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新世代ヒーロー編
ep250 営みしないと息子が帰ってこない!?
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「――はい。すみません、玉杉さん。――そうですか。ショーちゃんは帰りたくないと――」
まさかまさかと思ったけど、ショーちゃんはアタシとタケゾーが夫婦の営みをするために、自ら一度我が家から離れ、玉杉さんの店にお邪魔しているようだ。いや、実際には余計なお世話なんだけど。
置手紙から察したタケゾーがすぐに玉杉さんへ連絡を取るも、ショーちゃんは頑なに帰ってこようとはしない。
「――え? 『いい機会だから、ここらでヤっとけ。坊主の面倒は見てやる』ですって? ちょ、ちょっと待ってくださいよ!? 玉杉さん!? 玉杉さぁぁあん!?」
しかもしかも、ショーちゃんがお邪魔している玉杉さんまで事情を理解してしまい、挙句の果てにはショーちゃんの意見に同調する始末。
これはもう『〇ックスしないと出られない部屋』ならぬ『〇ックスしないと帰ってこない息子』とでも言うべきか。本当にアタシとタケゾーが〇ックスしないと、この事態は収束しそうにない。
玉杉さんもそのことだけ言い残し、タケゾーとの電話を切ってしまった。
「……どうする? 隼?」
「ど、どうするも何も……するの?」
「いや、まあ……隼が良ければだけど?」
「ア、アタシもまあ……タケゾーが良ければだけど?」
そんなこんなで割と意味不明な崖っぷちに立たされたアタシとタケゾーだけど、ここまで来てもお互いに一歩先に進めない。
双方の様子を伺い合い、どうぞどうぞと譲り合うせいで、実際の話に進展はない。
――正直、ここまで来たらタケゾーにアタシを押し倒すぐらいの気概を見せて欲しい。
だって、アタシから誘うのが何か恥ずかしいもん。
「……お、俺はとりあえず、自分の部屋に戻ってるから! 何かあったら呼んでくれ!」
「あっ! タケゾー!? それ、絶対に逃げてるよね!?」
とはいえ、タケゾーにそんなことができるはずもなし。
根性なしとも言えるだろうけど、タケゾーとしてはアタシに乱暴して傷つけないのが一番の理由なのは分かる。そういう優しすぎる奴だし。
でも自室の閉じこもられたんじゃ、アタシも押し入る勇気がない。こういう時は思い切って、男を見せて欲しいなとも思う。
「やっぱ、ショーちゃん達には虚偽の報告をしておく? いや、それはここまで気遣ってくれたショーちゃんに申し訳ないというか……」
かと言って、ここまで来るともうアタシだって引き下がりたくない。異様にムキにもなってしまう。
アタシも嘘はつきたくない。こうなったら、何が何でもタケゾーと合体してやる。
――いや、何て言うかさ。それぐらいのノリと気分と勢いがないと、この関係やら状況やらが進展する気がないもん。
「……とはいえ、はてさてどうやってタケゾーを納得させたもんかねぇ? ここは一つ、タケゾーを悩殺できればいいんだけど」
タケゾーが動かない以上、アタシの方からアクションを仕掛けるしかない。そう心の中で決めはしても、アタシもアタシで大概ヘタレなのは自覚してる。
正直、夫婦の営みってことは、これから裸でアレコレするってことだよね? そこがアタシにはどうしてもネックだ。
両親が亡くなった時にアタシも負ってしまった火傷跡。なんだかんだで、あれを見られるのはタケゾー相手でも辛い。
いっそのこと着衣〇ックスなら見られないと思うんだけど、それだとタケゾーを誘惑して話を持っていくのが難しい。
「何かこう……着ててもエロい感じで魅力的な布面積の多い服があれば――あっ」
そう思って少しクローゼットを漁っていると、アタシはある衣装を見つけてしまった。
この衣装ならば、タケゾーを誘惑できるかもしれない。だけど、これは少し恥ずかしい。
「……あっ、こっちの衣装も残ってたんだ。……これも使えるかな?」
そんな時にある作戦を思いつくが、これはこれでかなり酷い作戦だとは思う。ぶっちゃけ、今のアタシにまともな思考回路などない。
だけど、ヤると決めた以上はヤる。アタシはこの関門を乗り越えて、大人の階段を上る。
――もうすでに子供もいる身分だけどさ。
■
「タ、タケゾー……? 部屋、入っていいかな?」
「あ、ああ、隼か。か、構わないぞ」
そうこう準備を整えると、アタシはタケゾーの部屋をノックする。
緊張で声が震えるけど、それは中で待っているタケゾーとて同じこと。それでも中に入れてくれるのはありがたい。
――よし、勇気を見せるんだ。アタシはヒーロー、空色の魔女。みんなの勇気の象徴じゃないか。
その勇気をこんな場面で使う時ではないとも思うけど、アタシとしてはヴィランとの戦いよりも緊張ものだ。
それでもドアノブに力を込めて、その扉を開ける――
「タ、タケゾー……! このアタシの姿に萌えろ!!」
「じゅ、隼!? その格好って……メイド服!?」
――アタシが諸々の羞恥を隠すために用意したのは、以前にベストメイディストショーで着ていたロングスカートのメイド服だ。
あの時は大凍亜連合の騒動で色々とお流れになっちゃって、結局レンタル品だったこのメイド服もアタシ達に譲ってもらえた。
扱いに困ってクローゼットに眠らせてたけど、今こそまさに再誕の時。
――メイドで魔女な奥様による、旦那様悩殺作戦だ。
「さあ、萌えろ! タケゾー! お願いだから萌えて! でないと、アタシ一人が痛々しい思いをすることになる……!」
「お前、テンパり過ぎて行動がおかしくなってるぞ!? なんでその……夫婦の営みでメイド服着用になるんだ!?」
「アタシも気が付いたらこの結論に辿り着いてた……! 自分でも何やってるかよく分かんないし、何言ってるか分かんないけど……とにかく萌えて!」
「そ、そりゃあ、隼のメイド姿は魅力的だけど、完全に勢いでやってるだろ……!? 逆に恥ずかしくないか……!?」
タケゾーにもツッコまれちゃうけど、アタシだって自分の方向性がおかしな方向に向かってるのは理解してる。
だが、理解はできても停止はできない。色々と話が進みすぎたせいで、アタシの中のストッパーまで壊れてしまった。
このままアタシだけメイド服でベッドインも恥ずかしくはあるけど、それを上書きする手段だって用意してある。
――要は『アタシだけ』だから、色々と恥ずかしくなるわけだ。
「アタシだけじゃなく、タケゾーも着るんだ! これで……お互い様のおあいこだぁぁああ!!」
「な……なんで俺の着てたメイド服まで用意してるんだよぉぉおお!?」
まさかまさかと思ったけど、ショーちゃんはアタシとタケゾーが夫婦の営みをするために、自ら一度我が家から離れ、玉杉さんの店にお邪魔しているようだ。いや、実際には余計なお世話なんだけど。
置手紙から察したタケゾーがすぐに玉杉さんへ連絡を取るも、ショーちゃんは頑なに帰ってこようとはしない。
「――え? 『いい機会だから、ここらでヤっとけ。坊主の面倒は見てやる』ですって? ちょ、ちょっと待ってくださいよ!? 玉杉さん!? 玉杉さぁぁあん!?」
しかもしかも、ショーちゃんがお邪魔している玉杉さんまで事情を理解してしまい、挙句の果てにはショーちゃんの意見に同調する始末。
これはもう『〇ックスしないと出られない部屋』ならぬ『〇ックスしないと帰ってこない息子』とでも言うべきか。本当にアタシとタケゾーが〇ックスしないと、この事態は収束しそうにない。
玉杉さんもそのことだけ言い残し、タケゾーとの電話を切ってしまった。
「……どうする? 隼?」
「ど、どうするも何も……するの?」
「いや、まあ……隼が良ければだけど?」
「ア、アタシもまあ……タケゾーが良ければだけど?」
そんなこんなで割と意味不明な崖っぷちに立たされたアタシとタケゾーだけど、ここまで来てもお互いに一歩先に進めない。
双方の様子を伺い合い、どうぞどうぞと譲り合うせいで、実際の話に進展はない。
――正直、ここまで来たらタケゾーにアタシを押し倒すぐらいの気概を見せて欲しい。
だって、アタシから誘うのが何か恥ずかしいもん。
「……お、俺はとりあえず、自分の部屋に戻ってるから! 何かあったら呼んでくれ!」
「あっ! タケゾー!? それ、絶対に逃げてるよね!?」
とはいえ、タケゾーにそんなことができるはずもなし。
根性なしとも言えるだろうけど、タケゾーとしてはアタシに乱暴して傷つけないのが一番の理由なのは分かる。そういう優しすぎる奴だし。
でも自室の閉じこもられたんじゃ、アタシも押し入る勇気がない。こういう時は思い切って、男を見せて欲しいなとも思う。
「やっぱ、ショーちゃん達には虚偽の報告をしておく? いや、それはここまで気遣ってくれたショーちゃんに申し訳ないというか……」
かと言って、ここまで来るともうアタシだって引き下がりたくない。異様にムキにもなってしまう。
アタシも嘘はつきたくない。こうなったら、何が何でもタケゾーと合体してやる。
――いや、何て言うかさ。それぐらいのノリと気分と勢いがないと、この関係やら状況やらが進展する気がないもん。
「……とはいえ、はてさてどうやってタケゾーを納得させたもんかねぇ? ここは一つ、タケゾーを悩殺できればいいんだけど」
タケゾーが動かない以上、アタシの方からアクションを仕掛けるしかない。そう心の中で決めはしても、アタシもアタシで大概ヘタレなのは自覚してる。
正直、夫婦の営みってことは、これから裸でアレコレするってことだよね? そこがアタシにはどうしてもネックだ。
両親が亡くなった時にアタシも負ってしまった火傷跡。なんだかんだで、あれを見られるのはタケゾー相手でも辛い。
いっそのこと着衣〇ックスなら見られないと思うんだけど、それだとタケゾーを誘惑して話を持っていくのが難しい。
「何かこう……着ててもエロい感じで魅力的な布面積の多い服があれば――あっ」
そう思って少しクローゼットを漁っていると、アタシはある衣装を見つけてしまった。
この衣装ならば、タケゾーを誘惑できるかもしれない。だけど、これは少し恥ずかしい。
「……あっ、こっちの衣装も残ってたんだ。……これも使えるかな?」
そんな時にある作戦を思いつくが、これはこれでかなり酷い作戦だとは思う。ぶっちゃけ、今のアタシにまともな思考回路などない。
だけど、ヤると決めた以上はヤる。アタシはこの関門を乗り越えて、大人の階段を上る。
――もうすでに子供もいる身分だけどさ。
■
「タ、タケゾー……? 部屋、入っていいかな?」
「あ、ああ、隼か。か、構わないぞ」
そうこう準備を整えると、アタシはタケゾーの部屋をノックする。
緊張で声が震えるけど、それは中で待っているタケゾーとて同じこと。それでも中に入れてくれるのはありがたい。
――よし、勇気を見せるんだ。アタシはヒーロー、空色の魔女。みんなの勇気の象徴じゃないか。
その勇気をこんな場面で使う時ではないとも思うけど、アタシとしてはヴィランとの戦いよりも緊張ものだ。
それでもドアノブに力を込めて、その扉を開ける――
「タ、タケゾー……! このアタシの姿に萌えろ!!」
「じゅ、隼!? その格好って……メイド服!?」
――アタシが諸々の羞恥を隠すために用意したのは、以前にベストメイディストショーで着ていたロングスカートのメイド服だ。
あの時は大凍亜連合の騒動で色々とお流れになっちゃって、結局レンタル品だったこのメイド服もアタシ達に譲ってもらえた。
扱いに困ってクローゼットに眠らせてたけど、今こそまさに再誕の時。
――メイドで魔女な奥様による、旦那様悩殺作戦だ。
「さあ、萌えろ! タケゾー! お願いだから萌えて! でないと、アタシ一人が痛々しい思いをすることになる……!」
「お前、テンパり過ぎて行動がおかしくなってるぞ!? なんでその……夫婦の営みでメイド服着用になるんだ!?」
「アタシも気が付いたらこの結論に辿り着いてた……! 自分でも何やってるかよく分かんないし、何言ってるか分かんないけど……とにかく萌えて!」
「そ、そりゃあ、隼のメイド姿は魅力的だけど、完全に勢いでやってるだろ……!? 逆に恥ずかしくないか……!?」
タケゾーにもツッコまれちゃうけど、アタシだって自分の方向性がおかしな方向に向かってるのは理解してる。
だが、理解はできても停止はできない。色々と話が進みすぎたせいで、アタシの中のストッパーまで壊れてしまった。
このままアタシだけメイド服でベッドインも恥ずかしくはあるけど、それを上書きする手段だって用意してある。
――要は『アタシだけ』だから、色々と恥ずかしくなるわけだ。
「アタシだけじゃなく、タケゾーも着るんだ! これで……お互い様のおあいこだぁぁああ!!」
「な……なんで俺の着てたメイド服まで用意してるんだよぉぉおお!?」
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