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第27章 追憶の番人『殿』
第396話 ルクガイアの命運
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ロギウスに言われ、俺は国王の私室にやってきた。
ミライのことはミリアに任せてある。
どうやらミライはミリアにも懐いたようだし、ラルフルが目を覚ませば大丈夫だろう。
「それにしても、ロギウスの要件って何でしょうか? 国王陛下」
「うむ……。それについてなのだが、詳しいことは聞いておらぬ」
俺と一緒にいる国王も、息子であるロギウスの考えは分からないようだ。
「ただ、ロギウスの行動で心当たりがある」
「心当たり?」
「うむ。最近ロギウスは公務の合間を縫い、王宮に女性用の私室や生活用品の手筈を整えていてな……」
ロギウスが女性が王宮で生活できる準備をしている?
それってもしかして――
「ロギウスの結婚相手が見つかったんですか?」
「いや……余にも全く分からぬ。そもそもロギウスはここ最近、ずっと公務で忙しかった。相手を探す暇などない」
確かに国王の言う通りだ。
ロギウスが色々出していた、結婚したい相手の条件。特に胸。
そんな条件の揃った相手を、激務の最中に探し出せるとは思えない。
「だがロギウスは余に、『国王ではなく、父として会ってほしい人がいる』と言ってきたのだ」
「それ、もう確定じゃないですか?」
「そうであろうな……。この後、余とゼロラ殿にも、玉座の間で会わせたいそうだ」
国王はどこか素直に喜べない様子だ。
仮にロギウスが結婚相手を見つけてきたというならば、どんな相手かが気になるのだろう。
そもそも、なんでそんな場に俺まで呼ばれるんだ?
後、ロギウスはジフウとシシバも呼ぶみたいだが、一体何の意味があるんだ?
ロギウスの好みに合う女性――
俺とジフウとシシバが居合わせる必要がある相手――
――謎は深まるばかりだ。
「とりあえず、良かったんじゃないですか? これでロギウス自身が言ってた通り、王位を継がせることもできるでしょうし」
「確かに結婚が決まれば、ロギウスも王位を継いでくれる。だが、今回の件でどうにも不安要素が大きい」
国王の曇った表情から、その不安の大きさが分かる。
そりゃそうだ。展開が全く読めないんだ。
ロギウス……。親御さんを不安にさせるなよ……。
「いっそ、ゼロラ殿が王位を継いではくれぬか? かつての【伝説の魔王】ならば、王位に立つに相応しいとも思うぞ?」
「元とはいえ、魔王を国王にさせようとしないでください……」
国王もそろそろ隠居して楽になりたいらしい。
こうなってくると、ロギウスが連れてくる相手次第だ。
とにかく、変人でなければいいのだが――
◇◇◇
「うーん。荷物はこれぐらいで大丈夫かな?」
ボクは魔幻塔にある私室で、旅の準備を進めている。
ルクガイア王国に滞在しておけば、ボクにも重要なポストがいずれ与えられるだろう。
なんだかんだで、ボクって優秀。そこはちゃんと評価されている。
魔法は最強、容姿も美人。
……胸は欲しいけど。
それでもボクはやっぱりこの国を離れる。
ゼロラ殿への失恋は、なんだかんだでかなりショックだったからね。
これから再び世界中を回り、かわいい少年少女をカメラにでも収めて回ろう。
「それでは、後のことはお願いするよ」
この魔幻塔の管理も、後任者に任せておいた。
今はただの監獄でしかないけど、いずれは解体される場所だ。
それを踏まえたうえで、最も適任と思われる人を用意しておいたよ。
「いやいや~……。囚人の一人にこの監獄の管理を任せるって、どー考えてもおかしーだろーが……」
後任者のフロスト殿は愚痴ってるけどね。
ボクとしては最適な人選だと思うんだけど。
「確かに君は囚人の一人だね。でも、ここから逃げ出す気なんてないよね?」
「まー……それはそーなんだが。俺が逃げだしたら、マカロンやラルフルに迷惑がかかるしよ~……」
「だからボクは君を後任者にしたんだ。君の科学力があれば、ここの囚人達――特に、ボーネス公爵と軍師ジャコウは逃げ出せないからね」
「お前の言ー通りなんだがよ~……。やっぱり、釈然としねーな~」
文句が多いね、フロスト殿は。
どのみちこれは一時的な措置だ。フロスト殿も時期に釈放される。
魔幻塔を完全に解体する手はずが整うまでの間、少しフロスト殿には頑張ってもらおう。
さて、これで準備は整った。
後はみんなに挨拶をして――
「リョ、リョウさん! まだいますか!?」
「おや? マカロンかい? そんなに慌てて、どうしたのかな?」
早速旅立とうとしたところに、マカロンが大慌てでボクの元へと駆けこんできた。
慌てて入るけど、そんなに一大事なのかな?
「大丈夫だよ、マカロン。ボクはこれからみんなに挨拶をしようと――」
「それどころじゃないですよ! リョウさんが名指しでロギウス殿下に呼ばれてるんです!」
ん? ボクがロギウス殿下に呼ばれてる?
ボク、何か悪いことしたかな? いや、ないね。
ロギウス殿下は見た目は好青年だが、ボクの守備範囲より高めだ。
そういう人へのストーカー行為はしない。
「でも、なんでロギウス殿下がボクに用があるのかな?」
「リョウさんどころか、ジフウさんやシシバさんといったお兄さん方や、ゼロラさんまで呼ばれてるんですよ!」
ジフ兄にシシ兄にゼロラ殿まで?
一体何の要件かな?
でも、ちょうどいい機会だね。
陛下もいるだろうし、旅立つ前に最後の挨拶をしてこよう。
ミライのことはミリアに任せてある。
どうやらミライはミリアにも懐いたようだし、ラルフルが目を覚ませば大丈夫だろう。
「それにしても、ロギウスの要件って何でしょうか? 国王陛下」
「うむ……。それについてなのだが、詳しいことは聞いておらぬ」
俺と一緒にいる国王も、息子であるロギウスの考えは分からないようだ。
「ただ、ロギウスの行動で心当たりがある」
「心当たり?」
「うむ。最近ロギウスは公務の合間を縫い、王宮に女性用の私室や生活用品の手筈を整えていてな……」
ロギウスが女性が王宮で生活できる準備をしている?
それってもしかして――
「ロギウスの結婚相手が見つかったんですか?」
「いや……余にも全く分からぬ。そもそもロギウスはここ最近、ずっと公務で忙しかった。相手を探す暇などない」
確かに国王の言う通りだ。
ロギウスが色々出していた、結婚したい相手の条件。特に胸。
そんな条件の揃った相手を、激務の最中に探し出せるとは思えない。
「だがロギウスは余に、『国王ではなく、父として会ってほしい人がいる』と言ってきたのだ」
「それ、もう確定じゃないですか?」
「そうであろうな……。この後、余とゼロラ殿にも、玉座の間で会わせたいそうだ」
国王はどこか素直に喜べない様子だ。
仮にロギウスが結婚相手を見つけてきたというならば、どんな相手かが気になるのだろう。
そもそも、なんでそんな場に俺まで呼ばれるんだ?
後、ロギウスはジフウとシシバも呼ぶみたいだが、一体何の意味があるんだ?
ロギウスの好みに合う女性――
俺とジフウとシシバが居合わせる必要がある相手――
――謎は深まるばかりだ。
「とりあえず、良かったんじゃないですか? これでロギウス自身が言ってた通り、王位を継がせることもできるでしょうし」
「確かに結婚が決まれば、ロギウスも王位を継いでくれる。だが、今回の件でどうにも不安要素が大きい」
国王の曇った表情から、その不安の大きさが分かる。
そりゃそうだ。展開が全く読めないんだ。
ロギウス……。親御さんを不安にさせるなよ……。
「いっそ、ゼロラ殿が王位を継いではくれぬか? かつての【伝説の魔王】ならば、王位に立つに相応しいとも思うぞ?」
「元とはいえ、魔王を国王にさせようとしないでください……」
国王もそろそろ隠居して楽になりたいらしい。
こうなってくると、ロギウスが連れてくる相手次第だ。
とにかく、変人でなければいいのだが――
◇◇◇
「うーん。荷物はこれぐらいで大丈夫かな?」
ボクは魔幻塔にある私室で、旅の準備を進めている。
ルクガイア王国に滞在しておけば、ボクにも重要なポストがいずれ与えられるだろう。
なんだかんだで、ボクって優秀。そこはちゃんと評価されている。
魔法は最強、容姿も美人。
……胸は欲しいけど。
それでもボクはやっぱりこの国を離れる。
ゼロラ殿への失恋は、なんだかんだでかなりショックだったからね。
これから再び世界中を回り、かわいい少年少女をカメラにでも収めて回ろう。
「それでは、後のことはお願いするよ」
この魔幻塔の管理も、後任者に任せておいた。
今はただの監獄でしかないけど、いずれは解体される場所だ。
それを踏まえたうえで、最も適任と思われる人を用意しておいたよ。
「いやいや~……。囚人の一人にこの監獄の管理を任せるって、どー考えてもおかしーだろーが……」
後任者のフロスト殿は愚痴ってるけどね。
ボクとしては最適な人選だと思うんだけど。
「確かに君は囚人の一人だね。でも、ここから逃げ出す気なんてないよね?」
「まー……それはそーなんだが。俺が逃げだしたら、マカロンやラルフルに迷惑がかかるしよ~……」
「だからボクは君を後任者にしたんだ。君の科学力があれば、ここの囚人達――特に、ボーネス公爵と軍師ジャコウは逃げ出せないからね」
「お前の言ー通りなんだがよ~……。やっぱり、釈然としねーな~」
文句が多いね、フロスト殿は。
どのみちこれは一時的な措置だ。フロスト殿も時期に釈放される。
魔幻塔を完全に解体する手はずが整うまでの間、少しフロスト殿には頑張ってもらおう。
さて、これで準備は整った。
後はみんなに挨拶をして――
「リョ、リョウさん! まだいますか!?」
「おや? マカロンかい? そんなに慌てて、どうしたのかな?」
早速旅立とうとしたところに、マカロンが大慌てでボクの元へと駆けこんできた。
慌てて入るけど、そんなに一大事なのかな?
「大丈夫だよ、マカロン。ボクはこれからみんなに挨拶をしようと――」
「それどころじゃないですよ! リョウさんが名指しでロギウス殿下に呼ばれてるんです!」
ん? ボクがロギウス殿下に呼ばれてる?
ボク、何か悪いことしたかな? いや、ないね。
ロギウス殿下は見た目は好青年だが、ボクの守備範囲より高めだ。
そういう人へのストーカー行為はしない。
「でも、なんでロギウス殿下がボクに用があるのかな?」
「リョウさんどころか、ジフウさんやシシバさんといったお兄さん方や、ゼロラさんまで呼ばれてるんですよ!」
ジフ兄にシシ兄にゼロラ殿まで?
一体何の要件かな?
でも、ちょうどいい機会だね。
陛下もいるだろうし、旅立つ前に最後の挨拶をしてこよう。
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