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二章 美空ミカエル

二人の式を嘘で覆う

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一緒にいてと一生懸命すがるうちに、凪先輩は結婚式みたい、といった。
誓い。
結婚というものはみんなの前で誓う行為のこと。
確かに近いかもしれないね、なんて思った。
結婚するには、誓いの言葉をお互い口にしなければいけない。
でも、凪先輩とは結婚できない。
呪いのことがあるから。
「ね、凪先輩、結婚式のままごとしませんか?」
俺は凪先輩の呪いで殺されても構わないけど、傷を残したくないからそんな結果になりたくなくて、お互いに口にしなければいけないなら、片方だけ口にしてしまえば良いんじゃないかと思った。
凪先輩の中で、俺が死んだ形で残されるのも良いけれど。
それは嫌だから。
せめて綺麗な思い出で残って欲しいと思うから。
でも、呪いの抜け穴を探すために一応人形で試してみた。
人形を操って、誓いの言葉を言わせてから、結婚式の真似事をする。
すると、すぐに爆発した。
「凪先輩だけ言ってみてください」
それで試してみたら、なにも起こらなかった。
両方とも誓うとダメなのか。
だとすると、今回通ったのはなぜか。
それは、相手がいないと認識されたのではないかと思った。
独り言として認識されたんだろうと思った。
だから俺は言った。
「病めるときも健やかなる時もどんな時だって一緒にいて離れません。例え離れたとしても、絶対に会いに行きます」
独り言のように呟く。
念の為凪先輩と顔を合わせないようにしながら。
これは独り言。
それにしても、結婚ってまるで呪いみたいだ。
そんなことをふと思った。
言葉で相手の人生を死ぬまで縛り付ける究極の。
一番綺麗な呪い。
呪いに対して綺麗なんて思うのもおかしいような気がするけど。
凪先輩は笑って俺の口にキスをした。
キスするなんて言ってなかったのに。
突然の事に驚いた俺は固まってしまって。
頭の中の思考回路は軽くショートしそうになっていて。
口をはくはくとさせる事しか出来なかった。
まるで酸素を求める魚みたいだ。
生まれて初めてしたキスは少し甘い気がした。
一瞬のことだったから、味覚も何もないような気もするけど。
きっとさっきまでケーキを食べていたせい。
何かの本でキスはその前に食べたものの味だなんて言っていたような気がする。
放心している俺に、凪先輩はいたずらが成功したような顔をして囁く。
「ね、キスしてくれないの?美空」
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