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エピローグ

第475話 エンディング

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「すまないな、マカロン。俺に付き合ってもらって」
「いえ、私もゼロラさんと二人きりで話したかったところです」

 ゼロラとマカロンは二人で並んで歩いていた。
 目指す場所は"追憶の領域"――ゼロラの妻であったユメの墓がある場所だ。

「もっと早くお前を案内したかったんだが、レイキースの騒動で中々機会が作れなくてな……」
「気にしないでください。ゼロラさんとミライちゃんに嫌悪感を示す人達が減るまで、待つ必要もありましたから」

 二人は仲睦まじく、洞窟の中を歩いていた。
 全ての問題が片付き、この二人の思いの障壁はもう存在しない。
 そのことに確信を持ったゼロラは、マカロンを"追憶の領域"へと案内していた。





「ここだ、マカロン。これが俺が【伝説の魔王】ジョウインだった頃の妻――【慈愛の勇者】ユメの墓だ」
「これがユメ様のお墓……」

 ゼロラに案内され、マカロンはユメの墓前に膝をつく。
 怪物となったレイキースを止めるために、マカロンの体を借りてゼロラとラルフルを救ってくれたユメ――
 そのユメに対する思いを届かせようと、マカロンは両手を合わせて祈った――



「ユメ様……。ゼロラさんとラルフルを守ってくださり、本当にありがとうございました」



 短い言葉に感謝の気持ちを込め、目を閉じながらマカロンは祈る。
 しばらくするとゼロラもマカロンの横で同じように膝をつき、ユメの墓へと祈りを捧げる。



「ユメ……。これまで俺を支えてきてくれて、本当にありがとう。お前のことは決して忘れない。俺はこれからもお前のことを思いながら生きていく――」



 ユメへの感謝の気持ちをゼロラが言い終えると、マカロンと共に立ち上がった。

 ゼロラがマカロンをここへ導いた理由はユメのこと以外にもある。
 何より要件の内容を考えると、ここが一番相応しいと考えていた――



「ユメは俺の気持ちを汲んでくれている。それはお前に憑依して現れた時、ハッキリと答えてくれたことだ」
「……はい」

 ゼロラが伝えようとしていることは、マカロンにも理解できた。

 ずっと待ち続けてきた、その"答え"――
 マカロンはゼロラは信じ、ただその時を待った。

「俺にはユメのことも忘れられない。だが、それでもお前に伝えたい気持ちは一つだ――」

 マカロンの前で膝をついたゼロラは、取り出した"もの"をマカロンへと差し出した。





 ――"清白蓮華"。
 その花言葉の意味を、ゼロラは口にしながらその思いをようやく伝える――







「マカロン。俺と結婚してくれ。俺とミライの傍にいて、これからも支えてくれ」





 ――それがゼロラのマカロンへの"答え"。
 マカロンは目を潤ませながらも、ようやく聞くことができたその言葉に、笑顔で返した――





「はい……喜んで」
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