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将軍艦隊編・破
ep326 タケゾー「争っている暇などない」
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あまりに頓珍漢なことばかり口にする戦士仮面と僧侶仮面に対し、宇神は腰の剣を抜きながら突き付けて言葉を紡ぐ。
この三人は政府公認ヒーローとしての仲間ではあったが、流石に宇神も堪忍袋の緒が切れたか。
目の周りを覆う仮面越しにも、その怒気が感じられる。
「僕達の目的は何だ? 空色の魔女を敵視することか?」
「も、目的なんて固厳首相に言われた通り、将軍艦隊の相手をすることだろ……? 空色の魔女なんかいたって、邪魔にしか――」
「邪魔どころか、彼女の存在は今この場で誰よりも重要だ。もうヒーローの枠を超えた戦いが――それこそ戦争が始まろうとしている中で、空色の魔女のように将軍艦隊と関わり続けた人間の存在は、それだけで大きな希望になる」
「ほ、本当にどうしちゃったのよ……? 空色の魔女は私達にとって、立場を脅かす邪魔者じゃなかったの……?」
「もうチンケな立場にこだわっている場合じゃない。ここで言い争うばかりでは、事態は何一つ好転しない」
宇神の声を聞けば、それが嘘偽りのない本心だと理解できる。それぐらい明瞭な語り口だ。
そこにかつて空色の魔女を妬んでいた姿などなく、何よりも現状を打開することを第一としてくれている。
同窓会で再会した時からは想像もできない変化だ。今の宇神はこの場の誰よりも頼もしく見える。
「もしもこれ以上騒ぎ立てるなら、君達二人がこの船を降りてくれ」
「くっ……!? そ、そんな勝手が許されてたまるか! お前の方こそ、空色の魔女達と一緒に船を――」
「ボクも勇者のお兄さんの言うことが的確だと思う。勇者のお兄さんを追い出そうとするなら、ボクがあなた達を追い出す」
「ま、また空色の魔女の息子が……!? こ、ここは私達政府公認ヒーローの船よ!? 勝手な真似をしないでよね!?」
そんな宇神の気持ちに押されて、ショーちゃんも味方するように動く。
俺だって同じ気持ちだ。仮にも父親である俺が息子にだけ事態を任せるわけにもいかない。
「……そっちの戦士と僧侶の二人は、どうやって将軍艦隊と戦うつもりだ? 何か策はあるのか?」
「そ、そんなもの、俺達政府公認ヒーローが敵の旗艦に乗り込んで、総大将であるフロスト博士を倒せば終わりだろ?」
「簡単に言うが、あまりに非現実的な話だな。フロスト博士だけに標的を絞るにしたって、接触自体を他の五艦将が許すはずないさ」
俺も再度現状の厳しさを二人に説明し、どうにか納得を促してみる。
打開策があるわけではないが、このまま二人の考えの通りに突撃したって、無駄死にするのが関の山だ。
この二人は隼のように『自らが立ち上がることで人々を守る』ために動いているわけじゃない。あくまで『自分達のメンツを守る』ためで動いている。
いけ好かない考え方だが、見殺しにはできない。隼も意識があれば同じように説得したはずだ。
「オレッチの算段でも、こっちに勝ち目があるとは思えないね。さっきの艦砲射撃を見てなかったのかい? あれにしたって、将軍艦隊にとっては挨拶代わりにしかなんないのよね」
「あ、あなたが何を偉そうに言うのよ!? どこの誰とも知れない馬の骨なのに!?」
「馬の骨呼ばわりは否定しないさ。ただ、オレッチは『将軍艦隊末端パイロット』って馬の骨でね。敵さんの情勢なら、誰よりも理解してる」
俺達の言い争いを聞き、フクロウさんも味方しながら口を挟んでくる。
実際に将軍艦隊に所属する人間の言葉なら信用度は高い。どれだけ『自分達ならできる』なんて根拠のない自信を述べられても、最早傲慢以外の何物でもない。
「く、くそ!? 人様の船に乗り込んできて、言いたい放題言いやがって! 今はここで好きにしてろ! いずれ将軍艦隊との戦いが来た時、助けてやらないからな!」
「まったく! 揃いも揃って素人が好き放題に言っちゃって! 固厳首相と連絡が取れれば、すぐにでも摘まみだすのに……!」
度重なる俺達からの問答に嫌気がさしたのか、戦士仮面と僧侶仮面は文句を言いながら別の部屋へ下がってしまった。
一応はこの船の指揮官ポジションのはずなのに、どこか投げやりで無責任な態度だ。
『助けてやらない』とか『固厳首相と連絡がつけば』とか、失笑を通り越して呆れ果ててしまう。
「本当にあんな調子で、将軍艦隊と真っ向から戦うつもりなのか……?」
「僕も変わるきっかけがなければ、あの二人と同じだったろうけどね。……それより、二人で話をしないかい? 僕も今後のことについて、赤原君とは腹を割って話したい」
「俺と二人でか?」
「ああ。空鳥さんのことは気になるだろうけど、今のうちに積もった話を消化したいからね」
投げやりな二人とは違い、宇神は俺にも積極的に話を持ちかけてくれる。
本人も言ってるが、こいつは隼とのわだかまりが解けたことでかなり変わった。俺としても、こいつとは話をしておきたい。
「ショーちゃん。悪いんだが、隼の傍にいてくれるか? フクロウさんも何かあったら、俺達の方にお願いします」
「うん。ボク、隼さん見てる」
「男同士で語りたいこともあるっしょ。気にせず行ってきな」
ショーちゃんとフクロウさんに了承をとり、俺は宇神に連れられて甲板へと出る。
隼のことも気になるが、あの二人がいてくれれば安心だ。今は俺にできることをやっておこう。
■
「さっき息子さんと一緒に入って来た壮年の男性……フクロウさんだったな? 彼の言うことは事実なのかい?」
「少なくとも『将軍艦隊に所属してる』って話は事実だ。あの人も色々と事情はあるが、今は俺達の味方と思って問題ない」
「となると、こちらの戦力的不利も事実ということか。分かり切っていたこととはいえ、こんな普通の船で乗り込んでもすぐに返り討ちか……」
俺と宇神はデッキで二人きりとなり、夕暮れを眺めながら話を始める。
宇神は不満を吐露してくるが、それはさっきの二人の態度も含めれば当然か。
俺達の乗っている船にも一応程度の機銃といった装備はある。だが、将軍艦隊からしてみればただの客船と同じといったところか。
しかも敵は五隻。勝てる要素などどこにもない。
「そういや、固厳首相とは連絡が取れないのか? さっきもそんな話が聞こえたし、この作戦も固厳首相が提案したものだろ?」
「本当に連絡が取れないんだよね……。固厳首相だって、いくらなんでも戦力差は理解しているはずさ。それでもこうして僕達を向かわせるあたり『国のヒーローは立派に戦った!』なんて宣伝文句でも作りたいのかもね。将軍艦隊同様、僕達も固厳首相の捨て駒か……」
「……お前からしてみれば、辛い立場だろうな」
二人でデッキの柵に手を突きながら語り合うも、暗い気持ちが抜けきらない。
固厳首相も完全に宇神達を捨て駒とする算段という考えには同意だ。いくらなんでも無謀が過ぎる。
「この船は明日の朝、将軍艦隊が潜伏する海域へと向かう。赤原君達は空鳥さんの目が覚め次第、船を降りて安全な場所に避難した方がいいかもね」
「そんな見殺しにするような真似、できるわけないだろ? 隼だって意識が戻れば、無理矢理にでもついていくさ」
「……だろうね。僕にせめてできることがあるとすれば、君達を守ることに死力を尽くすぐらいか。これでも一般人よりは戦う力はある」
今後については隼の意思を聞いてからだが、俺達もこの船に同乗して将軍艦隊のもとへ向かうことになるだろう。
こんなどうしようもない戦況でも、俺は空色の魔女というヒーローに期待したくなる。それぐらい、隼の存在は確かな希望となっている。
――ただ、同時に己の無力さに嫌気がさしてしまう。
「……こんなことは言う話じゃないだろうが、俺は宇神やショーちゃんのことが羨ましい」
「羨ましい……ってのは?」
「俺には何一つとして戦う力がない。どれだけ傍にいてやっても、俺じゃ隼の力にはなれない。むしろ、いるだけで足手まといさ……」
今こうした危機的状況で、俺にも戦える力が欲しくなる。そんな悪魔が囁けば、今ならあっさり耳を傾けそうだ。
隼がまだこれから戦うことは想像できても、その力になることができない。今回はバイクで運転サポートなんてできそうにない。
どうしようもないと頭で分かっていても、心で納得することができなくて――
「アカッチャンがソラッチャンの力になれないだって? そいつはちょいと、誤解かつ失礼な物言いってもんじゃない?」
「フ、フクロウさん……?」
この三人は政府公認ヒーローとしての仲間ではあったが、流石に宇神も堪忍袋の緒が切れたか。
目の周りを覆う仮面越しにも、その怒気が感じられる。
「僕達の目的は何だ? 空色の魔女を敵視することか?」
「も、目的なんて固厳首相に言われた通り、将軍艦隊の相手をすることだろ……? 空色の魔女なんかいたって、邪魔にしか――」
「邪魔どころか、彼女の存在は今この場で誰よりも重要だ。もうヒーローの枠を超えた戦いが――それこそ戦争が始まろうとしている中で、空色の魔女のように将軍艦隊と関わり続けた人間の存在は、それだけで大きな希望になる」
「ほ、本当にどうしちゃったのよ……? 空色の魔女は私達にとって、立場を脅かす邪魔者じゃなかったの……?」
「もうチンケな立場にこだわっている場合じゃない。ここで言い争うばかりでは、事態は何一つ好転しない」
宇神の声を聞けば、それが嘘偽りのない本心だと理解できる。それぐらい明瞭な語り口だ。
そこにかつて空色の魔女を妬んでいた姿などなく、何よりも現状を打開することを第一としてくれている。
同窓会で再会した時からは想像もできない変化だ。今の宇神はこの場の誰よりも頼もしく見える。
「もしもこれ以上騒ぎ立てるなら、君達二人がこの船を降りてくれ」
「くっ……!? そ、そんな勝手が許されてたまるか! お前の方こそ、空色の魔女達と一緒に船を――」
「ボクも勇者のお兄さんの言うことが的確だと思う。勇者のお兄さんを追い出そうとするなら、ボクがあなた達を追い出す」
「ま、また空色の魔女の息子が……!? こ、ここは私達政府公認ヒーローの船よ!? 勝手な真似をしないでよね!?」
そんな宇神の気持ちに押されて、ショーちゃんも味方するように動く。
俺だって同じ気持ちだ。仮にも父親である俺が息子にだけ事態を任せるわけにもいかない。
「……そっちの戦士と僧侶の二人は、どうやって将軍艦隊と戦うつもりだ? 何か策はあるのか?」
「そ、そんなもの、俺達政府公認ヒーローが敵の旗艦に乗り込んで、総大将であるフロスト博士を倒せば終わりだろ?」
「簡単に言うが、あまりに非現実的な話だな。フロスト博士だけに標的を絞るにしたって、接触自体を他の五艦将が許すはずないさ」
俺も再度現状の厳しさを二人に説明し、どうにか納得を促してみる。
打開策があるわけではないが、このまま二人の考えの通りに突撃したって、無駄死にするのが関の山だ。
この二人は隼のように『自らが立ち上がることで人々を守る』ために動いているわけじゃない。あくまで『自分達のメンツを守る』ためで動いている。
いけ好かない考え方だが、見殺しにはできない。隼も意識があれば同じように説得したはずだ。
「オレッチの算段でも、こっちに勝ち目があるとは思えないね。さっきの艦砲射撃を見てなかったのかい? あれにしたって、将軍艦隊にとっては挨拶代わりにしかなんないのよね」
「あ、あなたが何を偉そうに言うのよ!? どこの誰とも知れない馬の骨なのに!?」
「馬の骨呼ばわりは否定しないさ。ただ、オレッチは『将軍艦隊末端パイロット』って馬の骨でね。敵さんの情勢なら、誰よりも理解してる」
俺達の言い争いを聞き、フクロウさんも味方しながら口を挟んでくる。
実際に将軍艦隊に所属する人間の言葉なら信用度は高い。どれだけ『自分達ならできる』なんて根拠のない自信を述べられても、最早傲慢以外の何物でもない。
「く、くそ!? 人様の船に乗り込んできて、言いたい放題言いやがって! 今はここで好きにしてろ! いずれ将軍艦隊との戦いが来た時、助けてやらないからな!」
「まったく! 揃いも揃って素人が好き放題に言っちゃって! 固厳首相と連絡が取れれば、すぐにでも摘まみだすのに……!」
度重なる俺達からの問答に嫌気がさしたのか、戦士仮面と僧侶仮面は文句を言いながら別の部屋へ下がってしまった。
一応はこの船の指揮官ポジションのはずなのに、どこか投げやりで無責任な態度だ。
『助けてやらない』とか『固厳首相と連絡がつけば』とか、失笑を通り越して呆れ果ててしまう。
「本当にあんな調子で、将軍艦隊と真っ向から戦うつもりなのか……?」
「僕も変わるきっかけがなければ、あの二人と同じだったろうけどね。……それより、二人で話をしないかい? 僕も今後のことについて、赤原君とは腹を割って話したい」
「俺と二人でか?」
「ああ。空鳥さんのことは気になるだろうけど、今のうちに積もった話を消化したいからね」
投げやりな二人とは違い、宇神は俺にも積極的に話を持ちかけてくれる。
本人も言ってるが、こいつは隼とのわだかまりが解けたことでかなり変わった。俺としても、こいつとは話をしておきたい。
「ショーちゃん。悪いんだが、隼の傍にいてくれるか? フクロウさんも何かあったら、俺達の方にお願いします」
「うん。ボク、隼さん見てる」
「男同士で語りたいこともあるっしょ。気にせず行ってきな」
ショーちゃんとフクロウさんに了承をとり、俺は宇神に連れられて甲板へと出る。
隼のことも気になるが、あの二人がいてくれれば安心だ。今は俺にできることをやっておこう。
■
「さっき息子さんと一緒に入って来た壮年の男性……フクロウさんだったな? 彼の言うことは事実なのかい?」
「少なくとも『将軍艦隊に所属してる』って話は事実だ。あの人も色々と事情はあるが、今は俺達の味方と思って問題ない」
「となると、こちらの戦力的不利も事実ということか。分かり切っていたこととはいえ、こんな普通の船で乗り込んでもすぐに返り討ちか……」
俺と宇神はデッキで二人きりとなり、夕暮れを眺めながら話を始める。
宇神は不満を吐露してくるが、それはさっきの二人の態度も含めれば当然か。
俺達の乗っている船にも一応程度の機銃といった装備はある。だが、将軍艦隊からしてみればただの客船と同じといったところか。
しかも敵は五隻。勝てる要素などどこにもない。
「そういや、固厳首相とは連絡が取れないのか? さっきもそんな話が聞こえたし、この作戦も固厳首相が提案したものだろ?」
「本当に連絡が取れないんだよね……。固厳首相だって、いくらなんでも戦力差は理解しているはずさ。それでもこうして僕達を向かわせるあたり『国のヒーローは立派に戦った!』なんて宣伝文句でも作りたいのかもね。将軍艦隊同様、僕達も固厳首相の捨て駒か……」
「……お前からしてみれば、辛い立場だろうな」
二人でデッキの柵に手を突きながら語り合うも、暗い気持ちが抜けきらない。
固厳首相も完全に宇神達を捨て駒とする算段という考えには同意だ。いくらなんでも無謀が過ぎる。
「この船は明日の朝、将軍艦隊が潜伏する海域へと向かう。赤原君達は空鳥さんの目が覚め次第、船を降りて安全な場所に避難した方がいいかもね」
「そんな見殺しにするような真似、できるわけないだろ? 隼だって意識が戻れば、無理矢理にでもついていくさ」
「……だろうね。僕にせめてできることがあるとすれば、君達を守ることに死力を尽くすぐらいか。これでも一般人よりは戦う力はある」
今後については隼の意思を聞いてからだが、俺達もこの船に同乗して将軍艦隊のもとへ向かうことになるだろう。
こんなどうしようもない戦況でも、俺は空色の魔女というヒーローに期待したくなる。それぐらい、隼の存在は確かな希望となっている。
――ただ、同時に己の無力さに嫌気がさしてしまう。
「……こんなことは言う話じゃないだろうが、俺は宇神やショーちゃんのことが羨ましい」
「羨ましい……ってのは?」
「俺には何一つとして戦う力がない。どれだけ傍にいてやっても、俺じゃ隼の力にはなれない。むしろ、いるだけで足手まといさ……」
今こうした危機的状況で、俺にも戦える力が欲しくなる。そんな悪魔が囁けば、今ならあっさり耳を傾けそうだ。
隼がまだこれから戦うことは想像できても、その力になることができない。今回はバイクで運転サポートなんてできそうにない。
どうしようもないと頭で分かっていても、心で納得することができなくて――
「アカッチャンがソラッチャンの力になれないだって? そいつはちょいと、誤解かつ失礼な物言いってもんじゃない?」
「フ、フクロウさん……?」
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