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第一章
22 王宮池の底には魔石の他にサスペンスが沈んでいた
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ルゥルゥを封じたのはてっきりどこかの悪い魔法使いなんだと思っていた。黄金竜を封印できちゃう聖女だなんて物凄い力の持ち主じゃないのよね。
あたしは歴代随一かもな治癒魔法の使い手らしいけど、それ以外の魔法はからっきし。魔力があるから使えないわけじゃないみたいだけど魔力操作が超絶下手過ぎるらしいのよね。
実は聖女の聖なる魔法は治癒の他にも幾つかある。
例えば日照りの地に雨を降らせたり、逆に雨を止ませたり、封印関係もそうみたい。
その時その時の聖女によって能力はまちまちだけど、あたしにも使えるものがあるのなら試してはみたい。今のこの国が千年前には現在とは異なる国境線を有していたように時代時代の聖女を取り巻く環境は同じじゃない。歴代の聖女はこの国だけじゃなく世界の様々な土地に生まれているからハッキリしていない部分も多いけど、人々が讃える聖なる力には大きな違いはないって言われている。
努力すればあたしにももっと何かできるはず。
今日ここに来た目的の半分は昨日と同じく聖女力底上げ方法を探すため。
とりあえずルゥルゥの言う古代の聖女が凄いのはわかった。
じゃあもしかしてあたしがルゥルゥの所に導かれたのもその凄腕聖女の仕掛け?
わざわざルゥルゥを封じて彼女は何をしたかったんだろう。
ううーむ、謎多き聖女だわ。
でも一つだけ確かなのは……。
「ルゥルゥ、気を悪くしないでほしいんだけど、こうして千年を超えてルゥルゥに会えたのはその人のおかげって思うの」
あたしの言葉はルゥルゥに半分悩んだような顔をさせた。
当の聖女本人はとっくの昔に亡くなっているだろうし、彼にとっては恨みを直接ぶつける相手がいないわけで、きっと簡単には整理できないんだと思う。
「……そこはぼくもそう思う。そこだけだけどな」
複雑そうにして、それでも彼もあたしとの出会いは良かったって感じてくれているんだわ。素直に嬉しい。ただね、同時に自分最低じゃーんって盛大な溜息をつきたくなったけど。小説には書かれていなかった黄金竜と古代聖女との接点が知れて不謹慎だけどあたしはわくわくしちゃってた。ルゥルゥの身になってみたらとんでもないのにね。
だから贖罪じゃないけど抱っこしたままな彼の前に回していた両手の指を組んで「早くルゥルゥのお尻の傷が良くなりますように~っ痛いの痛いの飛んでけ~っ」て願った。
「んぬ?」
ルゥルゥははたと顔を上げてこっちを見つめて、それからおずおずとお尻に手をやって「痛い」なんて顔をしかめた。そりゃまだ治っていないんだしね。何をやっているんだか可愛いこと。でも彼は何か腑に落ちない点でもあるのか小首を捻ってパチパチと何度も瞬きをしていたっけ。
黙ってあたし達のやり取りを見ていた司書長はルゥルゥを怖がるってよりも興味津々。王様級の魔物ってのは人間の目に触れる機会がほとんどないからなんだって。
「千年前ですか。ふーむ、その辺りですと書物もそれ程残されてはいませんが、もしかしたら件の聖女様に関係のある物が出てくるかもしれませんし、あとで少しその方でも書棚を当たってみましょう」
そう言ってくれたから任せよう。何か見つかればそれはそれで興味深い。
最初、話を終えたら読書三昧にしようって考えていたんだけど、ルゥルゥが池に食事に行くって言っていたから、好奇心もあって一緒に行く事にした。
王宮の池の底にはルゥルゥの言葉通り竜が好む魔石が沈んでいた。
宝石にも似たカラフルなそれらを十個くらいルゥルゥが抱えて池から上がってきた時は予想外の多さにとってもビックリした。多くても四、五個って思っていたのに実際池の底にはその十倍以上はあるみたい。
一度には持ち切れないし食べ切れないから残りは池に残しておくみたいだけど、魔力の含有量や純度によっては宝石以上に貴重な物がわんさとまさか千年も手付かずのまま池の底にあったなんて王宮の誰も思わなかったでしょ。
ルゥルゥが言うには魔石の他にも池の底には色々と沈んでいるみたい。
池さらいしたら面白そうって思っていたら「誰かの古い骨もあったぞ」って言われてさすがに背筋にゾクリときたわ。昔の時代のドロドロの王宮劇の臭いがぷんぷんよね……。池の底には触れないでおこう。うん。
あたしは王宮池の岸辺に腰を下ろして、横でルゥルゥが魔石から魔力を吸収する様を眺めた。
言うまでもなくメイ、モカ、イザーク、リンドバーグも近くにいる。
池に入る際はルゥルゥのお尻の傷を心配したけど、魔石を口にするまで我慢して潜りさえすれば、あとは魔力満タンな自己回復力で治るって平気そうにしていた。本当にその通りみたいでもう普通に芝の上に座っている。ああんでも残念。可愛いお尻の手当ては不要になっちゃったん。
そんな強い子ルゥルゥってば魔石をバリバリ噛んで食べるのかと思いきや、何とまあ、バリバリ噛んで食べた。
うん、あたしの中の竜の食事イメージそのまんま。魔石の大きさは人の拳大の物を揃えてあったけど、魔石は魔「石」なだけに豪快……。
歯は大丈夫かなーって隣で呆気として見ていたからかルゥルゥは「普通は本来の姿で丸呑みするみたいだぞ」って説明をくれた。そうだった、孵ったばかりのこの子はこれが初食事なんだった。食べ方がわかっていて何よりだけど擬態姿で食べにくくないのかな。
「ねえルゥルゥ、水中なら目立たないしこっそり竜姿に戻って食事してもいいのよ?」
「ぼくも初めはそう思って戻ってみたけどな、それだとそうたい的にかえって魔石が小さすぎて食べにくいってわかった。こんな小さいのしかないとは思わなかったしな。あの女め」
「あ、へえ……」
ルゥルゥの拾ってきた魔石は魔力的に全てが一級品ってわかった。凄く結晶が澄んでいて向こうの景色がくっきりはっきり綺麗に拭かれたガラス越しみたいに透けて見えるんだもの。色合いは別として魔力純度が高い程透明度が増すのが魔石の特徴。色合いは石になった大元の魔力の系統によるみたいだけど、魔力源として見る限りはあくまでも純粋に魔力源だから元の系統にかかわらず同じように魔力を得られる。チョコにイチゴ味とかメロン味がついているようなものみたい。
ただし魔石を燃料に魔法を使う場合はその系統を考慮する必要がある。
人間社会じゃ一級品は拳大の大きさの魔石でも大層な値打ち物なんだけど、竜が食べるのに常識的な大きさって一体どれくらいなのかしらね。
そんな物が秘境にゴロゴロあるなら、そりゃあ一攫千金を狙った魔石ハンターって職業ができるわけだわー。世界は何て奥深いんだろう。そして欲深い。で、大抵秘境に行ったハンター達は帰ってこない。シビアだわ。
食事のおかげでルゥルゥはすっかり元気になった。
さてじゃあ次は何をしようかって考えて、結局あたしは図書館に戻っていた。無論池に行ったのと同じ面子と。誰もあたしの邪魔をしなかった。遊べーってごねそうなルゥルゥでさえ。きっとあたしの熱心さが伝わったからだろう。
司書長に頼んでいた本は用意されていて、あたしは午前中の残った時間と、そしてお昼御飯を手早く済ませると午後も書物に没頭した。
調べ物の続きと、あと余計な事を考えないようにするためにも。
セオ様の宮殿に個人的に招かれての初晩餐が迫っているのを思うだけで緊張してそわそわしちゃうんだもの。改めて怒られるのかもしれない。皆の前じゃあたしの聖女としての体面もあるからできなかっただろうから。
ああだけど彼に一度手酷く怒られてみたい気もしないでもない~、なんちゃってへへへ……ってあああ駄目駄目、変な事考えない。でぇも~烈火の如く怒った顔も見てみたいかも~……ってそうじゃないでしょ真面目になれあたしー!
閲覧机にぱたりと突っ伏して火照る頬を押さえる。
……セオドア・ヘンドリックスってばどうしてくれようか。推しの顔を思い浮かべるだけでどうしてこうも幸せなのよ。
もしも彼に青春恋愛漫画の男子みたいに爽やかに笑いかけられたら……たぶんあたし爆発して死ぬ。
もしもあたしが巷の令嬢だったなら何を着て行こうかなーうっふふっふ~って鏡の前でドレスを取っ替え引っ替えたっぷり何時間も迷ったに違いない。
だけどねえ、良くも悪くもあたしは聖女。
陛下との晩餐だろうと、女の子女の子しいキラキラしたドレスなんて着て行かない。
招待なら尚更に普段の法衣ドレスよりもかっちりした礼装で赴くのがあたしの立場からすると当然だった。
つまりは、あたし仕様で刺繍こそ巧みで豪華だけど、教会じゃ年少者から年長者つまりは教皇のお爺ちゃんまで着ているシンプルな形の法衣を。スレンダーには見えるかも知れないけど、もっとリボンとかで可愛くしたかったってのが本音。故郷を出てくる前はごく普通にそういう女の子アイテムを身に付けていたからね。
ま、でも気が引き締まって煩悩に引っ張られにくいからむしろ良かったかも。
約束の時間に遅れないようにと早目に向かったセオ様の宮殿の国王のための晩餐室。
あたしの方が早いだろうなって思っていたのに案内の人に扉を開けてもらって入ったら何と彼の方が早かった。わぁおっ忙しいだろうにちょっと意外。
彼は時間潰しにか目を落としていた本を閉じると近くにいた秘書の男性に手渡した。あたしもよく顔を合わせるその男性秘書は愛想良く笑って「それではごゆっくりどうぞお二方」と部屋を出て行った。
「お待たせしたようで申し訳ありません」
時間よりは確かに早く来たあたしだけど、陛下を待たせたのには変わりないってわけで入口で控えめに頭を下げる。
「約束より早く来たのに謝罪する必要はないだろう」
チラと壁に掛かった時計に目をやった彼から呆れられたもののそれだけで、彼はあたしに席を促した。
はあ、わかっていたけど、遠っ……。
長いダイニングテーブルの端と端に互いの席が用意されていた。
いつも他にも招待客がいる公式の王宮晩餐会時はこの位置だから驚かない。
幾つかの皿と食器が既にテーブルの上にはあって、予定より先に主役が揃っちゃったせいか給仕係達はやや急ぐようにして他の料理を運んでくる。あたしは給仕係の男性から椅子を引いてもらって腰掛けた。ありがとうと微笑んだら恐縮してか顔を赤らめたっけ。何故か向かいの席からはわざとらしい咳払いが聞こえた。
とにかくまあこれが紛れもなくいつも通りの距離で、その都度あたしは残念とか不満に思っていたけど今日ばかりは正直近くなくて良かったってホッとしていた。だって近いと推しのエレガントな匂いを一生懸命に嗅いじゃって煩悩まみれになっちゃいそうだものー。
「少々早いが始めるか」
セオ様は料理が全て運ばれた所で、平素の読めないかつ微妙に不機嫌そうにも見える顔で抑揚なく言った。最早あたしの思考なんて雑念以下に脳内設定できているんだと思う。さすがは優秀なファイアウォールをお持ちで。
あたしもあたしで気を取り直して素直に手を動かそうとした……んだけど、その前に真正面遠くに座する彼の声に遮られた。
「ところでアリエル」
「はい? 何でしょう陛下?」
何だか彼の声が低い。あら何でかしらあ~? あたしは素知らぬ顔付きで微笑さえ浮かべてみせる。ちょっと背中に汗。
あたしの態度に彼は明確にぐっと眉根を寄せた。
「どうして招かれざる客までいるんだ?」
あー、とうとう来たー。やっぱ指摘くるわよねー……。
『――ルゥルゥ、食事の席では大人しくしていてね?』
『何でだ。あんなやつちょっと蹴っ飛ばしてやればいいのだ』
『ルゥルゥ、ちょっとでも暴力は駄目。じゃないと同行は許可できません。一人でお留守番しててもらうからね、いいのそれでも?』
『うっ……それは嫌なのだ。だがな、あいつが無礼をはたらいてきたらだまってないぞ!』
『そうね、それなら宜しい』
『やった!』
なんてやり取りをついさっきあたしの部屋でしたのでしたー。
だって国王招待の晩餐にルゥルゥは自分も行くって食い下がったの。この子は諦めない強き心だったし無下にもできなくてねえ。
前世じゃ孫におやつをねだられてどうにも断れなくて買ってやったら、後からお嫁さんにそこは厳しく躾けてもらっていいですからって逆に言われた事があったわね。ああ勿論彼女は良き嫁だったわよ。
話を戻すと、ルゥルゥとは約束したからお行儀よくしてくれるはず。
それに無礼をってねえ……あたしがやらかしてもセオ様がやらかしてくるなんてあり得ない。
とにかくあたしも今現在膝の上で大人しくしているルゥルゥを見習っておしとやかに食事をして無難にこの晩餐を過ごすぞーって決めている。
セオ様はルゥルゥをめっちゃ睨んでいるけどね。魔物と一緒だなんて美味い飯も不味くなるだろがって顔よね。ルゥルゥも騒ぎ立てないだけで睨み返してはいるから少しヒヤヒヤよ。
「あのええと、この子は置物とでも思って下さい。ここの誰にも危害は加えないですから。ね、ルゥルゥ?」
「うむ。当然だ」
「はっ、随分と飼い慣らされたものだな。首輪でもしたらどうだ?」
鉄の処女もビックリな鋭さの言葉の刺がありますねー。
しかーし次の瞬間あたしは耳を疑った。ルゥルゥはむしろ怒るどころか嬉しそうにしたんだもの。
「はっはっは! 人間の王、お前もあんがい良いことを言うな。そうだぞ、ぼくはアリエルせんぞくのペットなのだぞ! ペットは家族だからいつでも一緒だ」
「「……」」
皮肉ってか侮辱が通じなかったルゥルゥの鈍さに感謝っ。でもホントにこの子ペット括りでいいのかしら? 前世のペットの名前を付けておいてあれだけども。
内心首を傾げたあたしはすぐに正面の推しへと意識を戻す。もっかい言うけど、遠い。
あたしは辛うじて笑顔を張り付けた。
「お、美味しそうなお料理~。冷めないうちに頂きますわね」
「……どうぞ」
彼はふぅと気持ちを落ち着かせるように息をつくと、他の人間は全員下がらせた。
日々王宮の海千山千の貴族の狸達を相手にしているからか感情を抑えるのに慣れている男セオドア陛下は、これ以上のルゥルゥへの口撃をやめたわ。幸いにも何とか穏便な空気に戻って食事を始められて一安心ね。
因みにあたしのお付き達も部屋の外で待機している。部屋に戻って良いって言ったのに職務熱心にも聞かなかった。まあ派遣された彼らの任務意欲や、極端に言えばここでの存在意義の問題でもあるからあたしも強くは言わなかった。
あたしは歴代随一かもな治癒魔法の使い手らしいけど、それ以外の魔法はからっきし。魔力があるから使えないわけじゃないみたいだけど魔力操作が超絶下手過ぎるらしいのよね。
実は聖女の聖なる魔法は治癒の他にも幾つかある。
例えば日照りの地に雨を降らせたり、逆に雨を止ませたり、封印関係もそうみたい。
その時その時の聖女によって能力はまちまちだけど、あたしにも使えるものがあるのなら試してはみたい。今のこの国が千年前には現在とは異なる国境線を有していたように時代時代の聖女を取り巻く環境は同じじゃない。歴代の聖女はこの国だけじゃなく世界の様々な土地に生まれているからハッキリしていない部分も多いけど、人々が讃える聖なる力には大きな違いはないって言われている。
努力すればあたしにももっと何かできるはず。
今日ここに来た目的の半分は昨日と同じく聖女力底上げ方法を探すため。
とりあえずルゥルゥの言う古代の聖女が凄いのはわかった。
じゃあもしかしてあたしがルゥルゥの所に導かれたのもその凄腕聖女の仕掛け?
わざわざルゥルゥを封じて彼女は何をしたかったんだろう。
ううーむ、謎多き聖女だわ。
でも一つだけ確かなのは……。
「ルゥルゥ、気を悪くしないでほしいんだけど、こうして千年を超えてルゥルゥに会えたのはその人のおかげって思うの」
あたしの言葉はルゥルゥに半分悩んだような顔をさせた。
当の聖女本人はとっくの昔に亡くなっているだろうし、彼にとっては恨みを直接ぶつける相手がいないわけで、きっと簡単には整理できないんだと思う。
「……そこはぼくもそう思う。そこだけだけどな」
複雑そうにして、それでも彼もあたしとの出会いは良かったって感じてくれているんだわ。素直に嬉しい。ただね、同時に自分最低じゃーんって盛大な溜息をつきたくなったけど。小説には書かれていなかった黄金竜と古代聖女との接点が知れて不謹慎だけどあたしはわくわくしちゃってた。ルゥルゥの身になってみたらとんでもないのにね。
だから贖罪じゃないけど抱っこしたままな彼の前に回していた両手の指を組んで「早くルゥルゥのお尻の傷が良くなりますように~っ痛いの痛いの飛んでけ~っ」て願った。
「んぬ?」
ルゥルゥははたと顔を上げてこっちを見つめて、それからおずおずとお尻に手をやって「痛い」なんて顔をしかめた。そりゃまだ治っていないんだしね。何をやっているんだか可愛いこと。でも彼は何か腑に落ちない点でもあるのか小首を捻ってパチパチと何度も瞬きをしていたっけ。
黙ってあたし達のやり取りを見ていた司書長はルゥルゥを怖がるってよりも興味津々。王様級の魔物ってのは人間の目に触れる機会がほとんどないからなんだって。
「千年前ですか。ふーむ、その辺りですと書物もそれ程残されてはいませんが、もしかしたら件の聖女様に関係のある物が出てくるかもしれませんし、あとで少しその方でも書棚を当たってみましょう」
そう言ってくれたから任せよう。何か見つかればそれはそれで興味深い。
最初、話を終えたら読書三昧にしようって考えていたんだけど、ルゥルゥが池に食事に行くって言っていたから、好奇心もあって一緒に行く事にした。
王宮の池の底にはルゥルゥの言葉通り竜が好む魔石が沈んでいた。
宝石にも似たカラフルなそれらを十個くらいルゥルゥが抱えて池から上がってきた時は予想外の多さにとってもビックリした。多くても四、五個って思っていたのに実際池の底にはその十倍以上はあるみたい。
一度には持ち切れないし食べ切れないから残りは池に残しておくみたいだけど、魔力の含有量や純度によっては宝石以上に貴重な物がわんさとまさか千年も手付かずのまま池の底にあったなんて王宮の誰も思わなかったでしょ。
ルゥルゥが言うには魔石の他にも池の底には色々と沈んでいるみたい。
池さらいしたら面白そうって思っていたら「誰かの古い骨もあったぞ」って言われてさすがに背筋にゾクリときたわ。昔の時代のドロドロの王宮劇の臭いがぷんぷんよね……。池の底には触れないでおこう。うん。
あたしは王宮池の岸辺に腰を下ろして、横でルゥルゥが魔石から魔力を吸収する様を眺めた。
言うまでもなくメイ、モカ、イザーク、リンドバーグも近くにいる。
池に入る際はルゥルゥのお尻の傷を心配したけど、魔石を口にするまで我慢して潜りさえすれば、あとは魔力満タンな自己回復力で治るって平気そうにしていた。本当にその通りみたいでもう普通に芝の上に座っている。ああんでも残念。可愛いお尻の手当ては不要になっちゃったん。
そんな強い子ルゥルゥってば魔石をバリバリ噛んで食べるのかと思いきや、何とまあ、バリバリ噛んで食べた。
うん、あたしの中の竜の食事イメージそのまんま。魔石の大きさは人の拳大の物を揃えてあったけど、魔石は魔「石」なだけに豪快……。
歯は大丈夫かなーって隣で呆気として見ていたからかルゥルゥは「普通は本来の姿で丸呑みするみたいだぞ」って説明をくれた。そうだった、孵ったばかりのこの子はこれが初食事なんだった。食べ方がわかっていて何よりだけど擬態姿で食べにくくないのかな。
「ねえルゥルゥ、水中なら目立たないしこっそり竜姿に戻って食事してもいいのよ?」
「ぼくも初めはそう思って戻ってみたけどな、それだとそうたい的にかえって魔石が小さすぎて食べにくいってわかった。こんな小さいのしかないとは思わなかったしな。あの女め」
「あ、へえ……」
ルゥルゥの拾ってきた魔石は魔力的に全てが一級品ってわかった。凄く結晶が澄んでいて向こうの景色がくっきりはっきり綺麗に拭かれたガラス越しみたいに透けて見えるんだもの。色合いは別として魔力純度が高い程透明度が増すのが魔石の特徴。色合いは石になった大元の魔力の系統によるみたいだけど、魔力源として見る限りはあくまでも純粋に魔力源だから元の系統にかかわらず同じように魔力を得られる。チョコにイチゴ味とかメロン味がついているようなものみたい。
ただし魔石を燃料に魔法を使う場合はその系統を考慮する必要がある。
人間社会じゃ一級品は拳大の大きさの魔石でも大層な値打ち物なんだけど、竜が食べるのに常識的な大きさって一体どれくらいなのかしらね。
そんな物が秘境にゴロゴロあるなら、そりゃあ一攫千金を狙った魔石ハンターって職業ができるわけだわー。世界は何て奥深いんだろう。そして欲深い。で、大抵秘境に行ったハンター達は帰ってこない。シビアだわ。
食事のおかげでルゥルゥはすっかり元気になった。
さてじゃあ次は何をしようかって考えて、結局あたしは図書館に戻っていた。無論池に行ったのと同じ面子と。誰もあたしの邪魔をしなかった。遊べーってごねそうなルゥルゥでさえ。きっとあたしの熱心さが伝わったからだろう。
司書長に頼んでいた本は用意されていて、あたしは午前中の残った時間と、そしてお昼御飯を手早く済ませると午後も書物に没頭した。
調べ物の続きと、あと余計な事を考えないようにするためにも。
セオ様の宮殿に個人的に招かれての初晩餐が迫っているのを思うだけで緊張してそわそわしちゃうんだもの。改めて怒られるのかもしれない。皆の前じゃあたしの聖女としての体面もあるからできなかっただろうから。
ああだけど彼に一度手酷く怒られてみたい気もしないでもない~、なんちゃってへへへ……ってあああ駄目駄目、変な事考えない。でぇも~烈火の如く怒った顔も見てみたいかも~……ってそうじゃないでしょ真面目になれあたしー!
閲覧机にぱたりと突っ伏して火照る頬を押さえる。
……セオドア・ヘンドリックスってばどうしてくれようか。推しの顔を思い浮かべるだけでどうしてこうも幸せなのよ。
もしも彼に青春恋愛漫画の男子みたいに爽やかに笑いかけられたら……たぶんあたし爆発して死ぬ。
もしもあたしが巷の令嬢だったなら何を着て行こうかなーうっふふっふ~って鏡の前でドレスを取っ替え引っ替えたっぷり何時間も迷ったに違いない。
だけどねえ、良くも悪くもあたしは聖女。
陛下との晩餐だろうと、女の子女の子しいキラキラしたドレスなんて着て行かない。
招待なら尚更に普段の法衣ドレスよりもかっちりした礼装で赴くのがあたしの立場からすると当然だった。
つまりは、あたし仕様で刺繍こそ巧みで豪華だけど、教会じゃ年少者から年長者つまりは教皇のお爺ちゃんまで着ているシンプルな形の法衣を。スレンダーには見えるかも知れないけど、もっとリボンとかで可愛くしたかったってのが本音。故郷を出てくる前はごく普通にそういう女の子アイテムを身に付けていたからね。
ま、でも気が引き締まって煩悩に引っ張られにくいからむしろ良かったかも。
約束の時間に遅れないようにと早目に向かったセオ様の宮殿の国王のための晩餐室。
あたしの方が早いだろうなって思っていたのに案内の人に扉を開けてもらって入ったら何と彼の方が早かった。わぁおっ忙しいだろうにちょっと意外。
彼は時間潰しにか目を落としていた本を閉じると近くにいた秘書の男性に手渡した。あたしもよく顔を合わせるその男性秘書は愛想良く笑って「それではごゆっくりどうぞお二方」と部屋を出て行った。
「お待たせしたようで申し訳ありません」
時間よりは確かに早く来たあたしだけど、陛下を待たせたのには変わりないってわけで入口で控えめに頭を下げる。
「約束より早く来たのに謝罪する必要はないだろう」
チラと壁に掛かった時計に目をやった彼から呆れられたもののそれだけで、彼はあたしに席を促した。
はあ、わかっていたけど、遠っ……。
長いダイニングテーブルの端と端に互いの席が用意されていた。
いつも他にも招待客がいる公式の王宮晩餐会時はこの位置だから驚かない。
幾つかの皿と食器が既にテーブルの上にはあって、予定より先に主役が揃っちゃったせいか給仕係達はやや急ぐようにして他の料理を運んでくる。あたしは給仕係の男性から椅子を引いてもらって腰掛けた。ありがとうと微笑んだら恐縮してか顔を赤らめたっけ。何故か向かいの席からはわざとらしい咳払いが聞こえた。
とにかくまあこれが紛れもなくいつも通りの距離で、その都度あたしは残念とか不満に思っていたけど今日ばかりは正直近くなくて良かったってホッとしていた。だって近いと推しのエレガントな匂いを一生懸命に嗅いじゃって煩悩まみれになっちゃいそうだものー。
「少々早いが始めるか」
セオ様は料理が全て運ばれた所で、平素の読めないかつ微妙に不機嫌そうにも見える顔で抑揚なく言った。最早あたしの思考なんて雑念以下に脳内設定できているんだと思う。さすがは優秀なファイアウォールをお持ちで。
あたしもあたしで気を取り直して素直に手を動かそうとした……んだけど、その前に真正面遠くに座する彼の声に遮られた。
「ところでアリエル」
「はい? 何でしょう陛下?」
何だか彼の声が低い。あら何でかしらあ~? あたしは素知らぬ顔付きで微笑さえ浮かべてみせる。ちょっと背中に汗。
あたしの態度に彼は明確にぐっと眉根を寄せた。
「どうして招かれざる客までいるんだ?」
あー、とうとう来たー。やっぱ指摘くるわよねー……。
『――ルゥルゥ、食事の席では大人しくしていてね?』
『何でだ。あんなやつちょっと蹴っ飛ばしてやればいいのだ』
『ルゥルゥ、ちょっとでも暴力は駄目。じゃないと同行は許可できません。一人でお留守番しててもらうからね、いいのそれでも?』
『うっ……それは嫌なのだ。だがな、あいつが無礼をはたらいてきたらだまってないぞ!』
『そうね、それなら宜しい』
『やった!』
なんてやり取りをついさっきあたしの部屋でしたのでしたー。
だって国王招待の晩餐にルゥルゥは自分も行くって食い下がったの。この子は諦めない強き心だったし無下にもできなくてねえ。
前世じゃ孫におやつをねだられてどうにも断れなくて買ってやったら、後からお嫁さんにそこは厳しく躾けてもらっていいですからって逆に言われた事があったわね。ああ勿論彼女は良き嫁だったわよ。
話を戻すと、ルゥルゥとは約束したからお行儀よくしてくれるはず。
それに無礼をってねえ……あたしがやらかしてもセオ様がやらかしてくるなんてあり得ない。
とにかくあたしも今現在膝の上で大人しくしているルゥルゥを見習っておしとやかに食事をして無難にこの晩餐を過ごすぞーって決めている。
セオ様はルゥルゥをめっちゃ睨んでいるけどね。魔物と一緒だなんて美味い飯も不味くなるだろがって顔よね。ルゥルゥも騒ぎ立てないだけで睨み返してはいるから少しヒヤヒヤよ。
「あのええと、この子は置物とでも思って下さい。ここの誰にも危害は加えないですから。ね、ルゥルゥ?」
「うむ。当然だ」
「はっ、随分と飼い慣らされたものだな。首輪でもしたらどうだ?」
鉄の処女もビックリな鋭さの言葉の刺がありますねー。
しかーし次の瞬間あたしは耳を疑った。ルゥルゥはむしろ怒るどころか嬉しそうにしたんだもの。
「はっはっは! 人間の王、お前もあんがい良いことを言うな。そうだぞ、ぼくはアリエルせんぞくのペットなのだぞ! ペットは家族だからいつでも一緒だ」
「「……」」
皮肉ってか侮辱が通じなかったルゥルゥの鈍さに感謝っ。でもホントにこの子ペット括りでいいのかしら? 前世のペットの名前を付けておいてあれだけども。
内心首を傾げたあたしはすぐに正面の推しへと意識を戻す。もっかい言うけど、遠い。
あたしは辛うじて笑顔を張り付けた。
「お、美味しそうなお料理~。冷めないうちに頂きますわね」
「……どうぞ」
彼はふぅと気持ちを落ち着かせるように息をつくと、他の人間は全員下がらせた。
日々王宮の海千山千の貴族の狸達を相手にしているからか感情を抑えるのに慣れている男セオドア陛下は、これ以上のルゥルゥへの口撃をやめたわ。幸いにも何とか穏便な空気に戻って食事を始められて一安心ね。
因みにあたしのお付き達も部屋の外で待機している。部屋に戻って良いって言ったのに職務熱心にも聞かなかった。まあ派遣された彼らの任務意欲や、極端に言えばここでの存在意義の問題でもあるからあたしも強くは言わなかった。
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♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟
皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います!
この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m
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