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2章 星夜と名付けて

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 ここへ来て初めての外出。初めに来た時は、ここを出て死ぬことばかり考えていた。それが、髪を切るために外へ出る。何故、そうなった……自分でも分からない。
 名前を明かさない自分に、星夜と名付けられた。勝手な事なのに、嫌じゃない自分がいる。もしかしたら、ここで星夜になれば、死ななくても、いいのか? そう思いながら玄関へ行く。
 あの地獄から解放されるなら、どこでもいい。死にたかったのは、死ぬ以外に解放される術がなかったから……。でも、ここにいれば……。しかし、それがいつまで許されるのだろうか? 今は自分でも分からない。
 玄関へ行くと、靴が揃えて置いてある。星夜の靴だ。
「その服に、靴が合わないなあ。靴も買ってやりたかったが、靴は履いてみないとな。髪切った後に買ってやる。他にも何か欲しい物はないか? ついでに買ってやるぞ」
 特に欲しい物はないので「いいえ、得にはありません」と応える。そもそも、何もかも買ってもらうのは悪いと思っている。何しろ、自分はお金を全く持っていない。
 ここでの生活も、つまり全て彰吾の世話になっているわけで、考えたら物凄く悪いと思う。同時にこの人はかなりのお人よし? 世話焼き? こういう人のことをなんて言うんだろう? と星夜は考えた。しかし、適当な言葉は見つからなかった。

 半月ぶりの外は、朝日が眩しい。外はこんなに眩しかっただろうか……。こんなに日を浴びて歩けるだろうかと思ったら、車に乗るようにと言われたので、ほっとする。
 後ろに乗ろうとしたら、「二人なんだから、前に乗れ」と言われた。そうか、そう言うものなのか? と思いながら助手席に乗る。
 走り出して十五分ほどで美容室に着いた。彰吾の馴染みの店だ。
「ついでだから俺もカットしてもらうから。お前は自分で好きなように注文しろ」
 そう星夜には言って、星夜を担当する美容師には「よろしく」と言う。それからは、同じ店内だが、店の構造でそれぞれの姿は見えない。客同士が顔を合わせないようになっているのだ。
 彰吾は、毎回担当美容師に任せている。リラックスして、時折雑談をしているうちにスイスイと仕上がる。いつもと同じ出来に満足する。星夜は終わったかなと思うと、「お連れ様も終わられたようです」と美容師が言う。
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