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将軍艦隊編・急
ep335 戦末決行の艦尾将:バーニングボーグ
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「ええぇ!? お、俺がこれを操縦するのか!? 操縦方法なんて知らないぞ!? つうか、本当に動かせるのか!?」
「そこはアタシを信じなさいな! この回路だと動力線は……これか!」
フラグシップギアを見つけた時は動揺してなかったタケゾーも、アタシの作戦を聞くと動揺して狼狽えてくる。
まあ、本来ならば無茶な話だろうね。だけど、フラグシップギアに別の動力源を用意できれば動かせるなら話は別だ。
機体上部の配電パネルをデバイスロッドでこじ開ければ、動力線なんてすぐに見つけられる。電気工学は得意分野だ。
そして見つけた動力線を引っ張り出し、アタシの両手に巻きつけてからの――
「ふんりゃぁあああ!!」
グゴゴゴゴォ……!
「ほ、本当に動いた……!?」
――髪を空色に変化させつつ生体コイル稼働により、フラグシップギアへ自らの電力を送り込む。
計算通りにフラグシップギアのエンジンも稼働してくれた。アタシ自身が動力源となり、この戦車でフレイムを倒す。
現状、それぐらいしか対抗できる手段がない。あんなサイボーグ相手に生身だけで戦うなんて無謀さえも通り越す。タケゾーもコクピットで守れて一石二鳥だ。
「……ボス。あんなところにフラグシップギアを置き去りにするのは、やはり問題だったのではないでしょうか?」
「……うるせーぞ、ラルカ。なっちまったもんは仕方ねーだろ。それより、俺様達と白陽炉を守るための障壁を張れ。フレイムには実弾系火器は使わねーよーに言ってるが、フラグシップギアまで動いたらどんな被害が出るかも分からねーからな」
「なんや、結構グダグダとちゃいまっか?」
「オメーもうるせーぞ、牙島。給料下げるぞ」
「……オイは黙って、障壁さ準備するばい」
他の五艦将の皆さんもこれは予想外だったらしく、思わずフロスト博士への愚痴が飛んでいる。
まあ、この舞台自体がクジャクさんの思い付きで用意された感じだし、ある意味将軍艦隊も巻き込まれた立場か。
とはいえ、他四人と白陽炉への障壁展開はありがたい。アタシとしても、間違ってこの戦艦を沈めたくはないからね。
強化ガラスによる障壁でアタシ達戦う人間(と戦車)だけが残り、準備は万端といったところか。
「フオオオ! オオオォ!」
「うお!? なんだか馬鹿デカい斧を持ち出してきた!? それが今回の得物ってことか!」
フラグシップギアを稼働させたアタシ達に対し、フレイムは室内の隅に置かれていた巨大な斧を両手に握りしめてくる。
今回は左腕のガトリングガンも両肩の大砲やロケットランチャーもなしだ。フロスト博士も被害を恐れて、フレイムの武装は制限してたみたいだね。
もっとも、銃火器なしでもあの巨体とフラグシップギアを持ち上げるパワーは侮れない。そこに斧の威力が合わされば、近接戦での脅威は今まで以上か。
「タケゾー! 準備はいい!?」
「よくないっての!? こんな戦車の操縦、どうやってすれば――あっ」
「ん? どしたのさ、タケゾー?」
斧を構えたフレイムに対し、こちらも負けじとフラグシップギアを準備する。
とはいえ、流石にタケゾーに無茶を言い過ぎたか。バイクの運転はできても、戦車の運転は全然違うよね。
アタシもノリでお願いしちゃって申し訳なく思ってたけど、タケゾーが何かに気付いたように口を開く。
「このコクピット、操縦ハンドルやスイッチに分かりやすくメモが書いてあるぞ……」
「……え? タケゾーでも分かるぐらいに?」
「ああ。しかも全体的なデザインはバイクに近い。これ、俺でも操縦できるぞ……」
なんということだろうか。フラグシップギアのコクピットは、タケゾーでも操縦可能な親切設計だった。
それはそれでありがたいんだけど、どうしてそんな設計にしちゃったのさ? フロスト博士?
「……ボス。どうしてフラグシップギアのコクピットに、あそこまで分かりやすい表記があるのですか?」
「あー。フラグシップギアって、俺様も普段からあんまり使わねーんだよ。奥の手だから。たまに忘れそーにもなるから、メモ書いて操縦系統自体も簡易なバイク風にしてある」
「それで敵に利用されとったら、ただのアホとちゃいまっか?」
「だからうるせーぞ、牙島。今月の給料をカットされてーのか?」
「……オイには嫁さんと子供がいるけん。不要なことは口にせんね。減給は堪忍ばい」
思わずアタシが障壁の向こうに目を向けると、またしてもそれに応えるような会話が聞こえてくる。
まあ、扱いやすい操縦システムってのは技術者としては重要だよね。そこはマッドサイエンティストでも同じように工夫してたのか。
でも、それが仇となるとはフロスト博士も脇が甘い。せめてシステムのロックぐらいはしておくべきだったか。他の五艦将からの苦情ももっともだ。
――それと関係ないけど、ベレゴマって妻子持ちだったんだね。ラルカさんも前にそんなことを言ってたや。
家庭を持つ父親は大変だね。ある意味、あの中では一番の苦労人か。
「とりあえず、こっちも戦闘可能ってこったね! さあ、行くよ! タケゾー!」
「ヒーローを嫁に持つと、旦那は大変なもんだ! だが、俺もここで引き下がりはしないさ!」
フラグシップギアの動力はアタシが、操縦はタケゾーが担うことでフレイムに対抗可能だ。
ここまで振り回され続けたタケゾーも慣れてきたのか、アタシと一緒に戦ってくれる気満々だ。
「フオオオオォ!!」
「斧を振り下ろしてきた! タケゾー、避けて!」
「任せろ!」
フレイムの方も早速とばかりに、手にした巨大斧を振り下ろして襲い掛かってくる。
だけど、アタシは動力の維持に意識を向けていればいい。バイク仕込みによるタケゾーのハンドリングが、見事にその一撃を躱してくれる。
「今度はこっちから行くぞぉぉおお!!」
「フオッ!? フオオオォ!」
その隙を突いて今度はフラグシップギアを旋回させながら突進。襲われてた時は脅威だったドリルも、こっちが使えるなら話は別だ。
そのままフレイムを跳ね飛ばせればよかったんだけど、あっちもジェットパックを応用したスライド移動で回避してくる。
室内という都合上で空は飛べないけど、やっぱりあの機動力は厄介だ。
「フッッオオオォ!!」
「どうやら今回は完全に近接戦オンリーみたいだな! だが、銃火器を使ってた時並の暴れっぷりだ!」
「それに耐えるこの戦艦も大したもんだ! さらにそれを回避し続けるタケゾーもとんでもないけどね!」
フレイムの戦法はジェットパックによる地上高速移動と巨大斧による攻撃のみ。実にシンプルではあるが、フレイムの馬鹿みたいな巨体とパワーを考えればかなり効果的な戦法だ。
対するこちらも現状フラグシップギアによる移動と突進のみ。ただタケゾーの技量のおかげで、今のところは回避できている。
思えばいろんな場面でバイクによる突破劇を経験してきたタケゾーだ。その運転技量もいつの間にか常人の域を超えちゃったのかもね。
「でも、お互いに攻撃と回避ばかりで、こっちにも決定打がないか!? 突進で壁と挟み込んでやれば、フレイムでもひとたまりもないはずなんだけど……!」
「かといって、こっちにはこれ以上の攻撃手段もないぞ!? 何か強力な隠し武器でも――あれ?」
「え? タケゾー? もしかして、また何か見つけた?」
一進一退の攻防を続けるも、お互いに決定打が出てこない拮抗状態。ここからどうにかしないといけない矢先、またしてもタケゾーが妙な声を漏らす。
まさかコクピットに秘密兵器のボタンでも見つけたとか? だとしたら、どんな秘密兵器なんだろ?
「赤いボタンにドクロのマークがついてるんだが、これってもしかして……?」
「……まさか、自爆ボタンだったりして?」
「そこはアタシを信じなさいな! この回路だと動力線は……これか!」
フラグシップギアを見つけた時は動揺してなかったタケゾーも、アタシの作戦を聞くと動揺して狼狽えてくる。
まあ、本来ならば無茶な話だろうね。だけど、フラグシップギアに別の動力源を用意できれば動かせるなら話は別だ。
機体上部の配電パネルをデバイスロッドでこじ開ければ、動力線なんてすぐに見つけられる。電気工学は得意分野だ。
そして見つけた動力線を引っ張り出し、アタシの両手に巻きつけてからの――
「ふんりゃぁあああ!!」
グゴゴゴゴォ……!
「ほ、本当に動いた……!?」
――髪を空色に変化させつつ生体コイル稼働により、フラグシップギアへ自らの電力を送り込む。
計算通りにフラグシップギアのエンジンも稼働してくれた。アタシ自身が動力源となり、この戦車でフレイムを倒す。
現状、それぐらいしか対抗できる手段がない。あんなサイボーグ相手に生身だけで戦うなんて無謀さえも通り越す。タケゾーもコクピットで守れて一石二鳥だ。
「……ボス。あんなところにフラグシップギアを置き去りにするのは、やはり問題だったのではないでしょうか?」
「……うるせーぞ、ラルカ。なっちまったもんは仕方ねーだろ。それより、俺様達と白陽炉を守るための障壁を張れ。フレイムには実弾系火器は使わねーよーに言ってるが、フラグシップギアまで動いたらどんな被害が出るかも分からねーからな」
「なんや、結構グダグダとちゃいまっか?」
「オメーもうるせーぞ、牙島。給料下げるぞ」
「……オイは黙って、障壁さ準備するばい」
他の五艦将の皆さんもこれは予想外だったらしく、思わずフロスト博士への愚痴が飛んでいる。
まあ、この舞台自体がクジャクさんの思い付きで用意された感じだし、ある意味将軍艦隊も巻き込まれた立場か。
とはいえ、他四人と白陽炉への障壁展開はありがたい。アタシとしても、間違ってこの戦艦を沈めたくはないからね。
強化ガラスによる障壁でアタシ達戦う人間(と戦車)だけが残り、準備は万端といったところか。
「フオオオ! オオオォ!」
「うお!? なんだか馬鹿デカい斧を持ち出してきた!? それが今回の得物ってことか!」
フラグシップギアを稼働させたアタシ達に対し、フレイムは室内の隅に置かれていた巨大な斧を両手に握りしめてくる。
今回は左腕のガトリングガンも両肩の大砲やロケットランチャーもなしだ。フロスト博士も被害を恐れて、フレイムの武装は制限してたみたいだね。
もっとも、銃火器なしでもあの巨体とフラグシップギアを持ち上げるパワーは侮れない。そこに斧の威力が合わされば、近接戦での脅威は今まで以上か。
「タケゾー! 準備はいい!?」
「よくないっての!? こんな戦車の操縦、どうやってすれば――あっ」
「ん? どしたのさ、タケゾー?」
斧を構えたフレイムに対し、こちらも負けじとフラグシップギアを準備する。
とはいえ、流石にタケゾーに無茶を言い過ぎたか。バイクの運転はできても、戦車の運転は全然違うよね。
アタシもノリでお願いしちゃって申し訳なく思ってたけど、タケゾーが何かに気付いたように口を開く。
「このコクピット、操縦ハンドルやスイッチに分かりやすくメモが書いてあるぞ……」
「……え? タケゾーでも分かるぐらいに?」
「ああ。しかも全体的なデザインはバイクに近い。これ、俺でも操縦できるぞ……」
なんということだろうか。フラグシップギアのコクピットは、タケゾーでも操縦可能な親切設計だった。
それはそれでありがたいんだけど、どうしてそんな設計にしちゃったのさ? フロスト博士?
「……ボス。どうしてフラグシップギアのコクピットに、あそこまで分かりやすい表記があるのですか?」
「あー。フラグシップギアって、俺様も普段からあんまり使わねーんだよ。奥の手だから。たまに忘れそーにもなるから、メモ書いて操縦系統自体も簡易なバイク風にしてある」
「それで敵に利用されとったら、ただのアホとちゃいまっか?」
「だからうるせーぞ、牙島。今月の給料をカットされてーのか?」
「……オイには嫁さんと子供がいるけん。不要なことは口にせんね。減給は堪忍ばい」
思わずアタシが障壁の向こうに目を向けると、またしてもそれに応えるような会話が聞こえてくる。
まあ、扱いやすい操縦システムってのは技術者としては重要だよね。そこはマッドサイエンティストでも同じように工夫してたのか。
でも、それが仇となるとはフロスト博士も脇が甘い。せめてシステムのロックぐらいはしておくべきだったか。他の五艦将からの苦情ももっともだ。
――それと関係ないけど、ベレゴマって妻子持ちだったんだね。ラルカさんも前にそんなことを言ってたや。
家庭を持つ父親は大変だね。ある意味、あの中では一番の苦労人か。
「とりあえず、こっちも戦闘可能ってこったね! さあ、行くよ! タケゾー!」
「ヒーローを嫁に持つと、旦那は大変なもんだ! だが、俺もここで引き下がりはしないさ!」
フラグシップギアの動力はアタシが、操縦はタケゾーが担うことでフレイムに対抗可能だ。
ここまで振り回され続けたタケゾーも慣れてきたのか、アタシと一緒に戦ってくれる気満々だ。
「フオオオオォ!!」
「斧を振り下ろしてきた! タケゾー、避けて!」
「任せろ!」
フレイムの方も早速とばかりに、手にした巨大斧を振り下ろして襲い掛かってくる。
だけど、アタシは動力の維持に意識を向けていればいい。バイク仕込みによるタケゾーのハンドリングが、見事にその一撃を躱してくれる。
「今度はこっちから行くぞぉぉおお!!」
「フオッ!? フオオオォ!」
その隙を突いて今度はフラグシップギアを旋回させながら突進。襲われてた時は脅威だったドリルも、こっちが使えるなら話は別だ。
そのままフレイムを跳ね飛ばせればよかったんだけど、あっちもジェットパックを応用したスライド移動で回避してくる。
室内という都合上で空は飛べないけど、やっぱりあの機動力は厄介だ。
「フッッオオオォ!!」
「どうやら今回は完全に近接戦オンリーみたいだな! だが、銃火器を使ってた時並の暴れっぷりだ!」
「それに耐えるこの戦艦も大したもんだ! さらにそれを回避し続けるタケゾーもとんでもないけどね!」
フレイムの戦法はジェットパックによる地上高速移動と巨大斧による攻撃のみ。実にシンプルではあるが、フレイムの馬鹿みたいな巨体とパワーを考えればかなり効果的な戦法だ。
対するこちらも現状フラグシップギアによる移動と突進のみ。ただタケゾーの技量のおかげで、今のところは回避できている。
思えばいろんな場面でバイクによる突破劇を経験してきたタケゾーだ。その運転技量もいつの間にか常人の域を超えちゃったのかもね。
「でも、お互いに攻撃と回避ばかりで、こっちにも決定打がないか!? 突進で壁と挟み込んでやれば、フレイムでもひとたまりもないはずなんだけど……!」
「かといって、こっちにはこれ以上の攻撃手段もないぞ!? 何か強力な隠し武器でも――あれ?」
「え? タケゾー? もしかして、また何か見つけた?」
一進一退の攻防を続けるも、お互いに決定打が出てこない拮抗状態。ここからどうにかしないといけない矢先、またしてもタケゾーが妙な声を漏らす。
まさかコクピットに秘密兵器のボタンでも見つけたとか? だとしたら、どんな秘密兵器なんだろ?
「赤いボタンにドクロのマークがついてるんだが、これってもしかして……?」
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