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二章 美空ミカエル

勇者の圧勝

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炎を舞散らす。
火の粉は目眩しだ。
これで首を切る。
あぁ、これで颯太の全ても奪ってしまうんだ。
ごめんね。
そう思って切り刻もうとすると、
「やっぱりお前も呪い持ちだったんですね。手の内を知れて嬉しいです」
ガギン、と音がして、俺の腕に手錠が嵌められていた。
鎖が巻き付いてくる。
インフェルノで燃やしてしまおうとしても、溶かせない。
何が起こった。
颯太が笑う。
その指の先には鎖が付いていて、その先に俺の手錠があった。
「無理ですよ。それは僕が作った鎖ですから」
そう言って颯太は笑う。
悪魔のように。
ゆらり、と颯太の姿が揺れて、一瞬長髪の男が映った。
きっと、あれはアテネだ。
そうか、颯太は。
絶対的な力の差を分からされた瞬間だった。
「奏多を殺す気は僕にありませんよ。僕が殺すのは、先輩だけなので」
どろり、と黒く濁った瞳にハートを浮かべながら颯太は語る。
うっとりとしながら。恍惚とした表情を浮かべて。
「僕の全てを捧げたいんです。他は何も要らないくらいに。先輩が一緒にいるのは、最後を共にするのは僕で十分なんです」
そう言ってふふふと笑う。
そこ知れぬ恐怖を感じると同時に、変わってしまったんだなと思った。
狂気の中に落ちてしまったんだ。
もう戻って来れないくらいに。
それがひどく悲しくて。
きっともう前みたいに一緒に鍛錬もできないんだろうな。
なんて思ってしまった。
颯太が凪の元へ向かおうとした時。
強風が吹き荒れ、植物が生えてきた。
それを見た颯太はため息を吐いて、
「ねぇ、奏多。もう僕と敵対する気ないですよね」
頷くと、城の再建手伝ってください、と言われた。
話の流れが全く見えないけど。
軽口を叩くように、ほぼお前が壊したんだろ、と言うと、僕が直すと元の物よりも素晴らしい物が出来てしまいますから、なんていう。
さっきまでの雰囲気がまるで嘘みたいに。
先程まで刃を向け合っていたとは思えないような会話をしていた。
「どうしてここに留まって修復作業をするなんて言い出したんだよ」
肝心なところを聞こうとそう言ってみた。
答えたくないならそれでもいいけど。
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