アリスと狂気

月夜

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蛇には毒が、茶には………

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「どうかしたの?凪?」
「な、何でもない……それよりもさ。」
「なぁに?」
「恋人同士って言っていたけれど、具体的にどんなことをしてたの?」
そう言った瞬間、雫の瞳から光が消えた。
これは地雷を踏んでしまったかもしれない。
「どうしてそんなことを聞きたいなんて思ったの?」
「もしかしたら、思い出せるかもしれないなんて思って。」
ほら、大切な彼女との思い出が消えたまんまなんて嫌じゃないか。
僕が笑ってそういえば、
「まぁ、確かにそうかもね。」
なんて言って話してくれた。

そうだなぁ、あれはいつの話だったっけ。
まぁ、時間なんて気にしなくていいんだよ。
だってここはそう言う物なんだから。
不思議の国に時間なんて存在しない。
白兎が持つ懐中時計も、そこらじゅうにある時計だって、狂った時刻しか映し出さないんだから。
.........あぁ、話が逸れてしまったね。
僕はね、タチの悪い呪いをかけられていたんだ。
そこを助けてくれたのが凪、君なんだよ。
僕は当然のように君に恋をした。
そう、人魚姫のようにね。
え?不思議の国に関係ないじゃないかって?
ただの例えだから気にしないで。
まぁ、とにかく。
僕らはいろんな場所に出かけたんだよ。
海の底や、遊園地、時には暗い洞窟にも........
凪も覚えているんじゃないかな?
まぁ、覚えてなくてもいいんだけど。
キスはまだだったかなぁ。
だっていつもキスしようってタイミングで邪魔が入るんだ。
あれじゃあしようにも出来ないでしょ。
今じゃそいつもこの場にいない.......
いや、いるかも。
だから僕らは健全な関係を保っていた。
僕もびっくりなくらいにさ。

雫の話を聞いて、一番に思ったことは、何故人魚姫という単語がサラッと出てきたのか。
不思議の国の住人とは全くと言っても無関係のはずだ。
作者が同じと言うわけではない。
白兎だっている。
おかしなお茶会だってしている。
そもそもこの世界は狂っているはずだ。
そんな世界に『人魚姫』といったまともなものが残されているだろうか。
多分、答えは否だ。
仮に存在していたとしても、喋ったり、動き回ったり、文字化けしたりとまともな状態ではないはずだ。
(だとしたら雫は何処から来たんだ?)
僕の読みが正しければ雫は不思議の国の住人ではなく、僕と同じ場所出身だ。
だとしても、どうして隠す必要があるのだろうか?
仮にも恋人同士なら、そのことを打ち明けて、一緒に脱出を目指すものではないだろうか。
隠すメリットは、恋人ではないことがバレてしまうから。
(いや、僕は記憶を無くしているんだ。仮にそうだとしても、上手く誤魔化せてしまうのでは?)
だから必要性は薄いと考えることが出来る
だとしたら......
(彼女は僕をこの世界に閉じ込めたがっている.....?)
そんなことをして彼女に何のメリットがあるのだろうか?
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