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最終章 それが俺達の絆

第466話 最終決戦・【零限の不死鳥】②

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「ぐうぅ!?」


 ザシュンッ!!


 ラルフルの両足から放たれた<鎌風>は、ガードしていたゼロラの両腕を切り裂いた。
 <鉄の防御>を破り、傷口から血がしたたり落ちる。
 深い傷ではないが、それでもその一撃はゼロラにとって脅威であった。

「<緑色のオーラ>を変換した<鎌風>……。こんな技、俺でもできないぞ……!」
「自分でも驚いていますよ。ですが、不思議と自分には"できる"という確信がありました……!」

 ラルフルの身に刻まれた、ユメとの戦いの記憶。
 その経験は確かに残っており、ラルフルに確信をもって<緑色のオーラ>を<鎌風>へと変化させることができた。

 オーラの性質は限りなく魔力に近い。
 元々優秀な魔法使いだったラルフルだからこそ、オーラを魔力と同じ要領で扱うことを可能にした。
 それはかつてゼロラが【伝説の魔王】ジョウインだった時でも、【慈愛の勇者】ユメでも成しえなかった、未踏の技――

 ――ラルフルの常軌を逸した成長速度と経験が、オーラによる<鎌風>を可能とした。

「本当に大したもんだ……! これは俺でも勝てるかどうか……!」

 ラルフルの力の前に、ゼロラは戦慄せずにいられなかった。
 かつて世界の頂点とも言える力を持っていた、ゼロラとユメ。
 その二人でもたどり着けなかった領域に、ラルフルは足を踏み入れている。

 わずかにラルフルが一歩先を行った戦況――

 ――それでもゼロラには勝つための算段があった。



「スゥーー……。行くぞぉおお!! ゼロラァアア!!」

 一呼吸ついて気持ちを落ち着けた後、<鎌風>という絶対的な武器に自信を持ち、ラルフルは攻勢に打って出る。
 ゼロラと距離を置いた状態で、<緑色のオーラ>を纏わせた両足で、連続でその場で蹴りを放つ。

 横なぎの回し蹴り。縦方向へのサマーソルトキック。
 角度と方向を自在に変えたラルフルの<鎌風>が、刃の嵐となってゼロラを襲った――

「甘い!!」


 シュンッ! ガキンッ!


「そ、そんな!?」

 ――そんな<鎌風>の連撃を、ゼロラは時に躱し、時に弾きながら対応し、ラルフルとの距離を詰めていく。

 初手の<鎌風>にこそ驚いたが、"飛ぶ斬撃"ならばユメにも同じことができる。
 ラルフルのようにオーラを"飛ぶ斬撃"へと変化させることはできないが、"飛ぶ斬撃"そのものへの対処はゼロラにもできる。
 <鎌風>の軌道を読み、<鉄の防御>を一点集中させることで、どんどんと突破していく――



「オラァアア!!」
「カハッ……!? ま……まっだまだぁああ!!」

 ついにゼロラの拳はラルフルの腹へと突き刺さった。
 痛みに体をすくめるラルフルだったが、即座に体勢を立て直す。

「遠距離攻撃には驚いたが、近接戦なら俺に分がある……!」
「何を仰るのですか? 自分だって、元々は近接戦の方が得意ですよ……!」


 ドガァア! ボゴォオ!


 再びお互いの間合いの範疇に入り、ゼロラとラルフルの壮絶なラッシュ勝負が始まる。
 <灰色のオーラ>と<緑色のオーラ>がぶつかり合い、衝撃が屋上の石畳をも弾き飛ばす――

 常人には捉えられないスピード、出すことのできないパワー、それらを一瞬で繰り返すテクニック――
 オーラによって高められた戦いのレベルは、常人には理解できないレベルにあった。



「くうぅ!? ハァ、ハァ!」
「どうした……ラルフル! 疲れが見えてきてるぞ!?」

 再度行われたラッシュ勝負では、ゼロラが優勢に立っていた。
 ラルフルは息を切らし、その動きも鈍くなり始める。

 原因は先程の<鎌風>の連発にあった。
 ゼロラに対して優勢をとれると思われたオーラを使った<鎌風>だったが、その原理も魔法に近い。
 <鎌風>を使うたびに、ラルフルの<緑色のオーラ>は消耗していた。

 本来身体能力を向上させる効果が主となるオーラを飛び道具へと昇華させることができたのは、元魔法使いのラルフルの技量があってこそ。
 だが、それ自体を使いこなす経験がラルフルにはなかった。
 後先を考えずに使った<鎌風>が、ラルフルの首を絞める結果になっていた――



「自分が……これで終わるわけ……ありません!!」



 ――それでもラルフルは諦めない。
 バックステップで距離をとると、ラルフルは気合いを入れなおし、<緑色のオーラ>を激しく滾らせる。

 オーラの滾りは、闘志の現れ。
 オーラが消えない限り、戦えなくなることはない。



 肉体を凌駕した、精神の力――



 人が持つ心技体の境地は、常識では測れない力を与えていた。

「そうだな……。それぐらいやってくれないと、俺も面白くない……!」

 ゼロラはそんなラルフルの滾りを見て、笑みを浮かべていた。

 ラルフルがこの程度で終わらないということへの関心。
 ラルフルにまだまだ力が残されていることへの期待。

 それらの思いを胸に、ゼロラはラルフルへと構えなおす。
 その目に宿るは、ラルフルにも劣らない闘志――
 ゼロラの<灰色のオーラ>も、それに呼応するように燃え盛る――



「……流石はゼロラさんですね。今の自分でも、一歩足りないと言ったところでしょうか」

 ゼロラが燃え盛らせる<灰色のオーラ>を見て、ラルフルは構えなおさずに状況を考える。

 自らがゼロラと同じレベルに達したと言っても、そこに大きな決め手はない。
 <鎌風>が有効手段でないと分かった今、ラルフルには更なる一手が求められた。

 これまで驚異的な成長を続けたラルフルにとって、ゼロラに対抗できる最大の手段――
 一度目を閉じたラルフルは、自らの内に眠る力を感じ取り、ある一つの可能性を見出した。



「ゼロラさん。あなたはサイバラさん、ジフウさん、シシバさんといった方々とも、同じレベルで戦えますよね?」
「……ああ。今のお前と同じように、それぞれの色のオーラを滾らせながら、俺と戦ってきた」
「皆さん強敵でしたか?」
「もちろんだ。俺が負けていても、何一つおかしくない勝負ばかりだった」

 その可能性を確認するように、ラルフルはゼロラに問いかけた。
 そんなラルフルの問いにもゼロラは構えたまま、静かに答えた。





 そしてゼロラの言葉を聞いたラルフルは、確信をもって次の一手へと移行する覚悟を決めた。





「ならば……まずは"虎"の力を試してみましょう……!」
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