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将軍艦隊編・破
ep327 タケゾー「俺の役目を見失ってはいけない」
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俺と宇神が二人だけで話し合っていると、船室にいたはずのフクロウさんもデッキに上がって来た。
口調自体はいつものように軽いが、その顔には妙な重みを感じる。
「あ、あの……隼の意識は戻ったんですか?」
「いや、まだだ。もうじきではあるらしいがな。それより、オレッチもちょいと話に混ぜてくんない? 人生の先輩として、アカッチャンには言っておきたいことがあるからさ」
俺が身じろぎするのにもお構いなく、フクロウさんもデッキの柵に手を突きながら話に割り込んでくる。
確かにこの人は星皇社長の元夫だから、人生としても妻帯者としても先輩ではある。
だが、俺に話とは何だろうか?
「アカッチャンはさ、いい男の条件って何だと思う?」
「いい男の条件? やっぱりモテるとか、どことなく深みがあるとかですかね……フクロウさんみたいに」
「お? そこでお世辞に走っちゃう? 一理あるけど、そいつは『大勢の女性にモテる男』の条件だ。オレッチが言いたいのは『一人の女を幸せにできる男』の条件ってことさ」
「一人の女を……?」
俺もまだ若いせいか、フクロウさんのような大人の話にはついていけない部分がある。
それでもフクロウさんは俺にも分かるように、話を紡いでくれる。
「己が無力であろうとも、傍で支えになろうとする。どんな苦しみも一緒に受け止め、負担してくれる。そういう男こそが、本当の意味でいい男ってもんさ。……アカッチャンみたいにな。オレッチにはできなかった道だ」
「フクロウさん……」
「弱音を吐きたくな気持ちも分かる。だが、それはここだけに留めておきな。今の話をソラッチャンが聞けば、逆に不安にさせちまう。アカッチャンはソラッチャンを不安にさせるような男じゃないだろ?」
その話を聞いて、俺にも少し意図が見えてきた。心のどこかで不安のあまり、俺自身が弱気になっていてはダメだ。
空色の魔女が世間の批判の的になった時だって、隼と一緒になって将軍艦隊から逃げた時だって、前を向いて純粋に目的を目指していたから成し遂げれたことだ。
俺に戦う力がないことなんてもう当然の話であり、それ以外の方法で隼を支えると心に決めたじゃないか。
一般人であろうとも、俺は街のヒーローである空色の魔女の夫。どんな苦境にあろうとも、挫けている場合じゃない。
「アカッチャンにはオレッチと同じ道は辿って欲しくなかったからさ。ちょいとお節介を焼かせてもらったよ」
「フクロウさん……。いえ、ありがとうございます」
フクロウさんがこの話を持ち出したのも、かつての自分自身と重ね合わせたのが理由にあるようだ。
星皇社長の傍にいることに耐えられず、逃げ出してしまったが故の後悔。先人のお節介というのも悪くない。
――俺だって後悔する結末は嫌だ。
「赤原君。君が傍にいるということは、空鳥さんにとってこれ以上にないほどの力となる。安っぽい物言いかもしれないけど、そういう絆の力は彼女のヒーローとしての力よりも今は頼りだ」
「宇神……。ああ、そうだな。俺は俺の方法で隼の力になる。あいつがこれからどう動くかは起きてからだが、俺はどこまでもついて行く」
「それに戦う力については……いや、まだ言う話じゃないか。気にしないでくれ」
「……? まあ、宇神に考えがあるならそれを信じるさ」
宇神もフクロウさんの意見に同調するように俺を励ましてくれる。
その最中でどこか気になることを言いかけていたが、こいつは考えなしに言葉を選ぶタイプじゃない。今は深く追求せず、信じることにしよう。
「み、みんな! 隼さん! 目を覚ました!」
「ショーちゃん! そうか……よかった……」
男三人での話が落ち着くと、ショーちゃんが駆け寄って状況を伝えてくれる。
どうやら、隼の意識が戻ったようだ。俺も安堵から少し体の力が抜ける。
「隼さん、みんなに話があるって。何か考えがあるみたい」
「病み上がりだってのに、あいつは本当に休むことを知らないな……」
「だけど、空鳥さんの意識が戻ったと聞くと、希望も見えてくるね」
「それもまた、ヒーローの人柄ってもんだろうよ。そして、それを一番支えられるのはアカッチャンといった家族さ」
だが、次なる脅威が迫りつつある。安どの溜息をしている暇もない。
隼も状況を理解して、何かしらの手立てを考えているようだ。
あいつは普段、策略やら何やらを考えるタイプじゃない。ヒーローとしての力が通用する戦況でもない。
それでも隼が動くと決めたならば、俺は喜んで傍にいて支えてみせる。
――この入り混じった思惑の果ての結末を、隼ならば選べると信じる。
口調自体はいつものように軽いが、その顔には妙な重みを感じる。
「あ、あの……隼の意識は戻ったんですか?」
「いや、まだだ。もうじきではあるらしいがな。それより、オレッチもちょいと話に混ぜてくんない? 人生の先輩として、アカッチャンには言っておきたいことがあるからさ」
俺が身じろぎするのにもお構いなく、フクロウさんもデッキの柵に手を突きながら話に割り込んでくる。
確かにこの人は星皇社長の元夫だから、人生としても妻帯者としても先輩ではある。
だが、俺に話とは何だろうか?
「アカッチャンはさ、いい男の条件って何だと思う?」
「いい男の条件? やっぱりモテるとか、どことなく深みがあるとかですかね……フクロウさんみたいに」
「お? そこでお世辞に走っちゃう? 一理あるけど、そいつは『大勢の女性にモテる男』の条件だ。オレッチが言いたいのは『一人の女を幸せにできる男』の条件ってことさ」
「一人の女を……?」
俺もまだ若いせいか、フクロウさんのような大人の話にはついていけない部分がある。
それでもフクロウさんは俺にも分かるように、話を紡いでくれる。
「己が無力であろうとも、傍で支えになろうとする。どんな苦しみも一緒に受け止め、負担してくれる。そういう男こそが、本当の意味でいい男ってもんさ。……アカッチャンみたいにな。オレッチにはできなかった道だ」
「フクロウさん……」
「弱音を吐きたくな気持ちも分かる。だが、それはここだけに留めておきな。今の話をソラッチャンが聞けば、逆に不安にさせちまう。アカッチャンはソラッチャンを不安にさせるような男じゃないだろ?」
その話を聞いて、俺にも少し意図が見えてきた。心のどこかで不安のあまり、俺自身が弱気になっていてはダメだ。
空色の魔女が世間の批判の的になった時だって、隼と一緒になって将軍艦隊から逃げた時だって、前を向いて純粋に目的を目指していたから成し遂げれたことだ。
俺に戦う力がないことなんてもう当然の話であり、それ以外の方法で隼を支えると心に決めたじゃないか。
一般人であろうとも、俺は街のヒーローである空色の魔女の夫。どんな苦境にあろうとも、挫けている場合じゃない。
「アカッチャンにはオレッチと同じ道は辿って欲しくなかったからさ。ちょいとお節介を焼かせてもらったよ」
「フクロウさん……。いえ、ありがとうございます」
フクロウさんがこの話を持ち出したのも、かつての自分自身と重ね合わせたのが理由にあるようだ。
星皇社長の傍にいることに耐えられず、逃げ出してしまったが故の後悔。先人のお節介というのも悪くない。
――俺だって後悔する結末は嫌だ。
「赤原君。君が傍にいるということは、空鳥さんにとってこれ以上にないほどの力となる。安っぽい物言いかもしれないけど、そういう絆の力は彼女のヒーローとしての力よりも今は頼りだ」
「宇神……。ああ、そうだな。俺は俺の方法で隼の力になる。あいつがこれからどう動くかは起きてからだが、俺はどこまでもついて行く」
「それに戦う力については……いや、まだ言う話じゃないか。気にしないでくれ」
「……? まあ、宇神に考えがあるならそれを信じるさ」
宇神もフクロウさんの意見に同調するように俺を励ましてくれる。
その最中でどこか気になることを言いかけていたが、こいつは考えなしに言葉を選ぶタイプじゃない。今は深く追求せず、信じることにしよう。
「み、みんな! 隼さん! 目を覚ました!」
「ショーちゃん! そうか……よかった……」
男三人での話が落ち着くと、ショーちゃんが駆け寄って状況を伝えてくれる。
どうやら、隼の意識が戻ったようだ。俺も安堵から少し体の力が抜ける。
「隼さん、みんなに話があるって。何か考えがあるみたい」
「病み上がりだってのに、あいつは本当に休むことを知らないな……」
「だけど、空鳥さんの意識が戻ったと聞くと、希望も見えてくるね」
「それもまた、ヒーローの人柄ってもんだろうよ。そして、それを一番支えられるのはアカッチャンといった家族さ」
だが、次なる脅威が迫りつつある。安どの溜息をしている暇もない。
隼も状況を理解して、何かしらの手立てを考えているようだ。
あいつは普段、策略やら何やらを考えるタイプじゃない。ヒーローとしての力が通用する戦況でもない。
それでも隼が動くと決めたならば、俺は喜んで傍にいて支えてみせる。
――この入り混じった思惑の果ての結末を、隼ならば選べると信じる。
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