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武神女帝編
ep429 反逆せし両弦将:ルナアサシン&バーサクリザード
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本来天鐘が差し向けてきた元五艦将コンビに代わり、アタシ達の前に立ち塞がった現五艦将のラルカさんと牙島のコンビ。
向こうの同士討ちの理由はともかく、この二人相手に油断なんてできはしない。
「キーハハハ! 空色の魔女とは今でもハッキリ白黒ついたとは思うとらへん! ここいらでリターンマッチ仕掛けて、今度という今度こそ白星頂戴させてもらうでぇえ!!」
「相変わらずの好戦主義ってかい! 本当に好きなもんだねぇ!」
まず襲い掛かってくるは、左舷将、バーサクリザードの牙島。爬虫類じみた顔に不気味な笑みを浮かべ、素早く飛び掛かってくる。
思えばこいつとの戦いって、どこか中途半端な終わり方ばっかりなのよね。
一戦目はショーちゃん救出が第一で、アタシもあわや毒で死ぬところだった。
二戦目はこっちがビールを用意できたからよかったものを、一歩間違えてれば腹を貫かれてお陀仏だった。
三戦目は……その……牙島の不注意が悪い。電車に撥ねられて退場なんて、ただのギャグじゃんか。
――ともあれ、向かってくるならやるしかない。前へ進んだ先に目指すものがあるならば、ヒーローに退却などない。
「牙島ぁぁあ!! 今回は俺達もいることを忘れんじゃねぇぇえ!!」
「生憎、嫁を襲う暴漢トカゲ男を見逃すほど、薄情な夫じゃないんでね!」
「ああ、ええで! 三人まとめて相手したるわ! ワイの渇望を……満たせるもんならなぁぁああ!!」
それにこっちには頼れる仲間だっている。真っ先にアタシへ突っ込んできた牙島に対し、フェリアさんとタケゾーが守る形で割り込んでくれる。
フェリアさんの高周波ブレードによる剣技に、タケゾーのジェットアーマー式我流格闘術。本当に心強い限りだ。
それでも牙島はお得意のスピード戦法で的確なヒット&アウェイをしてくるし、アタシも頼ってばかりじゃいられない。
どうにか隙をついて攻撃に――
「陽動ご苦労様です。ミスター牙島」
「とはいかないか! そっちも二人がかりなんだよね!」
――ばかり意識を向けていては、戦局を視る達人に不意を突かれてしまう。アタシも流石に慣れてきた。
傍で機会を伺っていたのは、右舷将、ルナアサシンのラルカさん。混戦状態であろうとも、顔色一つ変えずに戦局を見極めている。
牙島みたいな超人パワーなんてないのに、アタシはこの人に一度も勝てていない。
一戦目はパンドラの箱争奪戦にて、森林のテリトリーで消耗させられ敗北。
二戦目でも同じく事前に消耗させられ、電気能力の弱点を突かれて敗北。
三戦目は結果としては引き分けだけど、あれもタケゾーがラルカさんの虚を突いてくれた結果だ。
――そんな人が離れて二丁拳銃を構えているのだから、何もしないわけがない。
「残念だけど、アタシが盾にならせてもらうよ!」
「随分と自分の出方が分かってきたようですね。……その合理的な判断、認めはしましょう」
銃口は牙島と交戦するタケゾーとフェリアさんを狙っている。ならば、今のアタシにできるのは加勢ではなく防衛。
モデル・パンドラも装備してあるし、ラルカさんの銃弾が非導体弾でも電磁フィールドで防御可能だ。
引き金が引かれるより前に、大の字になってラルカさんの銃口の前へと立ちはだかる。
バギュン! ――ギュゥゥウン!!
「あぐっ!? な、何これ!? 銃弾が……加速した!?」
「認めはしますが、少々惜しかったですね。あなたとの交戦が予想できた段階で、自分が新たな手を用意しないと思いましたか?」
自信をもって盾となったはずなのに、ラルカさんが放った銃弾は電磁フィールドをも突き破り、アタシの肩を掠めていく。
幸い、当たり処のおかげでそこまでのダメージはない。だけど、まさか電磁フィールドが破られるとは思わなかった。
「隼!? 大丈夫か!?」
「う、うん。どうにもラルカさん、また新兵器を用意したみたいだね……」
タケゾーも様子を見て駆け寄ってくれて、アタシも抱えられながら一時的に安全圏内へと逃れられる。
さっきの銃撃は考察するに、銃弾そのものが『発砲の爆発後、さらに爆発させる』機構を持っていたと考えるべきか。例えるならロケットの二段階推進と同じだ。
それによって電磁フィールドで一度銃弾が防がれても、さらなる加速で無理矢理ねじ込んで突破してきたと見える。
思えばラルカさんって、戦うごとに新たな手立てを用意してくるのよね。その臨機応変さこそ、アタシのような超人ヒーローにも勝ち越してきた要因か。
「チィ!? 牙島だけに集中してらんねえのかよ!?」
「フェリア様も想像以上に動けるようですね。ですが、幾度も前線を潜り抜けてきた自分達からすれば、まだまだ甘いといったところでしょう」
「こ、こいつ!? 脚だけで俺の剣技を!?」
フェリアさんもアタシが立て直せるように一人で時間を稼いでくれるも、流石に分が悪すぎる。
牙島から距離を離してラルカさんに近接勝負を挑むも、今度は体術であしらわれてしまっている。
相手が高周波ブレードであろうとも、ラルカさんはまるで動じもしない。冷静にブーツのカカトで刀身を捌き、逆に蹴り技でカウンターを放っている。
――まさにガンカタってスタイルだ。フェリアさんだって相当な訓練は積んでるはずなのに、一体ラルカさんの方はどれだけ技を磨き上げたのだろうか?
「フェリアさん、ごめん! アタシも侮ったみたいだ……!」
「気にすんな。それより、こいつは結構マズい展開だぞ……!」
「ああ。この二人の相手をしてたら、時間ばっかり食わされる……!」
一度三人とも距離をとり、どうにか状況を打破するために思考を巡らせる。だけど、相手のコンビは想像以上に手強い。
近接特化でスピードを始めとした身体能力勝負の牙島。遠距離にも近距離にも対応した応用力のラルカさん。
これまでいがみ合う場面が多かった二人なのに、流石は将軍艦隊五艦将と言わざるを得ない。元五艦将コンビと違い、現役で前線を戦い抜いてきただけのことはある。
「キハハハ! どないした? もう打ち止めかいな?」
「ミスター牙島。一応の警戒は続けてください。彼女達もまた、何度も自分達の想定を上回ってきた相手ですので」
「へいへい。分かっとるがな。ホンマにノリを知らん右舷将様やで」
もしかするとこの二人、キャラも含めて真逆だからこそ相性がいいのかもしれない。
猪突猛進な戦闘狂と冷静沈着な参謀コンビ。そう考えると、この二人が天鐘一派についた恐ろしさを改めて実感する。
ただ、今はアタシだって先を急ぎたい。
ここで足止めを食らっていては、本来の目的であるクジャクさんに会うことも――
「……なあ、隼。お前は一人で先に行け。ここは俺とフェリアで食い止める」
「え……?」
向こうの同士討ちの理由はともかく、この二人相手に油断なんてできはしない。
「キーハハハ! 空色の魔女とは今でもハッキリ白黒ついたとは思うとらへん! ここいらでリターンマッチ仕掛けて、今度という今度こそ白星頂戴させてもらうでぇえ!!」
「相変わらずの好戦主義ってかい! 本当に好きなもんだねぇ!」
まず襲い掛かってくるは、左舷将、バーサクリザードの牙島。爬虫類じみた顔に不気味な笑みを浮かべ、素早く飛び掛かってくる。
思えばこいつとの戦いって、どこか中途半端な終わり方ばっかりなのよね。
一戦目はショーちゃん救出が第一で、アタシもあわや毒で死ぬところだった。
二戦目はこっちがビールを用意できたからよかったものを、一歩間違えてれば腹を貫かれてお陀仏だった。
三戦目は……その……牙島の不注意が悪い。電車に撥ねられて退場なんて、ただのギャグじゃんか。
――ともあれ、向かってくるならやるしかない。前へ進んだ先に目指すものがあるならば、ヒーローに退却などない。
「牙島ぁぁあ!! 今回は俺達もいることを忘れんじゃねぇぇえ!!」
「生憎、嫁を襲う暴漢トカゲ男を見逃すほど、薄情な夫じゃないんでね!」
「ああ、ええで! 三人まとめて相手したるわ! ワイの渇望を……満たせるもんならなぁぁああ!!」
それにこっちには頼れる仲間だっている。真っ先にアタシへ突っ込んできた牙島に対し、フェリアさんとタケゾーが守る形で割り込んでくれる。
フェリアさんの高周波ブレードによる剣技に、タケゾーのジェットアーマー式我流格闘術。本当に心強い限りだ。
それでも牙島はお得意のスピード戦法で的確なヒット&アウェイをしてくるし、アタシも頼ってばかりじゃいられない。
どうにか隙をついて攻撃に――
「陽動ご苦労様です。ミスター牙島」
「とはいかないか! そっちも二人がかりなんだよね!」
――ばかり意識を向けていては、戦局を視る達人に不意を突かれてしまう。アタシも流石に慣れてきた。
傍で機会を伺っていたのは、右舷将、ルナアサシンのラルカさん。混戦状態であろうとも、顔色一つ変えずに戦局を見極めている。
牙島みたいな超人パワーなんてないのに、アタシはこの人に一度も勝てていない。
一戦目はパンドラの箱争奪戦にて、森林のテリトリーで消耗させられ敗北。
二戦目でも同じく事前に消耗させられ、電気能力の弱点を突かれて敗北。
三戦目は結果としては引き分けだけど、あれもタケゾーがラルカさんの虚を突いてくれた結果だ。
――そんな人が離れて二丁拳銃を構えているのだから、何もしないわけがない。
「残念だけど、アタシが盾にならせてもらうよ!」
「随分と自分の出方が分かってきたようですね。……その合理的な判断、認めはしましょう」
銃口は牙島と交戦するタケゾーとフェリアさんを狙っている。ならば、今のアタシにできるのは加勢ではなく防衛。
モデル・パンドラも装備してあるし、ラルカさんの銃弾が非導体弾でも電磁フィールドで防御可能だ。
引き金が引かれるより前に、大の字になってラルカさんの銃口の前へと立ちはだかる。
バギュン! ――ギュゥゥウン!!
「あぐっ!? な、何これ!? 銃弾が……加速した!?」
「認めはしますが、少々惜しかったですね。あなたとの交戦が予想できた段階で、自分が新たな手を用意しないと思いましたか?」
自信をもって盾となったはずなのに、ラルカさんが放った銃弾は電磁フィールドをも突き破り、アタシの肩を掠めていく。
幸い、当たり処のおかげでそこまでのダメージはない。だけど、まさか電磁フィールドが破られるとは思わなかった。
「隼!? 大丈夫か!?」
「う、うん。どうにもラルカさん、また新兵器を用意したみたいだね……」
タケゾーも様子を見て駆け寄ってくれて、アタシも抱えられながら一時的に安全圏内へと逃れられる。
さっきの銃撃は考察するに、銃弾そのものが『発砲の爆発後、さらに爆発させる』機構を持っていたと考えるべきか。例えるならロケットの二段階推進と同じだ。
それによって電磁フィールドで一度銃弾が防がれても、さらなる加速で無理矢理ねじ込んで突破してきたと見える。
思えばラルカさんって、戦うごとに新たな手立てを用意してくるのよね。その臨機応変さこそ、アタシのような超人ヒーローにも勝ち越してきた要因か。
「チィ!? 牙島だけに集中してらんねえのかよ!?」
「フェリア様も想像以上に動けるようですね。ですが、幾度も前線を潜り抜けてきた自分達からすれば、まだまだ甘いといったところでしょう」
「こ、こいつ!? 脚だけで俺の剣技を!?」
フェリアさんもアタシが立て直せるように一人で時間を稼いでくれるも、流石に分が悪すぎる。
牙島から距離を離してラルカさんに近接勝負を挑むも、今度は体術であしらわれてしまっている。
相手が高周波ブレードであろうとも、ラルカさんはまるで動じもしない。冷静にブーツのカカトで刀身を捌き、逆に蹴り技でカウンターを放っている。
――まさにガンカタってスタイルだ。フェリアさんだって相当な訓練は積んでるはずなのに、一体ラルカさんの方はどれだけ技を磨き上げたのだろうか?
「フェリアさん、ごめん! アタシも侮ったみたいだ……!」
「気にすんな。それより、こいつは結構マズい展開だぞ……!」
「ああ。この二人の相手をしてたら、時間ばっかり食わされる……!」
一度三人とも距離をとり、どうにか状況を打破するために思考を巡らせる。だけど、相手のコンビは想像以上に手強い。
近接特化でスピードを始めとした身体能力勝負の牙島。遠距離にも近距離にも対応した応用力のラルカさん。
これまでいがみ合う場面が多かった二人なのに、流石は将軍艦隊五艦将と言わざるを得ない。元五艦将コンビと違い、現役で前線を戦い抜いてきただけのことはある。
「キハハハ! どないした? もう打ち止めかいな?」
「ミスター牙島。一応の警戒は続けてください。彼女達もまた、何度も自分達の想定を上回ってきた相手ですので」
「へいへい。分かっとるがな。ホンマにノリを知らん右舷将様やで」
もしかするとこの二人、キャラも含めて真逆だからこそ相性がいいのかもしれない。
猪突猛進な戦闘狂と冷静沈着な参謀コンビ。そう考えると、この二人が天鐘一派についた恐ろしさを改めて実感する。
ただ、今はアタシだって先を急ぎたい。
ここで足止めを食らっていては、本来の目的であるクジャクさんに会うことも――
「……なあ、隼。お前は一人で先に行け。ここは俺とフェリアで食い止める」
「え……?」
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