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四章 雪闇ブラッド
守るなんて出来ないよ
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その人達が豊かに暮らすための財源になるのだろう。
もしくは人目につかないところに閉じ込められるのだろうか。
人目に触れさせてはいけない怪物だと言われながら。
確かに無限に体が再生する人間なんて、『まともな人間の感性』から見たら異常以外の何でもないだろう。
そんな怪物は永遠に閉じ込めて。
ずっと外に出られないようにしなければ。
きっとそういう思想の故の行動なんだろうな。
どちらにしろまともな道は残っていない気がした。
元の場所に戻ったってとっくに詰んでいるような。
どんなに足掻いても良い結果にならなそうな。
現国王らは子供が死んで心神喪失状態だろうし。
凪が面会する事も叶うかもわからない。
まず人に会おうとすらしないと思うし。
そのような状態で息子と名乗る人物がやってきたと聞いてもすぐ会う気になれないだろうし。
偽物だと思うだろう。
でも、イザベラは会いに行くんだろうな。
もしも、なんて希望を持ちながら。
今はきっと国王の弟がメイサイの代理国王を務めるだろう。
だからきっと事実なんて伝えないだろう。
確か彼はずっと国王の座を狙っていたのだから。
他国の情報なんて理久の魔法があれば簡単に筒抜けになってしまうのだから。
そんなのわかっているよ。
...、このまま戻っても凪が幸せになれる気がしなかった。
むしろとことん苦しめられて。
死にたいと願う姿が浮かんだ。
希望を浮かべていた瞳には絶望が浮かび。
希望を歌っていた口には死を渇望する言葉ばかりが並んでいき。
何度傷つけても死ねない体に絶望しながら体を引きずる。
それでも両親の元に帰りたいという気持ちを優先すべきかと思った。
今の凪がそう思っているなら。
一度帰ればいいよ。
もしかしたら僕が想像したような酷い目に遭わないかもしれないしさ。
それで不幸な目に見舞われるようなら、ここに戻ってくれば良いよ。
理久がちゃんと守ってくれるだろうし。
酷い目に遭わないように大切に大切にしてくれる。
だからゆっくりここで傷を治せば良いよ。
心ゆくまで心を癒せば良いよ。
そしたらきっと君はまた元気になるだろうから。
理久が凪を呼ぶ。
「おーい!準備できたよ!おいで?」
その声は酷く優しげだった。
「はぁい。もういくね?また会おうね闇奈!」
凪は部屋から出ていく。
音を立ててしまったドアが、この部屋に僕一人になった事を語っていた。
ふぅ、と息をつく。
理久ならちゃんと守ってくれる。
その役目は僕じゃなくて良い。
「ほう、お主は守ってやらないのか?」
そんな声が聞こえた。
若々しい女の声のくせして、老人のような話し方。
アンバランスな存在だ。
それに何より姿が見えない。
誰だろう。
まるで幽霊みたいだ。
まさか月にあったせいで僕にも呪いが見えるようになったのか?
そんなわかないと信じたい。
信じたいけど。
それでも自然とその声に返事していた。
「僕に守られたり救われたりするよりも、理久に守られて。救われた方が嬉しいやろ」
だって僕は要らない子なのだから。
そう最後に呟いた言葉に、笑い声が返された。
少し馬鹿にされたようにも感じたがどうでもよかった。
事実なのだから。
もしくは人目につかないところに閉じ込められるのだろうか。
人目に触れさせてはいけない怪物だと言われながら。
確かに無限に体が再生する人間なんて、『まともな人間の感性』から見たら異常以外の何でもないだろう。
そんな怪物は永遠に閉じ込めて。
ずっと外に出られないようにしなければ。
きっとそういう思想の故の行動なんだろうな。
どちらにしろまともな道は残っていない気がした。
元の場所に戻ったってとっくに詰んでいるような。
どんなに足掻いても良い結果にならなそうな。
現国王らは子供が死んで心神喪失状態だろうし。
凪が面会する事も叶うかもわからない。
まず人に会おうとすらしないと思うし。
そのような状態で息子と名乗る人物がやってきたと聞いてもすぐ会う気になれないだろうし。
偽物だと思うだろう。
でも、イザベラは会いに行くんだろうな。
もしも、なんて希望を持ちながら。
今はきっと国王の弟がメイサイの代理国王を務めるだろう。
だからきっと事実なんて伝えないだろう。
確か彼はずっと国王の座を狙っていたのだから。
他国の情報なんて理久の魔法があれば簡単に筒抜けになってしまうのだから。
そんなのわかっているよ。
...、このまま戻っても凪が幸せになれる気がしなかった。
むしろとことん苦しめられて。
死にたいと願う姿が浮かんだ。
希望を浮かべていた瞳には絶望が浮かび。
希望を歌っていた口には死を渇望する言葉ばかりが並んでいき。
何度傷つけても死ねない体に絶望しながら体を引きずる。
それでも両親の元に帰りたいという気持ちを優先すべきかと思った。
今の凪がそう思っているなら。
一度帰ればいいよ。
もしかしたら僕が想像したような酷い目に遭わないかもしれないしさ。
それで不幸な目に見舞われるようなら、ここに戻ってくれば良いよ。
理久がちゃんと守ってくれるだろうし。
酷い目に遭わないように大切に大切にしてくれる。
だからゆっくりここで傷を治せば良いよ。
心ゆくまで心を癒せば良いよ。
そしたらきっと君はまた元気になるだろうから。
理久が凪を呼ぶ。
「おーい!準備できたよ!おいで?」
その声は酷く優しげだった。
「はぁい。もういくね?また会おうね闇奈!」
凪は部屋から出ていく。
音を立ててしまったドアが、この部屋に僕一人になった事を語っていた。
ふぅ、と息をつく。
理久ならちゃんと守ってくれる。
その役目は僕じゃなくて良い。
「ほう、お主は守ってやらないのか?」
そんな声が聞こえた。
若々しい女の声のくせして、老人のような話し方。
アンバランスな存在だ。
それに何より姿が見えない。
誰だろう。
まるで幽霊みたいだ。
まさか月にあったせいで僕にも呪いが見えるようになったのか?
そんなわかないと信じたい。
信じたいけど。
それでも自然とその声に返事していた。
「僕に守られたり救われたりするよりも、理久に守られて。救われた方が嬉しいやろ」
だって僕は要らない子なのだから。
そう最後に呟いた言葉に、笑い声が返された。
少し馬鹿にされたようにも感じたがどうでもよかった。
事実なのだから。
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