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怪鳥との決闘編
ep71 恋人とのドライブを楽しもう!
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「おおお! こいつは中々の馬力だね! 風も気持ちがいいし、アタシでも快適に乗れるや!」
「これなら隼でも乗れると思ってな。俺も色々と段取りを組んでたんだ」
アタシは現在、タケゾープレゼンツの帽子ではなく、ヘルメットを頭に被っている。
座っている場所は大型バイクのサイドカー。ドライバーはタケゾーだ。
タケゾーが大型バイクの免許を取ったとは聞いてたけど、まさかこんなものを用意してたとはね。
見た感じ、ジャンクパーツの寄せ集めで作られた中古バイクかな? それでも、タケゾーの給料からしてみれば結構な出費のはずだ。
「ねえ、タケゾー。このバイク、結構高かったんじゃない?」
「まあ、それなりにな。でも、俺だって隼とこうやってドライブしながらどこかに出掛けたかったんだ。金のことは気にするな」
「……本当に色男だねぇ。アタシもちょいとばっかし、そのご厚意に甘えさせていただきますか!」
このバイクならば、車のような閉鎖感もない。バイクの重心移動がそのまま体に伝わってくるが、アタシにはそれがかえって心地よい。
向かってくる風の感覚もあわせて、アタシが空色の魔女として普段から空を飛んでいる感覚に近い。
タケゾーが気遣ってくれた通り、このバイクでならばアタシもタケゾーと一緒にドライブができる。
金額について多くは語らないタケゾーだが、こいつはこうなると『気にするな』の一点張りで頑固になる。
アタシもこれ以上は余計なことは言わず、素直にタケゾーの気持ちを受け取っておこう。
――また今度、何かお礼でもしないとね。
「それにしても、やっぱこういうバイクは目立つね」
「公道ではあんまり見ないタイプだからな。周囲の普通の乗用車から見れば、珍しく見え――うおおぉ!?」
「ひゃひぃい!?」
そんなこんなでタケゾーとの快適なドライブを楽しんでいると、こちらのバイクの横を物凄いスピードでスポーツカーが通り過ぎて行った。
かなり無理矢理な追い越しを仕掛けてきたかと思えば、今度はこちらの前方に出て蛇行しながらハザードランプを点灯させている。
――どう見ても煽ってる。完全に煽ってる。
サイドカー付きの大型バイクが珍しくて、ヤンチャなドライバーが煽ってやがる。
「……タケゾー。ギアアップで」
「馬鹿言うな。あんなのはほっとけ。こっちは交通規則に則り、安全運転を心がけるぞ」
「……そうだね。ごめん。アタシもムキになっちゃった」
思わずタケゾーにドライブレースを願ってしまうが、こんなことで気を立てていたらキリがない。
アタシも少し落ち着こう。タケゾーだって、まだこのバイクの運転には慣れていないだろうし、危険な運転をするメリットがない。
アタシ達は今デート中で、これから星皇カンパニーに向かっている最中だ。
道路も一時的に畑の間に入り、人も車も少なくなってきた。
ここはあんなアオリカートのことなんて忘れて、景色を堪能することを優先して――
キキィィイイ!
「うおおぉ!? 前のスポーツカー、急に減速してきたぞ!?」
「わわっ!? あ、危ない!?」
――そう思って見過ごそうと思っていたら、アオリカートの方がこちらのバイクに仕掛けてきた。
急にこちらのバイクの前方スレスレまで減速し、タケゾーも思わずハンドルをとられてしまう。
しかも最悪なことに、その反動でバイクが畑の方に横転しそうになる――
「変身! デバイスロッド、アウトプット!」
――だが、こういう時はアタシの出番だ。
即座にヘルメットを外して空色の魔女へと変身し、ガジェットからデバイスロッドも出力して、そのまま空中で腰掛ける。
こういう即座な対応にもだいぶ慣れてきた。アタシはタケゾーが乗ったままのバイクを並走して支え、なんとか横転を回避して道路へと戻した。
「た……助かった……。一時は本当にどうなることかと思ったが、ありがとうな……隼」
「アタシもヒヤッとしたよ。タケゾーが無事で本当に良かった……」
空色の魔女としての力を使えば、これぐらいの動きは造作もない。
普通なら畑に転落して大事故だったけど、こういう場面を救ってこその正義のヒーロー、空色の魔女ってもんよ。
――ただ、こうなった元凶に対する怒りについては、アタシも流石に抑えが利かない。
「ねえ、タケゾー。ここからは星皇カンパニーまで、別行動にしよっか」
「……お前、さっきのスポーツカーに復讐するつもりだろ?」
「いえいえ、復讐なんてとんでもない。ほんのちょっと、ほんのーり、ちょろーっと、お仕置きするだけさ」
「……今回は流石に俺も止める気はない。だが、加減はしてこいよ?」
「ラジャー」
タケゾーからもオッケーサインをもらい、アタシは一人でロッドに腰かけながら、空色の魔女として出撃する。
まあ、個人的にあのアオリカートには苛立ってはいるよ? でもさ、やっぱりああいう危険運転は見逃せないでしょ?
それに、こっちはあわや大事故だったんだ。
下手をすれば、買ったばかりのタケゾーバイクもお釈迦だったのよ? そんなの、タケゾーが可哀そうすぎるでしょ?
――もうぶっちゃけると、個人的な怨恨であのアオリカートをお仕置きしないと気が済まない。
「待てぇええ!! クソアオリカートォォオオ!!」
というわけで、アタシは怒りに燃える(一応正義のヒーロー)空色の魔女として、そのまま走り去っていったスポーツカーを追う。
道も一直線だったし、煽り運転もやめたのかすぐに追いつけた。それでも、止まってアタシ達の無事を確認する様子はない。
――いや、ここはアタシも落ち着こう。もしかすると、あのアオリカートのドライバーも罪悪感を感じているかもしれない。
もしそうだとしたら、お仕置きの内容も緩いものにしておこう。
これでも一応、世間では正義のヒーローで通ってる。私怨で匙加減を変えてしまうのは違う気がする。
そのためにも、まずはアオリカートの真上から、運転手の様子を軽く伺ってみると――
「さっきのカップルのバイク、畑に落ちやがったかな? だとしたらいい気味だぜ! リア充がザマァみろってんだ! ギャハハハ!」
「最高レベルお仕置き確定ぃぃいい!!」
ドッガァァアンッッ!!
「ぎゃぁああ!? 俺の愛車のボンネットに空色の魔女がぁああ!?」
――結論、ダメでした。反省の色がありません。
それを確認したアタシはアオリカートの上で一度大きく飛び上がり、急降下からのメテオキックで車のボンネットを貫いてしまった。
うん、まあ、器物破損だとは思うよ? でもさ、流石にこれは許せなくない?
人に危害を加えておいてこの態度。こんな奴を野放しにしておけば、また煽り運転で被害が出てしまう。
そもそも、こっちを煽ってた理由がただのモテない男の妬みって、当事者としてはたまったものじゃないのよ。
ああいう人間は一度痛い目を見て、反省しないとダメだよね。
――とりあえず、こんな感じでアタシ自身を納得させておこう。
「まあ、もうアオリカートのことは記憶の外にしとこっと。アタシもタケゾーに追いついて、あそこに行かないとね」
ともあれ、アタシにだって本来の目的である。踏み潰したアオリカートを尻目に、前方に見える巨大なビルへと向かって飛んでいく。
――世界有数の技術開発系大企業、星皇カンパニーの本社ビルだ。
「これなら隼でも乗れると思ってな。俺も色々と段取りを組んでたんだ」
アタシは現在、タケゾープレゼンツの帽子ではなく、ヘルメットを頭に被っている。
座っている場所は大型バイクのサイドカー。ドライバーはタケゾーだ。
タケゾーが大型バイクの免許を取ったとは聞いてたけど、まさかこんなものを用意してたとはね。
見た感じ、ジャンクパーツの寄せ集めで作られた中古バイクかな? それでも、タケゾーの給料からしてみれば結構な出費のはずだ。
「ねえ、タケゾー。このバイク、結構高かったんじゃない?」
「まあ、それなりにな。でも、俺だって隼とこうやってドライブしながらどこかに出掛けたかったんだ。金のことは気にするな」
「……本当に色男だねぇ。アタシもちょいとばっかし、そのご厚意に甘えさせていただきますか!」
このバイクならば、車のような閉鎖感もない。バイクの重心移動がそのまま体に伝わってくるが、アタシにはそれがかえって心地よい。
向かってくる風の感覚もあわせて、アタシが空色の魔女として普段から空を飛んでいる感覚に近い。
タケゾーが気遣ってくれた通り、このバイクでならばアタシもタケゾーと一緒にドライブができる。
金額について多くは語らないタケゾーだが、こいつはこうなると『気にするな』の一点張りで頑固になる。
アタシもこれ以上は余計なことは言わず、素直にタケゾーの気持ちを受け取っておこう。
――また今度、何かお礼でもしないとね。
「それにしても、やっぱこういうバイクは目立つね」
「公道ではあんまり見ないタイプだからな。周囲の普通の乗用車から見れば、珍しく見え――うおおぉ!?」
「ひゃひぃい!?」
そんなこんなでタケゾーとの快適なドライブを楽しんでいると、こちらのバイクの横を物凄いスピードでスポーツカーが通り過ぎて行った。
かなり無理矢理な追い越しを仕掛けてきたかと思えば、今度はこちらの前方に出て蛇行しながらハザードランプを点灯させている。
――どう見ても煽ってる。完全に煽ってる。
サイドカー付きの大型バイクが珍しくて、ヤンチャなドライバーが煽ってやがる。
「……タケゾー。ギアアップで」
「馬鹿言うな。あんなのはほっとけ。こっちは交通規則に則り、安全運転を心がけるぞ」
「……そうだね。ごめん。アタシもムキになっちゃった」
思わずタケゾーにドライブレースを願ってしまうが、こんなことで気を立てていたらキリがない。
アタシも少し落ち着こう。タケゾーだって、まだこのバイクの運転には慣れていないだろうし、危険な運転をするメリットがない。
アタシ達は今デート中で、これから星皇カンパニーに向かっている最中だ。
道路も一時的に畑の間に入り、人も車も少なくなってきた。
ここはあんなアオリカートのことなんて忘れて、景色を堪能することを優先して――
キキィィイイ!
「うおおぉ!? 前のスポーツカー、急に減速してきたぞ!?」
「わわっ!? あ、危ない!?」
――そう思って見過ごそうと思っていたら、アオリカートの方がこちらのバイクに仕掛けてきた。
急にこちらのバイクの前方スレスレまで減速し、タケゾーも思わずハンドルをとられてしまう。
しかも最悪なことに、その反動でバイクが畑の方に横転しそうになる――
「変身! デバイスロッド、アウトプット!」
――だが、こういう時はアタシの出番だ。
即座にヘルメットを外して空色の魔女へと変身し、ガジェットからデバイスロッドも出力して、そのまま空中で腰掛ける。
こういう即座な対応にもだいぶ慣れてきた。アタシはタケゾーが乗ったままのバイクを並走して支え、なんとか横転を回避して道路へと戻した。
「た……助かった……。一時は本当にどうなることかと思ったが、ありがとうな……隼」
「アタシもヒヤッとしたよ。タケゾーが無事で本当に良かった……」
空色の魔女としての力を使えば、これぐらいの動きは造作もない。
普通なら畑に転落して大事故だったけど、こういう場面を救ってこその正義のヒーロー、空色の魔女ってもんよ。
――ただ、こうなった元凶に対する怒りについては、アタシも流石に抑えが利かない。
「ねえ、タケゾー。ここからは星皇カンパニーまで、別行動にしよっか」
「……お前、さっきのスポーツカーに復讐するつもりだろ?」
「いえいえ、復讐なんてとんでもない。ほんのちょっと、ほんのーり、ちょろーっと、お仕置きするだけさ」
「……今回は流石に俺も止める気はない。だが、加減はしてこいよ?」
「ラジャー」
タケゾーからもオッケーサインをもらい、アタシは一人でロッドに腰かけながら、空色の魔女として出撃する。
まあ、個人的にあのアオリカートには苛立ってはいるよ? でもさ、やっぱりああいう危険運転は見逃せないでしょ?
それに、こっちはあわや大事故だったんだ。
下手をすれば、買ったばかりのタケゾーバイクもお釈迦だったのよ? そんなの、タケゾーが可哀そうすぎるでしょ?
――もうぶっちゃけると、個人的な怨恨であのアオリカートをお仕置きしないと気が済まない。
「待てぇええ!! クソアオリカートォォオオ!!」
というわけで、アタシは怒りに燃える(一応正義のヒーロー)空色の魔女として、そのまま走り去っていったスポーツカーを追う。
道も一直線だったし、煽り運転もやめたのかすぐに追いつけた。それでも、止まってアタシ達の無事を確認する様子はない。
――いや、ここはアタシも落ち着こう。もしかすると、あのアオリカートのドライバーも罪悪感を感じているかもしれない。
もしそうだとしたら、お仕置きの内容も緩いものにしておこう。
これでも一応、世間では正義のヒーローで通ってる。私怨で匙加減を変えてしまうのは違う気がする。
そのためにも、まずはアオリカートの真上から、運転手の様子を軽く伺ってみると――
「さっきのカップルのバイク、畑に落ちやがったかな? だとしたらいい気味だぜ! リア充がザマァみろってんだ! ギャハハハ!」
「最高レベルお仕置き確定ぃぃいい!!」
ドッガァァアンッッ!!
「ぎゃぁああ!? 俺の愛車のボンネットに空色の魔女がぁああ!?」
――結論、ダメでした。反省の色がありません。
それを確認したアタシはアオリカートの上で一度大きく飛び上がり、急降下からのメテオキックで車のボンネットを貫いてしまった。
うん、まあ、器物破損だとは思うよ? でもさ、流石にこれは許せなくない?
人に危害を加えておいてこの態度。こんな奴を野放しにしておけば、また煽り運転で被害が出てしまう。
そもそも、こっちを煽ってた理由がただのモテない男の妬みって、当事者としてはたまったものじゃないのよ。
ああいう人間は一度痛い目を見て、反省しないとダメだよね。
――とりあえず、こんな感じでアタシ自身を納得させておこう。
「まあ、もうアオリカートのことは記憶の外にしとこっと。アタシもタケゾーに追いついて、あそこに行かないとね」
ともあれ、アタシにだって本来の目的である。踏み潰したアオリカートを尻目に、前方に見える巨大なビルへと向かって飛んでいく。
――世界有数の技術開発系大企業、星皇カンパニーの本社ビルだ。
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