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9章 久世長澄
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久世長澄は、足軽大将から侍大将へと順調に出世していった。誰もが目を見張る飛躍的な出世だった。そして昨年は、ついに一国一城の主になっていた。
しかも、その場所は朝頼が昨年から本拠に定めた安土からも近い。同じ琵琶湖の湖畔に長澄は、己の初めての城を建てた。未だ完成はしていないが、中々壮麗な城だった。勿論、朝頼が建築中の巨大な城とは、比べるまでもないのは当然であった。家臣としての分はわきまえている。
久世の城の在りかは、朝頼の信頼と寵愛を現している。琵琶湖の湖畔には、もう一つ甥の朝広の城がある。
つまり、朝頼の居城を守るように在るのが、久世の城と、甥の朝広の城なのだ。二人への信頼が分かると言うものだ。
久世長澄の今の地位は、津田朝頼の六軍団の一つ。四国方面軍を率いる、軍団長という重い立場にあった。
津田朝頼の軍団には、先ずは別格的存在として、嫡男朝行が率いる大軍団がある。これはまさに大軍団だ。
朝行の下には、中軍団とも言うべき軍団があった。その意味でも、他の五軍団を抜きん出て別格的存在と言える。
朝行は昨年まで父朝頼が本拠地とした岐阜城を譲られ、その主になっていた。
名実共に、津田朝頼の後継者としての道を順調に歩んでいた。
次は、次男朝勝。津田家発祥の地であり、朝頼生誕の城でもある清洲城の主。津田家に代々仕える、宿老羽田時芳が補佐し、尾張方面の軍団長の立場にある。
朝勝は、嫡男朝行の同腹の弟。いつも兄を立てて、その後ろに控えている存在だった。そんな彼を、宿老羽田時芳が、よく補佐していた。
そして、三男朝忠。やはり代々の宿老香川紀行が補佐し、中国攻めの最中にある。中国方面の軍団長といえた。
朝忠は、兄二人とは母が違った。気性が荒く、その武将としての性格は、一番父に似ていると言われた。彼自身それを、自負し誇りに思っているふしがある。
しかし、その気性の荒さが懸念されるところでもあった。さすがに嫡男朝行には敬意を払うが、次男にはそれがない。実のところ、次男、三男と言えど、年は同じだったのだ。
朝頼は、三男の朝忠がいらぬ野心を抱かぬように、宿老の香川をお目付け役にしている部分もある。
近畿方面を束ねるのは、甥の津田朝広。
家督争いの折、朝頼に背き処罰した弟の子だった。その甥を朝頼は大切に育てた。己の次男、三男と引けを取らない扱いだ。
朝広も、伯父のその温情に感謝していた。決して父の敵とは思っていなかった。
古来例え自身の血を引く甥だろうと、遺恨を残さないように処分するのが武門の習いではあった。事実、そうして何人もの武将が、己の血を引く甥を殺した。それを、朝頼はしなった。
どころが、己の子と同様に育てた。朝広も、その伯父の温情に活躍することで、十分に応えていた。
北陸方面は、代々の宿老坂梨時定が束ねている。
坂梨時定の正室は、朝頼の異腹の妹だった。母の身分が低い、側室腹の姫とは言え、朝頼の義弟。彼の跡を継ぐ嫡男は朝頼の甥。彼は歴とした津田家の連枝と言えた。
そして四国攻めの最中にあるのが、久世長澄だった。四国方面の軍団長である。
久世長澄、彼だけが軍団を率いる身で、津田の連枝ではない。どころが、代々の宿老でもなかった。
いかに、彼の実力が抜きん出ているか分かろう。
以上六軍団が、津田朝頼の擁する、彼の手足と言える軍団だ。各方面で、津田朝頼の天下取りに向けて、日々戦っている。
しかも、その場所は朝頼が昨年から本拠に定めた安土からも近い。同じ琵琶湖の湖畔に長澄は、己の初めての城を建てた。未だ完成はしていないが、中々壮麗な城だった。勿論、朝頼が建築中の巨大な城とは、比べるまでもないのは当然であった。家臣としての分はわきまえている。
久世の城の在りかは、朝頼の信頼と寵愛を現している。琵琶湖の湖畔には、もう一つ甥の朝広の城がある。
つまり、朝頼の居城を守るように在るのが、久世の城と、甥の朝広の城なのだ。二人への信頼が分かると言うものだ。
久世長澄の今の地位は、津田朝頼の六軍団の一つ。四国方面軍を率いる、軍団長という重い立場にあった。
津田朝頼の軍団には、先ずは別格的存在として、嫡男朝行が率いる大軍団がある。これはまさに大軍団だ。
朝行の下には、中軍団とも言うべき軍団があった。その意味でも、他の五軍団を抜きん出て別格的存在と言える。
朝行は昨年まで父朝頼が本拠地とした岐阜城を譲られ、その主になっていた。
名実共に、津田朝頼の後継者としての道を順調に歩んでいた。
次は、次男朝勝。津田家発祥の地であり、朝頼生誕の城でもある清洲城の主。津田家に代々仕える、宿老羽田時芳が補佐し、尾張方面の軍団長の立場にある。
朝勝は、嫡男朝行の同腹の弟。いつも兄を立てて、その後ろに控えている存在だった。そんな彼を、宿老羽田時芳が、よく補佐していた。
そして、三男朝忠。やはり代々の宿老香川紀行が補佐し、中国攻めの最中にある。中国方面の軍団長といえた。
朝忠は、兄二人とは母が違った。気性が荒く、その武将としての性格は、一番父に似ていると言われた。彼自身それを、自負し誇りに思っているふしがある。
しかし、その気性の荒さが懸念されるところでもあった。さすがに嫡男朝行には敬意を払うが、次男にはそれがない。実のところ、次男、三男と言えど、年は同じだったのだ。
朝頼は、三男の朝忠がいらぬ野心を抱かぬように、宿老の香川をお目付け役にしている部分もある。
近畿方面を束ねるのは、甥の津田朝広。
家督争いの折、朝頼に背き処罰した弟の子だった。その甥を朝頼は大切に育てた。己の次男、三男と引けを取らない扱いだ。
朝広も、伯父のその温情に感謝していた。決して父の敵とは思っていなかった。
古来例え自身の血を引く甥だろうと、遺恨を残さないように処分するのが武門の習いではあった。事実、そうして何人もの武将が、己の血を引く甥を殺した。それを、朝頼はしなった。
どころが、己の子と同様に育てた。朝広も、その伯父の温情に活躍することで、十分に応えていた。
北陸方面は、代々の宿老坂梨時定が束ねている。
坂梨時定の正室は、朝頼の異腹の妹だった。母の身分が低い、側室腹の姫とは言え、朝頼の義弟。彼の跡を継ぐ嫡男は朝頼の甥。彼は歴とした津田家の連枝と言えた。
そして四国攻めの最中にあるのが、久世長澄だった。四国方面の軍団長である。
久世長澄、彼だけが軍団を率いる身で、津田の連枝ではない。どころが、代々の宿老でもなかった。
いかに、彼の実力が抜きん出ているか分かろう。
以上六軍団が、津田朝頼の擁する、彼の手足と言える軍団だ。各方面で、津田朝頼の天下取りに向けて、日々戦っている。
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