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11章 花が咲く前に
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「尚希君、大丈夫?」
蒼に優しく聞かれる。尚希は、とっさに質問の意図が掴めない。
「えっと、大丈夫って……」
「少し元気が無いように感じて、僕の気のせいかな」
蒼は、尚希が何か思い悩んでいるように感じたのだ。もし、何かあれば聞いてやりたい。そして力になってやりたいと思ってのことだ。
蒼にとって、尚希は北畠家の同じ嫁同士。早く嫁いだ、先輩嫁として出来ることはしてやりたい。いつもそう思っている。
蒼は、微笑みながら視線で、返事を促した。
「なんか、僕はボーっとしているのに、どんどん決まっていくから……」
「なお君行動力あるからね。あの行動力と決断の速さは、あき君と共通するかな。アルファだからなのか、北畠家の血なのか……。圧倒されるものがあるよね」
「蒼先生でも、圧倒されるんですか?」
「されるよ。僕はのんびり、おっとりしているから」
「そうなんですか! 蒼先生はのんびりはしてないと思う。おっとりっていうか、優しさしか感じない」
「ありがとう。尚希君が、僕のことそんなふうに思ってくれているなら、それはあき君のおかげかな。そして、父さん母さんたち、北畠家の家族のおかげなんだと思うよ」
蒼が言葉を切る。尚希は、続きを静かに待つ。
「あき君の行動力と、決断力のおかげで、僕は安心していられる。とても守られていると思うから。そして、そんな僕たちを、父さん母さんたちは優しく見守っていてくれる。大きな愛で包まれているんだよ」
蒼は、静かに、しかし真剣に聞き入る尚希の手を取る。
「なお君もね、あき君と同じだと思う。尚希君のこと、大きな愛で包んでくれてるんじゃないのかな。僕はそう思うよ。尚希君、安心して全てを、なお君に委ねたらいいんじゃないかな。そうすれば、きっととても心地良いと思うよ」
蒼の手は、とても柔らかく、そして温かい。尚希は心も温かくなるのを感じる。
「もし尚希君が、なお君が決めていくことを、嫌だと思ってるのなら別だけど」
それは無い。尚久は必ず尚希の意向も聞いてくれるから。決断と行動は早いが、決して独断専行ではない。尚希は、顔を横にふって否定する。
「だったら、任せて良いと思うよ」
蒼が優しく微笑む。尚希は深く頷いた。
この時尚希は、蒼の優しさの訳が分かった思いになった。勿論、元々優しい人だとは思うが、彰久に愛されている、その愛が大きいからだろう。
傍から見ると、過剰とも思える愛。しかし、彰久はただやみくもに愛しているわけではない。大きな愛で蒼を包んで、守っているのだ。それが、蒼の優しい微笑みが現している。
羨ましいと思う。しかし、蒼は彰久と尚久は似ていると言った。
僕も、尚さんに愛されている――。
そうだ、いつも尚久は優しい。尚希の希望を必ず聞き入れてくれる。
新婚旅行も尚希の希望で決まったのだ。
不安に思う事など、何もないのだ。
「尚希君はお母さんのこともあって、目まぐるしく色々とあって不安になる気持ちも分かるよ。でも、なお君は尚希君のこと愛している。とても大事に思っているって思うから、安心して良いと思うよ」
「うん、僕……愛されているのかな」
「見ていて分かるよ。尚希君はなお君に愛されている」
蒼は、尚久が尚希を愛していることは、かなり前から察していた。直接聞いたことはないが、多分尚希が大人になるのを待っているのだろうと思っていたのだ。
それは蒼だけではなく、北畠家の人達皆の共通認識だった。
つまり、二人が婚約する前から、北畠家の人達にとって、尚希は将来の嫁だったのだ。
「僕もね、尚希君がなお君と結婚するの、凄く嬉しいよ。同じ嫁の立場だからよろしくね」
「よ、嫁……」
「そうだよ。ふふっ個性あふれる北畠家の嫁……僕は幸せだよ。尚希君も幸せになって欲しいな。ううん、絶対幸せになると思うよ」
優しいが力強い、蒼の確信の言葉。尚希は大きく頷いた。
「僕の方こそ、よろしくお願いします」
蒼は北畠家の嫁として先輩なんだ。こんな素敵で優しい人が先輩。何も心配することはない。僕は幸せなんだと、尚希は思う。
最初からそうだったのだ。ただ、自分が無駄に思い悩んでいただけ。
それに気付いて尚希の心は軽くなった。
蒼に優しく聞かれる。尚希は、とっさに質問の意図が掴めない。
「えっと、大丈夫って……」
「少し元気が無いように感じて、僕の気のせいかな」
蒼は、尚希が何か思い悩んでいるように感じたのだ。もし、何かあれば聞いてやりたい。そして力になってやりたいと思ってのことだ。
蒼にとって、尚希は北畠家の同じ嫁同士。早く嫁いだ、先輩嫁として出来ることはしてやりたい。いつもそう思っている。
蒼は、微笑みながら視線で、返事を促した。
「なんか、僕はボーっとしているのに、どんどん決まっていくから……」
「なお君行動力あるからね。あの行動力と決断の速さは、あき君と共通するかな。アルファだからなのか、北畠家の血なのか……。圧倒されるものがあるよね」
「蒼先生でも、圧倒されるんですか?」
「されるよ。僕はのんびり、おっとりしているから」
「そうなんですか! 蒼先生はのんびりはしてないと思う。おっとりっていうか、優しさしか感じない」
「ありがとう。尚希君が、僕のことそんなふうに思ってくれているなら、それはあき君のおかげかな。そして、父さん母さんたち、北畠家の家族のおかげなんだと思うよ」
蒼が言葉を切る。尚希は、続きを静かに待つ。
「あき君の行動力と、決断力のおかげで、僕は安心していられる。とても守られていると思うから。そして、そんな僕たちを、父さん母さんたちは優しく見守っていてくれる。大きな愛で包まれているんだよ」
蒼は、静かに、しかし真剣に聞き入る尚希の手を取る。
「なお君もね、あき君と同じだと思う。尚希君のこと、大きな愛で包んでくれてるんじゃないのかな。僕はそう思うよ。尚希君、安心して全てを、なお君に委ねたらいいんじゃないかな。そうすれば、きっととても心地良いと思うよ」
蒼の手は、とても柔らかく、そして温かい。尚希は心も温かくなるのを感じる。
「もし尚希君が、なお君が決めていくことを、嫌だと思ってるのなら別だけど」
それは無い。尚久は必ず尚希の意向も聞いてくれるから。決断と行動は早いが、決して独断専行ではない。尚希は、顔を横にふって否定する。
「だったら、任せて良いと思うよ」
蒼が優しく微笑む。尚希は深く頷いた。
この時尚希は、蒼の優しさの訳が分かった思いになった。勿論、元々優しい人だとは思うが、彰久に愛されている、その愛が大きいからだろう。
傍から見ると、過剰とも思える愛。しかし、彰久はただやみくもに愛しているわけではない。大きな愛で蒼を包んで、守っているのだ。それが、蒼の優しい微笑みが現している。
羨ましいと思う。しかし、蒼は彰久と尚久は似ていると言った。
僕も、尚さんに愛されている――。
そうだ、いつも尚久は優しい。尚希の希望を必ず聞き入れてくれる。
新婚旅行も尚希の希望で決まったのだ。
不安に思う事など、何もないのだ。
「尚希君はお母さんのこともあって、目まぐるしく色々とあって不安になる気持ちも分かるよ。でも、なお君は尚希君のこと愛している。とても大事に思っているって思うから、安心して良いと思うよ」
「うん、僕……愛されているのかな」
「見ていて分かるよ。尚希君はなお君に愛されている」
蒼は、尚久が尚希を愛していることは、かなり前から察していた。直接聞いたことはないが、多分尚希が大人になるのを待っているのだろうと思っていたのだ。
それは蒼だけではなく、北畠家の人達皆の共通認識だった。
つまり、二人が婚約する前から、北畠家の人達にとって、尚希は将来の嫁だったのだ。
「僕もね、尚希君がなお君と結婚するの、凄く嬉しいよ。同じ嫁の立場だからよろしくね」
「よ、嫁……」
「そうだよ。ふふっ個性あふれる北畠家の嫁……僕は幸せだよ。尚希君も幸せになって欲しいな。ううん、絶対幸せになると思うよ」
優しいが力強い、蒼の確信の言葉。尚希は大きく頷いた。
「僕の方こそ、よろしくお願いします」
蒼は北畠家の嫁として先輩なんだ。こんな素敵で優しい人が先輩。何も心配することはない。僕は幸せなんだと、尚希は思う。
最初からそうだったのだ。ただ、自分が無駄に思い悩んでいただけ。
それに気付いて尚希の心は軽くなった。
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