上 下
447 / 476
最終章 それが俺達の絆

第447話 決戦・【最盛の凶獅子】⑤

しおりを挟む
 兄ジフウと同じく、戦いの中でその狂気を完全に解放させたシシバ。
 体を軽く揺らめかせ、再び<獅子重録影>を両脇へと立たせた後、目を見開いた笑顔でゼロラへと構える。

「もう小賢しい策はなしや~! 俺とゼロラはん……いっそ死ぬまで殴り合おうやないかぁああ!!」
「どこまでも狂った野郎だ。だが……受けて立ってやるよぉお! シシバァアア!!」

 シシバもゼロラも、互いの全霊をかけて最後の勝負へと挑み出る。

 もう細かい考えはいらない。
 もう相手の様子を伺うようなこともしない。

 <灰色のオーラ>を纏ったゼロラと、<赤色のオーラ>を纏ったシシバ。
 互いの本能による更なる激闘が、王宮の城門で最終局面を迎えようとしていた――

「この程度か~? ゼロラァアア!!」

 シシバは<鬼勁>と<獅子重録影>の合わせ技で、ゼロラを攻め立てる。

「そっちこそ、ただ打撃で攻め続けられると思ってるのか? シシバァアア!!」

 ゼロラはシシバの打撃技に対し、組技も交えて反撃する。


 ドガガガァア!!


 シシバの打撃が響き渡れば――


 ズゴォオンッ!!


 ――ゼロラの叩きつけも響き渡る。

 辺りに響き渡るのは、人智を超えた攻防の衝撃音――
 両者の全力が大気を震わせ、城門の壁にヒビを入れる。

 それほどまでに強大な力の衝突――
 完全に人の領域を超えた決戦――





 その余波は、城門の上で戦いを傍観していたリフィーにも当然届いていた。

「な、なな、なんなのよ、こいつら……!? あ、ありえない……! こんな力……わたくしやレイキース様でさえも、持ってないですわ……!?」

 目の前で繰り広げられる激戦が自身の力を超えるものであることを、リフィーも直感的に理解していた。

 この二人の想像を絶する力とその危険性――
 それを肌身で感じ取ったリフィーは、その手に火炎魔法を唱え始めた。

「い、今ならあの二人はわたくしに気付いていない……! こ、ここで二人まとめて、消してやりますわ……!」
「ダ、ダメー! パパー! 逃げてー!!」
「や、やめろ、リフィー! くそ! どうにかして、この檻から抜け出す方法は……!?」

 リフィーの目論見を理解したミライとリョウは、必死に魔法の檻の中で抵抗する。
 だが檻は堅牢で、それぞれの力ではどうしようもない。
 魔法の檻は内側にいる者の魔力を吸収する仕掛けとなっており、脱出は叶わない。
 二人の必死の懇願も、ゼロラとシシバの耳には届かない――

「こ、これで二人とも消して差し上げますわ……!」
「やめてー!!」
「やめろぉおお!!」

 リフィーは作り出した火炎魔法の矛先を、戦っているゼロラとシシバに向けた――









「見つけタゾ。賢者リフィー……!」

 ――そんなリフィー目がけて、一つの人影が飛んできた。

 その目にリフィーに対する憎しみを宿し、それでもその胸には自らの優先すべき行動を抱え、指先からリフィーへと黒い閃光を射出した――



 ――バシュン!



「あぐぅう!? あ……キャアアア!?」

 閃光はリフィーの右肩を貫き、火炎魔法の発射を食い止めた。
 さらにそれで体勢を崩したリフィーは、城門の上から崩れ落ちる――


 ――ドシィイン!!


「――ッ!? な、なんだ!?」
「誰かが落ちたんか!? リフィーか!?」

 激闘を繰り広げていたゼロラとシシバも、近くで起こった物音に気付き、互いに攻撃をやめる。
 土煙の中からわずかに見える姿から、リフィーが落ちてきたことはすぐに理解できた。
 ゼロラもシシバもその姿を見て、一度落ち着き冷静になる。



 それぞれの体から溢れ出ていた<灰色のオーラ>と<赤色のオーラ>も収まり、この決戦も中断された。



「誰かがやったのか……?」
「そうなんやろうが……一体誰や?」
「邪魔をしてスマナイ。ワタシも今優先スベキは、この賢者を倒すコトダト思ったカラナ」

 勝負の横槍よりも事態が気になっていたゼロラとシシバだったが、そこにリフィーを突き落とした張本人が空から降りてきた。

 ミライがラルフルから貰った帽子をかぶり、その姿かたちもミライと同じ。
 ただ髪は白く、目つきは鋭い。

 この決戦の場に駆け付けてきたのは、ゼロラもよく知る"もう一人のミライ"――





「お前……ミライか……? <ナイトメアハザード>の時の……?」
「ウム。マタ会ったナ、父ヨ。本来の"ワタシ"がコノ帽子を大事にトッテクレタのが、功を奏シタ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚

里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」  なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。  アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

暴虎馮河伝

知己
ファンタジー
神仙と妖が棲まう世界「神州」。だがいつしか神や仙人はその姿を消し、人々は妖怪の驚異に怯えて生きていた。    とある田舎町で目つきと口と態度の悪い青年が、不思議な魅力を持った少女と運命的に出会い、物語が始まる。 ————王道中華風バトルファンタジーここに開幕!

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

処理中です...