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6章
アレクシーの決意
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「どうしたのじゃ、態々拝謁など願い、かしこまって、なんぞあったのか?」
アレクシーはこの父の物言いで、宮の者たちは父に、何も知らせていないと知った。
何も知らない父には、さぞ衝撃的な話だが、言わねばならない。アレクシーは、意を決して父に向かい合う。
「本日は、父上にお願いがあってまいりました。父上は……現在オメガの……ルシア様と言うオメガの番がおられますが、その番を解消していただきたいのです」
「――――」
先日の二人の出会いを知らない国王フェリックスはまさに驚愕する。何故ルシアの事をアレクシーが知っているのだ⁈ しかも己に番の解消を願うとは何事か⁈。
「そなた何を申しているのじゃ? そもそも何故ルシアの事を知っている?」
「先日、芳香に引き寄せられるように奥の宮にまいり、そこでルシア様に会いました。私を引き付けた芳香はルシア様が放ったものでした。魂からの、運命のオメガと確信しました。」
「そなたルシアに何をしたのじゃ⁈」
フェリックスが怒りの形相で問う。
「何もしておりません。すぐにフランソワ達に、宮から引きずり出されましたので」
「で、ルシアの事を調べたのか? 国王の私事をこそこそと調べるなど、たとえ王太子と言えど僭越がすぎるぞ」
「申し訳ございません。どうしてもルシア様のことを忘れられなかったので……」
緊張をはらんだ沈黙……アレクシーに付き添うフランソワは勿論、国王に付き従う側近達も息をつめて見守る。
国王と王太子、二人の関係は常に穏やかなものだった。アレクシーは、中々にやんちゃなところもあり教育係を手こずらせることは多々あったが、国王に逆らったことはなかった。
アレクシーが、フェリックスを父としても国王としても尊敬しているのは明らかで、フェリックスもアレクシーを認め愛情を注いでいた。
今の今まで国王と王太子の関係は、良好だったのだ。故に、国王は勿論だが、その側近達の驚きも大きい。
息苦しい沈黙を破ったのは、国王フェリックスだった。
「アレクシー、よいか今この限りでルシアの事は忘れよ。そなたが、ルシアの事に言及することは一切認めぬ。それを誓うのら、今回の事は不問にいたす」
「しかし、父上ルシア様は私の魂の、運命の人なのです!」
「しつこいぞ、あれは余の番。生涯番の解消はせぬ! 下がれ!」
「し、しかし父上……」
なおも食い下がろうとするアレクシーを、フランソワが押しとどめる。これ以上国王の怒りが増したらまずい。
その思いは国王の側近達も同じで、国王を宥めつつ謁見の場を離れる。
フランソワは勿論、国王の側近達も国王と王太子の仲たがいは避けたい。国にとって良い事ではないからだ。
今この国が安定しているのは壮年の国王の統治力が優れているのは勿論だが、後継者たるアレクシーの存在も大きい。
王太子アレクシーの存在が、この国の体制を盤石にしているのは皆が認めるところだった。
国王フェリックスと、王太子アレクシー父子のルシアを巡っての最初の対峙は終わった。
それは双方の側近達の思いとは裏腹に、大いなる波乱を含んでいた。
アレクシーはこの父の物言いで、宮の者たちは父に、何も知らせていないと知った。
何も知らない父には、さぞ衝撃的な話だが、言わねばならない。アレクシーは、意を決して父に向かい合う。
「本日は、父上にお願いがあってまいりました。父上は……現在オメガの……ルシア様と言うオメガの番がおられますが、その番を解消していただきたいのです」
「――――」
先日の二人の出会いを知らない国王フェリックスはまさに驚愕する。何故ルシアの事をアレクシーが知っているのだ⁈ しかも己に番の解消を願うとは何事か⁈。
「そなた何を申しているのじゃ? そもそも何故ルシアの事を知っている?」
「先日、芳香に引き寄せられるように奥の宮にまいり、そこでルシア様に会いました。私を引き付けた芳香はルシア様が放ったものでした。魂からの、運命のオメガと確信しました。」
「そなたルシアに何をしたのじゃ⁈」
フェリックスが怒りの形相で問う。
「何もしておりません。すぐにフランソワ達に、宮から引きずり出されましたので」
「で、ルシアの事を調べたのか? 国王の私事をこそこそと調べるなど、たとえ王太子と言えど僭越がすぎるぞ」
「申し訳ございません。どうしてもルシア様のことを忘れられなかったので……」
緊張をはらんだ沈黙……アレクシーに付き添うフランソワは勿論、国王に付き従う側近達も息をつめて見守る。
国王と王太子、二人の関係は常に穏やかなものだった。アレクシーは、中々にやんちゃなところもあり教育係を手こずらせることは多々あったが、国王に逆らったことはなかった。
アレクシーが、フェリックスを父としても国王としても尊敬しているのは明らかで、フェリックスもアレクシーを認め愛情を注いでいた。
今の今まで国王と王太子の関係は、良好だったのだ。故に、国王は勿論だが、その側近達の驚きも大きい。
息苦しい沈黙を破ったのは、国王フェリックスだった。
「アレクシー、よいか今この限りでルシアの事は忘れよ。そなたが、ルシアの事に言及することは一切認めぬ。それを誓うのら、今回の事は不問にいたす」
「しかし、父上ルシア様は私の魂の、運命の人なのです!」
「しつこいぞ、あれは余の番。生涯番の解消はせぬ! 下がれ!」
「し、しかし父上……」
なおも食い下がろうとするアレクシーを、フランソワが押しとどめる。これ以上国王の怒りが増したらまずい。
その思いは国王の側近達も同じで、国王を宥めつつ謁見の場を離れる。
フランソワは勿論、国王の側近達も国王と王太子の仲たがいは避けたい。国にとって良い事ではないからだ。
今この国が安定しているのは壮年の国王の統治力が優れているのは勿論だが、後継者たるアレクシーの存在も大きい。
王太子アレクシーの存在が、この国の体制を盤石にしているのは皆が認めるところだった。
国王フェリックスと、王太子アレクシー父子のルシアを巡っての最初の対峙は終わった。
それは双方の側近達の思いとは裏腹に、大いなる波乱を含んでいた。
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