46 / 55
8章 絶望
⑦
しおりを挟む
神林の屋敷につき、古城に促され宗家の待つ座敷へ入ると、秋月と東月も顔を揃えていた。
「ご無沙汰して申し訳ございません」
「さすがにお前さんの衝撃も大きかっただろうからな。藤之助さんと違い、桜也さんは若い。逝くような歳ではないからな」
宗家はそういうと、視線で秋月を促す。
「既に知らせてはあるが、一連のこと全て一年延期にした。それは、承知しているな」
「それでございますが……」
「なんだ?」
「父が亡くなり、秋好流の宗家が不在になりました。やはり、わたしが継ぎたいと思うのです」
「お前は、神林の宗家になる身じゃ!」
宗家の強い言い方に、怯みそうになりながら、香は心を奮い立たせた。
「しかし、それでは秋好流は!」
「神林へ合流させる。全て古城が取り図るようにしている。お前が心配する必要はない。お前が心配することは自分の踊りだ。この二ヶ月本格的に踊っておらんだろう。勘を取り戻さねばならん。明日は外出の予定があるが、明後日からはわしが直接稽古をつけてやる」
神林に合流! それは秋好流の消滅を意味する。それはいけない! それだけは承服できない。
「宗家! 秋好流の消滅だけは承服できません! どうか、お考え直してください!」
「香! いい加減にしろ! くどいぞ! 秋好流は消滅ではない。神林の中でお前と共に生きるのだ」
「しかし、それは……わたしを……わたしに秋好を継がせてください」
「まだ逆らうか! 秋月! お前が甘いからじゃ! お前も次の宗家として、しっかり躾けるのじゃ。弟子に道理を教えるのも、師の役目じゃ」
香は引き立てるように、奥の閨に連れて行かれる。何をされるのか……あの時の罰が蘇り、香は必死に抗う。しかし、秋月と東月二人の力に適うはずはない。
「全くお前も懲りないな。何故宗家をあそこまで怒らせるのだ。わたしも庇ってはやれんだろう。いや、わたしまでお叱りをうける始末だ。やはり、お前にはもう少し厳しくせねばならんな。東月、お前に任せる。香が素直になれるよう躾てやりなさい」
「任せてください。前ので懲りなかったから、今日はもっと厳しくします。二度と宗家へ逆らう気持ちにならないよう躾ます」
東月は激しく抵抗する香の着物を脱がせ、後ろ手に縛りあげ、口枷をする。香は、自由と言葉を失う。怯える香に、東月は満足そうに薄ら笑う。
そして東月は、香の足を押し広げて縛り上げると、ゴムのカテーテルと何やら液体の入ったボトルを香に見せる。
「こないだのジプーも辛かっただろうが、これはもっと辛いぞ」
香は恐怖に顔が引きつり、頭を振るが、それは東月の被虐心を煽るにすぎない。
東月は香のものに、ゴムのカテーテルをあてがいプツンと先を入れる。痛みに、香の体は反応し、ガクガクと震える。
そのまま、徐々に入ってくるカテーテルのおぞましい感覚に香は、身悶えして苦しめられる。口枷のため声も出せず、よだれが滴り落ちる。
「ふふっ、全部入ったぞ。だが、ここまではこの間と変わらん。これの恐ろしさはここからだ。これは、生理用食塩水だ」
そう言いながら、ボトルをカテーテルの端に繋げると、中の食塩水がカテーテルを通して香の中へ入ってくる。そのおぞましい感覚は、確かに、それまで以上に耐えがたい苦しさを感じさせる。
香は顔を振り乱し、涙を溢れさせた。許しを請いたくても、声も出せない。その姿は、東月の被虐心を十分に満足させる。東月は香の口枷を外してやる。
「どうだ、気分は? さすがに堪えたか」
「ゆっ、ゆるして……」
泣きながら、許しを請う香に、横から秋月が声を掛ける。
「さすがに堪えただろう。二度と、宗家に逆らう気にはならないか? 無論わたしにもだ。宗家とわたしがお前の師だからな」
香は、泣きぬれた顔で頷いた。
「よし、ならば今から宗家へ謝罪しなさい。宗家のお許しが出れば、今日の所は、これで勘弁してやろう」
東月としては、もう少し責め上げたい思いもあったが、父の言葉に従い、香の戒めを解いてやる。
「ご無沙汰して申し訳ございません」
「さすがにお前さんの衝撃も大きかっただろうからな。藤之助さんと違い、桜也さんは若い。逝くような歳ではないからな」
宗家はそういうと、視線で秋月を促す。
「既に知らせてはあるが、一連のこと全て一年延期にした。それは、承知しているな」
「それでございますが……」
「なんだ?」
「父が亡くなり、秋好流の宗家が不在になりました。やはり、わたしが継ぎたいと思うのです」
「お前は、神林の宗家になる身じゃ!」
宗家の強い言い方に、怯みそうになりながら、香は心を奮い立たせた。
「しかし、それでは秋好流は!」
「神林へ合流させる。全て古城が取り図るようにしている。お前が心配する必要はない。お前が心配することは自分の踊りだ。この二ヶ月本格的に踊っておらんだろう。勘を取り戻さねばならん。明日は外出の予定があるが、明後日からはわしが直接稽古をつけてやる」
神林に合流! それは秋好流の消滅を意味する。それはいけない! それだけは承服できない。
「宗家! 秋好流の消滅だけは承服できません! どうか、お考え直してください!」
「香! いい加減にしろ! くどいぞ! 秋好流は消滅ではない。神林の中でお前と共に生きるのだ」
「しかし、それは……わたしを……わたしに秋好を継がせてください」
「まだ逆らうか! 秋月! お前が甘いからじゃ! お前も次の宗家として、しっかり躾けるのじゃ。弟子に道理を教えるのも、師の役目じゃ」
香は引き立てるように、奥の閨に連れて行かれる。何をされるのか……あの時の罰が蘇り、香は必死に抗う。しかし、秋月と東月二人の力に適うはずはない。
「全くお前も懲りないな。何故宗家をあそこまで怒らせるのだ。わたしも庇ってはやれんだろう。いや、わたしまでお叱りをうける始末だ。やはり、お前にはもう少し厳しくせねばならんな。東月、お前に任せる。香が素直になれるよう躾てやりなさい」
「任せてください。前ので懲りなかったから、今日はもっと厳しくします。二度と宗家へ逆らう気持ちにならないよう躾ます」
東月は激しく抵抗する香の着物を脱がせ、後ろ手に縛りあげ、口枷をする。香は、自由と言葉を失う。怯える香に、東月は満足そうに薄ら笑う。
そして東月は、香の足を押し広げて縛り上げると、ゴムのカテーテルと何やら液体の入ったボトルを香に見せる。
「こないだのジプーも辛かっただろうが、これはもっと辛いぞ」
香は恐怖に顔が引きつり、頭を振るが、それは東月の被虐心を煽るにすぎない。
東月は香のものに、ゴムのカテーテルをあてがいプツンと先を入れる。痛みに、香の体は反応し、ガクガクと震える。
そのまま、徐々に入ってくるカテーテルのおぞましい感覚に香は、身悶えして苦しめられる。口枷のため声も出せず、よだれが滴り落ちる。
「ふふっ、全部入ったぞ。だが、ここまではこの間と変わらん。これの恐ろしさはここからだ。これは、生理用食塩水だ」
そう言いながら、ボトルをカテーテルの端に繋げると、中の食塩水がカテーテルを通して香の中へ入ってくる。そのおぞましい感覚は、確かに、それまで以上に耐えがたい苦しさを感じさせる。
香は顔を振り乱し、涙を溢れさせた。許しを請いたくても、声も出せない。その姿は、東月の被虐心を十分に満足させる。東月は香の口枷を外してやる。
「どうだ、気分は? さすがに堪えたか」
「ゆっ、ゆるして……」
泣きながら、許しを請う香に、横から秋月が声を掛ける。
「さすがに堪えただろう。二度と、宗家に逆らう気にはならないか? 無論わたしにもだ。宗家とわたしがお前の師だからな」
香は、泣きぬれた顔で頷いた。
「よし、ならば今から宗家へ謝罪しなさい。宗家のお許しが出れば、今日の所は、これで勘弁してやろう」
東月としては、もう少し責め上げたい思いもあったが、父の言葉に従い、香の戒めを解いてやる。
11
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
はじまりの恋
葉月めいこ
BL
生徒×教師/僕らの出逢いはきっと必然だった。
あの日くれた好きという言葉
それがすべてのはじまりだった
好きになるのに理由も時間もいらない
僕たちのはじまりとそれから
高校教師の西岡佐樹は
生徒の藤堂優哉に告白をされる。
突然のことに驚き戸惑う佐樹だが
藤堂の真っ直ぐな想いに
少しずつ心を動かされていく。
どうしてこんなに
彼のことが気になるのだろう。
いままでになかった想いが胸に広がる。
これは二人の出会いと日常
それからを描く純愛ストーリー
優しさばかりではない、切なく苦しい困難がたくさん待ち受けています。
二人は二人の選んだ道を信じて前に進んでいく。
※作中にて視点変更されるシーンが多々あります。
※素敵な表紙、挿絵イラストは朔羽ゆきさんに描いていただきました。
※挿絵「想い03」「邂逅10」「邂逅12」「夏日13」「夏日48」「別離01」「別離34」「始まり06」
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
獣人王と番の寵妃
沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる