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想い続けた幼馴染編
ep59 タケゾー「とりあえず謝罪しないといけない」
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「え? ええぇ!? ちょ、ちょっと!? いきなりどうしたのさ、タケゾー!? 土下座なんかしちゃって!?」
「どうしたもこうしたも、俺はこうやって告白する程お前のことが好きだったのに、あんなとんでもないパワードスーツで散々殴り倒して……!」
「いや!? あれは仕方なかったからね!? 脊椎直結制御回路で精神汚染されてたせいで、タケゾーもおかしくなっちゃってたからね!?」
俺はソファーの上で体を起こした隼に対し、誠心誠意の土下座で謝罪を続ける。
あのジェットアーマーと呼ばれるパワードスーツを身に着けてから、俺は空色の魔女が親父を殺したんじゃないかという疑心に囚われ、ひたすらにその怒りを空色の魔女にぶつけてしまった。
隼はジェットスーツが未完成だったゆえの事故だと言うが、俺が隼をボコボコにしたという事実は変わらない。
こんなことをしでかしておいて、土下座以外の謝罪方法があるのだろうか?
俺には思いつかない。もし知ってるなら、誰か教えてくれ。
「あ~……もう! とにかく! いい加減に頭を上げなって! せっかくアタシも告白してもらえたのに、まず最初に彼氏にしてもらったのが土下座って、ムードも何もありゃしないよ!?」
「だ、だけど……隼だって、あんなに一方的にボコボコにされたら、かなりボロボロに……」
「大丈夫だって! ほら! タケゾーが看病してくれたおかげで、生体コイルも正常レベルで作動してくれてるから、回復細胞も働いてくれて、怪我も元通りになってるから!」
そうやって俺が額を床に擦り付けていると、隼がソファーから起き上がって俺の顔を上げながら語り掛けてきた。
そして両手を広げて体の様子を見せてくれるのだが、確かに隼にあったはずの痣がなくなっている。
さっきから言っている『生体コイル』や『回復細胞』といった言葉も気になるし、そもそも隼はどうしてこんな能力を手に入れたのだろうか?
「なあ、隼? お前のその体と能力って、どうなってるんだ?」
「ああ、これ? 実はだね――」
詳しい経緯が気になって尋ねてみると、隼は自らの身に起きた事情を順を追って説明してくれた。
当人曰く、磁石成分と放射能成分を融合させたアルコールを開発し、それを酒と間違えて飲んでしまった。
すると予想外なことに、心臓に生体コイルと呼ばれる発電器官が生成され、アルコールを媒介とすることで電気を生み出せるようになった。
体の細胞もそれに応じて変化し、通電することで驚異的な肉体強度や身体能力の実現を可能にしたとのこと。
俺が保育園の近くで見た居眠りトラックの大破も、本当は隼が殴り飛ばして逸らしたものだったらしい。
――隼は工学面においては天才だと思っていたが、偶然とはいえこんな超人を生み出すことまで可能にするとは思わなかった。
おまけにそれら自らが得た能力と開発技術を融合させ、空を飛んだり電気のロープまで作り出す始末。
即座に変身できるブローチや、サイボーグじみたコンタクトレンズや、SF世界に出て来そうな収納機能付き腕時計といったものまであり、そっち方面に疎い俺にわけが分からなさ過ぎてついていけない。
「……成程な。とりあえず、隼がとんでもない天才で、えげつない技術と力を持っていることは理解した」
「でしょでしょ~? いやー、アタシもまさかここまでできるとは思わなかったのよ」
「そして、その力を何かに役立てたくて、空色の魔女なんて正義のヒーローを始めたと」
「うんうん。タケゾーもアタシの気持ち、分かってくれるよね?」
それら自身の能力と技術について、隼は自慢げになりながらも、俺に理解を促すように話してくる。
確かに分からなくはない。子供の頃に憧れた正義のヒーローになれたのだから、舞い上がる気持ちは理解できる。
ただ、俺にはどうしても言っておきたいことがあって――
「隼、色々言いたいことはあるんだが、お前はまず最初に……なんでそんな危ないものを作って、おまけに間違って口にしてるんだぁぁあ!?」
「ぴいいぃ!?」
――こうなってしまった最大の原因である、隼の軽率な行動は指摘しておきたい。
俺からこれまでと一転した怒号が飛んだせいで、隼も奇妙な鳥の鳴き声のような悲鳴を上げる。
「なんだよ!? 放射能を混ぜ込んだ液体を飲んで、なんでまず最初に病院に行こうとは思わなかったわけ!?」
「い、いや~……。成分を再確認したら大丈夫そうだったし、これって保険適用外でお金もかかりそうだし、そもそもどう説明すればいいかも分からなかったし……」
「だとしてもだ! まずは病院に行け! これでもし万が一のことがあったら、どうしてたつもりだよ!?」
「ま、まあまあ。結果として、アタシは問題ないどころか、超人パワーを手に入れたわけなので……」
「お前この間、星皇社長に『安全性やら耐久性やら』云々で啖呵切ってたよな!? あの信念はどこ行った!?」
「そ、そそ、それは~……アタシ個人のことだったので~……すんません」
話を聞き続けても、もう呆れるしかない。こいつは他者が関与するものには安全面も含めて徹底するのに、どうして自分自身のことになるとこうも無頓着なのか。
そもそも、なんでまだニ十歳そこらなのに、放射能のとんでも取り扱い資格を持ってるんだよ? 現役の理系大学院生どころか、名誉教授クラスの人間だって裸足で逃げ出すぞ?
もうちょっと、自分の技能と我が身の安全については理解を深めて欲しい。
これでは俺も、安心して隼の空色の魔女活動を見ていられない。
「第一! 隼は昔から自分のことを省みなさすぎなんだよ! 小学校の頃、ペットポトルロケットで飛距離の世界記録を出した時だって、発射台にいたお前自身は想定外の水圧で吹き飛んでただろ!?」
「あ、あれはまだアタシも幼くて未熟だったし、とにかく遠くに飛ばすことしか考えてなかったというか――」
「お前の親父さんも『隼なら発射時の反動水圧ぐらい計算できたはずなのに……』ってボヤいてたぞ!? 実は分かった上で飛距離を優先したんじゃないか!?」
「あ……あははは~……ごめんなさい」
元々は俺が隼に謝罪したことから始まった話が、いつの間にやら俺が隼に説教する事態へと発展してしまった。
昔のあれこれもつい持ち出してしまい、ついさっきの告白の話も何のそのだ。
隼も隼で反省はしているらしく、少し反論しながらもしおらしく俺の言葉を聞き入れてくれている。
ただ、こういった隼の我が身をよく見れず、周囲のことばかり見る姿も含めて、空色の魔女としての正義感も見えてくる。
隼は元々、困っている人を見過ごせない性格だ。それは幼い頃に助けてもらった俺も良く理解してる。
こんな規格外な能力を手に入れても私欲のためでなく、まずは世のため人のために使おうというのも、実に隼らしい行動だ。
こいつの両親も隼に『学んだことは世のために使いなさい』とよく言っていたのを俺も覚えているし、その言葉は今でも隼の中でしっかりと根付いているのが分かる。
――それでも、その対象の中には隼も含めておいて欲しい。
隼より弱くとも、一人の男としての願いだ。
「……てか、恋人同士になって早々にやることが、何で土下座と説教なんだよ……」
「急に素に戻らないでよ……。だったら、タケゾーはアタシと何したいわけよ?」
「……そこまで特別なことは考えてなかった」
「それだと、いつもと変わんないままじゃん……」
ある意味、今まで幼馴染だった俺達らしいと言えばらしいやりとりなのだが、せっかく彼氏彼女の関係になったのだから、もうちょっとそっれぽいことをしたいとも思う。
隼にも提言されるが、ここは思い切っていつもとは違う、恋人同士っぽいことをしてみよう。
「あっ、そうだ。ちょっとショッピングにでも行くか」
「ショッピング? それもちょくちょくやってなかったっけ?」
「これまでやってたのなんて、お前の仕事用資材の買い出しがほとんどだったろ。こう……服を見に行ったり、ウィンドウショッピングをしたりさ」
「お? それは確かに恋人同士っぽいね。アタシもたまには空色の魔女としてではなく、日常として街にも出てみたいもんだ」
とりあえずは俺も頭の中に即興で浮かんだショッピングを提案してみると、隼も話に乗って来た。
ちょっとお洒落な都会に出て、ちょっとお洒落な店を巡る。これこそ、デートの王道というものだろう。
「そうと決まれば、早速出発しようかね!」
「俺はいいけど、隼は体の方は大丈夫なのか?」
「ダイジョーブだって! タケゾーとあれこれやってるうちに、元通りにまで戻ったさ!」
隼の体調面も問題なく回復したようだ。説明はされても、この回復力には驚かずにはいられない。
そして俺の手を握ってグイグイ引っ張ってくるのだが、今更ながら恥ずかしい。
――何より、胸を押し当てるな。お前のその立派な胸は、男にとって凶器なんだ。
「ん? ちょっと待ってくれ。俺は別にこの格好で問題ないが、隼は着替えないのか?」
「え? 着替えないよ? このままで行くよ?」
それともう一つ、俺にはどうしても気になることが出てきてしまった。
こうして恋人云々、デート云々の話になったわけだが、それならその恰好は何とかしてほしい。
「工場の作業着のままで、デートに行く奴がいるか?」
「どうしたもこうしたも、俺はこうやって告白する程お前のことが好きだったのに、あんなとんでもないパワードスーツで散々殴り倒して……!」
「いや!? あれは仕方なかったからね!? 脊椎直結制御回路で精神汚染されてたせいで、タケゾーもおかしくなっちゃってたからね!?」
俺はソファーの上で体を起こした隼に対し、誠心誠意の土下座で謝罪を続ける。
あのジェットアーマーと呼ばれるパワードスーツを身に着けてから、俺は空色の魔女が親父を殺したんじゃないかという疑心に囚われ、ひたすらにその怒りを空色の魔女にぶつけてしまった。
隼はジェットスーツが未完成だったゆえの事故だと言うが、俺が隼をボコボコにしたという事実は変わらない。
こんなことをしでかしておいて、土下座以外の謝罪方法があるのだろうか?
俺には思いつかない。もし知ってるなら、誰か教えてくれ。
「あ~……もう! とにかく! いい加減に頭を上げなって! せっかくアタシも告白してもらえたのに、まず最初に彼氏にしてもらったのが土下座って、ムードも何もありゃしないよ!?」
「だ、だけど……隼だって、あんなに一方的にボコボコにされたら、かなりボロボロに……」
「大丈夫だって! ほら! タケゾーが看病してくれたおかげで、生体コイルも正常レベルで作動してくれてるから、回復細胞も働いてくれて、怪我も元通りになってるから!」
そうやって俺が額を床に擦り付けていると、隼がソファーから起き上がって俺の顔を上げながら語り掛けてきた。
そして両手を広げて体の様子を見せてくれるのだが、確かに隼にあったはずの痣がなくなっている。
さっきから言っている『生体コイル』や『回復細胞』といった言葉も気になるし、そもそも隼はどうしてこんな能力を手に入れたのだろうか?
「なあ、隼? お前のその体と能力って、どうなってるんだ?」
「ああ、これ? 実はだね――」
詳しい経緯が気になって尋ねてみると、隼は自らの身に起きた事情を順を追って説明してくれた。
当人曰く、磁石成分と放射能成分を融合させたアルコールを開発し、それを酒と間違えて飲んでしまった。
すると予想外なことに、心臓に生体コイルと呼ばれる発電器官が生成され、アルコールを媒介とすることで電気を生み出せるようになった。
体の細胞もそれに応じて変化し、通電することで驚異的な肉体強度や身体能力の実現を可能にしたとのこと。
俺が保育園の近くで見た居眠りトラックの大破も、本当は隼が殴り飛ばして逸らしたものだったらしい。
――隼は工学面においては天才だと思っていたが、偶然とはいえこんな超人を生み出すことまで可能にするとは思わなかった。
おまけにそれら自らが得た能力と開発技術を融合させ、空を飛んだり電気のロープまで作り出す始末。
即座に変身できるブローチや、サイボーグじみたコンタクトレンズや、SF世界に出て来そうな収納機能付き腕時計といったものまであり、そっち方面に疎い俺にわけが分からなさ過ぎてついていけない。
「……成程な。とりあえず、隼がとんでもない天才で、えげつない技術と力を持っていることは理解した」
「でしょでしょ~? いやー、アタシもまさかここまでできるとは思わなかったのよ」
「そして、その力を何かに役立てたくて、空色の魔女なんて正義のヒーローを始めたと」
「うんうん。タケゾーもアタシの気持ち、分かってくれるよね?」
それら自身の能力と技術について、隼は自慢げになりながらも、俺に理解を促すように話してくる。
確かに分からなくはない。子供の頃に憧れた正義のヒーローになれたのだから、舞い上がる気持ちは理解できる。
ただ、俺にはどうしても言っておきたいことがあって――
「隼、色々言いたいことはあるんだが、お前はまず最初に……なんでそんな危ないものを作って、おまけに間違って口にしてるんだぁぁあ!?」
「ぴいいぃ!?」
――こうなってしまった最大の原因である、隼の軽率な行動は指摘しておきたい。
俺からこれまでと一転した怒号が飛んだせいで、隼も奇妙な鳥の鳴き声のような悲鳴を上げる。
「なんだよ!? 放射能を混ぜ込んだ液体を飲んで、なんでまず最初に病院に行こうとは思わなかったわけ!?」
「い、いや~……。成分を再確認したら大丈夫そうだったし、これって保険適用外でお金もかかりそうだし、そもそもどう説明すればいいかも分からなかったし……」
「だとしてもだ! まずは病院に行け! これでもし万が一のことがあったら、どうしてたつもりだよ!?」
「ま、まあまあ。結果として、アタシは問題ないどころか、超人パワーを手に入れたわけなので……」
「お前この間、星皇社長に『安全性やら耐久性やら』云々で啖呵切ってたよな!? あの信念はどこ行った!?」
「そ、そそ、それは~……アタシ個人のことだったので~……すんません」
話を聞き続けても、もう呆れるしかない。こいつは他者が関与するものには安全面も含めて徹底するのに、どうして自分自身のことになるとこうも無頓着なのか。
そもそも、なんでまだニ十歳そこらなのに、放射能のとんでも取り扱い資格を持ってるんだよ? 現役の理系大学院生どころか、名誉教授クラスの人間だって裸足で逃げ出すぞ?
もうちょっと、自分の技能と我が身の安全については理解を深めて欲しい。
これでは俺も、安心して隼の空色の魔女活動を見ていられない。
「第一! 隼は昔から自分のことを省みなさすぎなんだよ! 小学校の頃、ペットポトルロケットで飛距離の世界記録を出した時だって、発射台にいたお前自身は想定外の水圧で吹き飛んでただろ!?」
「あ、あれはまだアタシも幼くて未熟だったし、とにかく遠くに飛ばすことしか考えてなかったというか――」
「お前の親父さんも『隼なら発射時の反動水圧ぐらい計算できたはずなのに……』ってボヤいてたぞ!? 実は分かった上で飛距離を優先したんじゃないか!?」
「あ……あははは~……ごめんなさい」
元々は俺が隼に謝罪したことから始まった話が、いつの間にやら俺が隼に説教する事態へと発展してしまった。
昔のあれこれもつい持ち出してしまい、ついさっきの告白の話も何のそのだ。
隼も隼で反省はしているらしく、少し反論しながらもしおらしく俺の言葉を聞き入れてくれている。
ただ、こういった隼の我が身をよく見れず、周囲のことばかり見る姿も含めて、空色の魔女としての正義感も見えてくる。
隼は元々、困っている人を見過ごせない性格だ。それは幼い頃に助けてもらった俺も良く理解してる。
こんな規格外な能力を手に入れても私欲のためでなく、まずは世のため人のために使おうというのも、実に隼らしい行動だ。
こいつの両親も隼に『学んだことは世のために使いなさい』とよく言っていたのを俺も覚えているし、その言葉は今でも隼の中でしっかりと根付いているのが分かる。
――それでも、その対象の中には隼も含めておいて欲しい。
隼より弱くとも、一人の男としての願いだ。
「……てか、恋人同士になって早々にやることが、何で土下座と説教なんだよ……」
「急に素に戻らないでよ……。だったら、タケゾーはアタシと何したいわけよ?」
「……そこまで特別なことは考えてなかった」
「それだと、いつもと変わんないままじゃん……」
ある意味、今まで幼馴染だった俺達らしいと言えばらしいやりとりなのだが、せっかく彼氏彼女の関係になったのだから、もうちょっとそっれぽいことをしたいとも思う。
隼にも提言されるが、ここは思い切っていつもとは違う、恋人同士っぽいことをしてみよう。
「あっ、そうだ。ちょっとショッピングにでも行くか」
「ショッピング? それもちょくちょくやってなかったっけ?」
「これまでやってたのなんて、お前の仕事用資材の買い出しがほとんどだったろ。こう……服を見に行ったり、ウィンドウショッピングをしたりさ」
「お? それは確かに恋人同士っぽいね。アタシもたまには空色の魔女としてではなく、日常として街にも出てみたいもんだ」
とりあえずは俺も頭の中に即興で浮かんだショッピングを提案してみると、隼も話に乗って来た。
ちょっとお洒落な都会に出て、ちょっとお洒落な店を巡る。これこそ、デートの王道というものだろう。
「そうと決まれば、早速出発しようかね!」
「俺はいいけど、隼は体の方は大丈夫なのか?」
「ダイジョーブだって! タケゾーとあれこれやってるうちに、元通りにまで戻ったさ!」
隼の体調面も問題なく回復したようだ。説明はされても、この回復力には驚かずにはいられない。
そして俺の手を握ってグイグイ引っ張ってくるのだが、今更ながら恥ずかしい。
――何より、胸を押し当てるな。お前のその立派な胸は、男にとって凶器なんだ。
「ん? ちょっと待ってくれ。俺は別にこの格好で問題ないが、隼は着替えないのか?」
「え? 着替えないよ? このままで行くよ?」
それともう一つ、俺にはどうしても気になることが出てきてしまった。
こうして恋人云々、デート云々の話になったわけだが、それならその恰好は何とかしてほしい。
「工場の作業着のままで、デートに行く奴がいるか?」
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