのかわからないような。
不思議というか。
少し間抜けな顔を。
でも、すこしだけ嬉しそうな顔をしながら。
少し笑みを浮かべて、そんなことを言ってくれるなんて!なんて言いたげな顔をして。
けれどすぐに頭を振って、元の顔に戻した。
まるでなんでもなかったかのように。
胸に手を当てて、まるで執事が姫に応えるかのように、
「凪のだよ。僕の血も体も。僕を厚生する物質全て。だって僕ら契約したじゃん?」
頬を赤らめながらそう告げる。
妙に誇らしげな表情を浮かべながら。
そのまま言葉を繋げる。
「あの日から僕の全部は君の。契約を破棄するまで逃れられないの。解く気なんてない。もう離れたくないんだよ」
笑みを溢しながら、恍惚の表情を浮かべながら理久は告げる。
興奮して来たのか、呼吸を荒げながらそう僕に訴える。
まるで溺れているみたいだ。
なんとなく、そう思った。
底もなくて、陸もなくて。
そんな所でずっと溺れているみたいな。
掴むところも、命綱も存在しない場所で足掻いているような。
いや、足掻いているというよりも、踊っている方が正しいか。
「大丈夫。僕も破棄する気なんて無いから」
そう言うと理久は安心したような顔をして。
よかった、と笑った。
僕がこう答えることなんて想定済みだろうに。
それなのに、この悪魔は。
僕が側にいることに対して酷く安心したような表情を見せる。
それが僕だけに見せる表情なのも嬉しくて。
そんな自分が歪んでいることなんてとうの昔に知っている。
きっとあの塔の暮らしのせいだ。
「じゃあ理久、早く準備してよ。一緒に行くんでしょ?」
そう言うと、大人しく用意されるのを受け入れた。
むしろ自ら積極的に準備し始めた。僕と出来る限りお揃いにしようとして。
一生懸命衣装を選んで。
健気だな、と思った。
美空はそんな僕らの事を見守っていた。
珍しく何にも口出ししない美空は、そのまま雫と何かを話していた。
雫は少し険しげな表情をした後に、すぐ笑って。
何を話しているんだろう、なんて思った。
あぁ、と。
そんな二人の様子を見て。
理久の為に用意した厚着があるのを思い出した。
行く前に一生懸命用意したんだから。
せっかくだから着てみてほしい。
靴からマフラーと手袋を取り出して。
理久の首に巻いてあげて、手袋をはめる。
僕の首にもお揃いのを巻いて、手袋をはめる。
たまたま行ったデパートに、珍しく売ってて。
理久が雫が僕と過ごした時間が長いのがやたらと気にしていたから。
だからお揃いのマフラーと手袋を買った。
それで理久の機嫌が治ってくれたらと思って。
そしたら理久は凄く喜んで。
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