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二章 美空ミカエル
努力でいつか天才を喰らう
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切り込みは入ったけれど、先ほどのように切れない。
みかけはおなじなのに全く性能が違うそれは、美空と僕を連想させた。
「外見だけは立派ななまくらになったみたいだな」
その発言に少しイラッとした。
別になまくらとまで言わなくたって良いじゃないか。
「けど、初めてにしては上出来だ。初めから魔力を込められるやつなんてなかなかいないからな。凄いよ。お前は」
...、少しだけ。本当にほんの少しだけ気分が良くなった。
誉められなれてないから嬉しい、なんて思うだけだ。
単純な自分に少し嫌気が差したけど、まぁ、良いかと思う事にした。
これが人間なのだから。
誉められたり、認められたりすると嬉しいもので。
そうやって自分を高めていくんだから。
...、もし先輩に誉められたら。
少しだけ想像してしまった。
もしもの妄想。
「颯太凄いよ。良く頑張ったね!偉い偉い」
そう言われて、頭を撫でられて。
それに僕は笑いながらありがとうございます、だなんて言って。
きっと馬鹿みたいにはしゃいでしまう。
嬉しくて嬉しくて仕方なくなってしまうだろう。
だって、先輩に誉められるのだから。
そんな事を簡単に想像出来てしまう自分に乾いた笑いが出た。
僕の事を誉めてくれるはずないのに。
僕がどれだけ努力したところでアテネには及ばないし、先輩にも敵わない。
だから、僕は先輩に誉められない。
アテネなら、凄いよなんて誉められるだろうけど。
それはアテネに向けてってだけで、僕に向けられる事はない。
そんな事を想像して悲しくなった。
けど、今はそんな事気にしないようにしよう。
そう考えて、切り替える事にした。
目の前の修行に集中する事にしたのだ。
「これは魔力操作を鍛える事も出来るからな。一石二鳥ってこと。理久は一発で成功させた」
奏多は淡々と修行の効能を述べた。
だけど。
理久、という名前を聞いた時に暴風を吹き荒らした。
理久。
先輩にくっついている魔王。
こいつの双子の弟。
先輩と自分が結ばれると信じてやまない奴。
あいつも僕は嫌いだった。
いつか理久を越える。
それは僕の目標のひとつだった。
一発か。
「おっと...、禁句だったみたいだな」
「あんまりその名前を出さないでください」
そう言うと、やれやれと言いたげな顔をされた。
「まぁ、そういう対抗心もどんどん糧にしていけ。その方が早く成長出来るぞ」
「言われなくてもそのつもりです」
次こそ完璧な物を作ってやる。
みかけはおなじなのに全く性能が違うそれは、美空と僕を連想させた。
「外見だけは立派ななまくらになったみたいだな」
その発言に少しイラッとした。
別になまくらとまで言わなくたって良いじゃないか。
「けど、初めてにしては上出来だ。初めから魔力を込められるやつなんてなかなかいないからな。凄いよ。お前は」
...、少しだけ。本当にほんの少しだけ気分が良くなった。
誉められなれてないから嬉しい、なんて思うだけだ。
単純な自分に少し嫌気が差したけど、まぁ、良いかと思う事にした。
これが人間なのだから。
誉められたり、認められたりすると嬉しいもので。
そうやって自分を高めていくんだから。
...、もし先輩に誉められたら。
少しだけ想像してしまった。
もしもの妄想。
「颯太凄いよ。良く頑張ったね!偉い偉い」
そう言われて、頭を撫でられて。
それに僕は笑いながらありがとうございます、だなんて言って。
きっと馬鹿みたいにはしゃいでしまう。
嬉しくて嬉しくて仕方なくなってしまうだろう。
だって、先輩に誉められるのだから。
そんな事を簡単に想像出来てしまう自分に乾いた笑いが出た。
僕の事を誉めてくれるはずないのに。
僕がどれだけ努力したところでアテネには及ばないし、先輩にも敵わない。
だから、僕は先輩に誉められない。
アテネなら、凄いよなんて誉められるだろうけど。
それはアテネに向けてってだけで、僕に向けられる事はない。
そんな事を想像して悲しくなった。
けど、今はそんな事気にしないようにしよう。
そう考えて、切り替える事にした。
目の前の修行に集中する事にしたのだ。
「これは魔力操作を鍛える事も出来るからな。一石二鳥ってこと。理久は一発で成功させた」
奏多は淡々と修行の効能を述べた。
だけど。
理久、という名前を聞いた時に暴風を吹き荒らした。
理久。
先輩にくっついている魔王。
こいつの双子の弟。
先輩と自分が結ばれると信じてやまない奴。
あいつも僕は嫌いだった。
いつか理久を越える。
それは僕の目標のひとつだった。
一発か。
「おっと...、禁句だったみたいだな」
「あんまりその名前を出さないでください」
そう言うと、やれやれと言いたげな顔をされた。
「まぁ、そういう対抗心もどんどん糧にしていけ。その方が早く成長出来るぞ」
「言われなくてもそのつもりです」
次こそ完璧な物を作ってやる。
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