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第26章 追憶の番人『斎』
第391話 ミライちゃん・ファンタジック
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一夜明けました。
ゼロラさんはまだ帰って来ていません。
まあ、『二日間ミライちゃんの面倒を見てほしい』と言っていたので、今日中には帰ってくるのでしょう。
「お待たせしましたのです! 早速ヒーローショーごっこを始めるのです!」
そして自分とミリアさんとミライちゃんは、ガルペラさんにお呼ばれして今は王宮の訓練所にいます。
広い場所ですし、まだ王宮から出れないミライちゃんが元気いっぱいに遊ぶためにはもってこいでしょう。
「ねーねー! どうやって遊ぶのー!?」
両手をパタパタさせながら、ミライちゃんは今か今かとハイテンションです。
「まずは役を決めるのです。ミライちゃんは主役の"ミラクル魔法少女"役なのです」
「主役! わたし、主役! わはーい!」
ごっこ遊びとはいえ、主役になれたミライちゃんはピョンピョン跳ねて喜んでいます
「"ミラクル魔法少女"ね……。それなら、ラルフルが持ってたウィッチハットとか、被るといいんじゃないかしら?」
さらにミリアさんからナイスアイデアです。
なんだかんだで付き合ってくれるのですね。
「ですが、自分が魔法使い時代に使ってたウィッチハットなんて、自分でもどこに片づけたか――」
「あっ。それならここにあるわよ」
そう言って、ミリアさんはウィッチハットを取り出しました。
それは紛れもなく、自分が魔法使い時代に被っていたウィッチハットです。
いやいや……。なんでミリアさんが持ってるのですか?
自分でも半ば存在を忘れていたのに……。
「ミリアさん。それをどこで手に入れたのですか?」
「…………」
「あのー……ミリアさん?」
「…………」
だから! お願いですから! 返事をしてください! ミリアさん!!
なんだか、ミリアさんもリョウ大神官に毒されてきていませんか?
もう、深いことは考えないようにしましょう。
「じゃあ、ミライちゃん。アタシがこの帽子を被せてあげるわね」
「わはーい! かぶる! かぶる!」
「いや、それは自分の帽子なんですが……。いいですけど……」
ミリアさんはもはやどこ吹く風と、ミライちゃんに帽子を被せることを優先します。
あれ? でも、ミラちゃんって頭の先端に、大きなアホ毛が二本ありますよね?
帽子をかぶっても、ちゃんと収まるのでしょうか?
ぴょこん!
「わはーい! ラルフルにいちゃんの帽子ー! わははーい!」
「ア、アホ毛が帽子を貫通した……!?」
なんということでしょう。
ミライちゃんの二本のアホ毛は、帽子を貫通して外に出てきました。
恐る恐る確認してみますが、どうやら帽子に穴は開いてないようです。
それでもアホ毛はちゃんと外に出て、ピョコピョコ動いています。
流石は仮にも【伝説の魔王】と【慈愛の勇者】の娘なだけのことはあります。
自分達の常識が通用しません。
「不思議なアホ毛なのです……。まあ、いいのです! 他の配役を決めるのです!」
いいんですか、ガルペラさん……。
確かに深く考えても、仕方のないことな気はしますが……。
ともかく、今はミライちゃんと一緒にヒーローショーごっこを楽しみましょう。
「ミリア様は"囚われの聖女"役でお願いするのです」
「"囚われの聖女"って……。まあ、確かに一応アタシは聖女だけど」
ミリアさんにはピッタリな役ですね。
でも、ご自身で『一応』って言っちゃいますか?
「そして、ラルフル君は"聖女を攫った悪役"をお願いするのです」
「あっ。自分が悪役なのですね……」
配役の都合上仕方がないとはいえ、自分がミリアさんを攫った悪役ですか……。
ちょっと嫌ですけど、ミライちゃんのためです。
ここは甘んじて受け入れましょう。
「それでは早速始めるの――」
「わはーい! ラルフルにいちゃん! かくごー!」
ガルペラさんの合図も聞かず、ミライちゃんが走り出しました。
トタトタ走りながら、自分の方に向かってきます。
そして地面を蹴り、頭から突っ込むこの技は――
「<ミラ・イッテキマス>!!」
「やっぱりですか!?」
ぼごむぅ!!
ミライちゃんの<ミラ・イッテキマス>が自分のお腹に直撃しました。
すごく……痛いです。
なんでこの子、すぐにロケット頭突きをしたがるのでしょうか?
こんなに小さい体なのに、凄まじい力ですし、そもそも<ミラ・イッテキマス>って技名は何ですか?
もう色々ツッコミを入れたくて仕方ないです。
ですが……今は突っ込まれて苦しいです。
「ミ、ミライちゃん? まずは自分も悪役っぽい前口上を――」
「さらにー! <ミラ・インザ・スカイ>!!」
自分が口を挟む間もなく、ミライちゃんは自分の頭上へと飛び上がりました。
びたんっ!!
そしてそのまま、自分の上へとフライングボディプレス。
こんなに小さな体なのに、物凄く痛いです。
後、この子は技名に『ミラ・イ』ってつけないと気が済まないのでしょうか?
そんなことより、そろそろ目が霞んできました――
「ラルフル!? しっかりして!? ラルフルゥーー!!」
自分の隣でミリアさんが必死に叫んでいます。
もう配役なんて関係ないですね。
ですが、自分はここまでのようです――
「ミ……ミリアさん……。自分の死因は……"事故"でお願いしま……す……」
この事態をミライちゃんの責任にしたくはありませんからね。
それだけ言い残して、自分は目を閉じました――
「し、死なないでー! ラルフルゥーー!!」
静かにしてください、ミリアさん。
そろそろ自分も疲れたので、一休みしたいんです。
ゼロラさんはまだ帰って来ていません。
まあ、『二日間ミライちゃんの面倒を見てほしい』と言っていたので、今日中には帰ってくるのでしょう。
「お待たせしましたのです! 早速ヒーローショーごっこを始めるのです!」
そして自分とミリアさんとミライちゃんは、ガルペラさんにお呼ばれして今は王宮の訓練所にいます。
広い場所ですし、まだ王宮から出れないミライちゃんが元気いっぱいに遊ぶためにはもってこいでしょう。
「ねーねー! どうやって遊ぶのー!?」
両手をパタパタさせながら、ミライちゃんは今か今かとハイテンションです。
「まずは役を決めるのです。ミライちゃんは主役の"ミラクル魔法少女"役なのです」
「主役! わたし、主役! わはーい!」
ごっこ遊びとはいえ、主役になれたミライちゃんはピョンピョン跳ねて喜んでいます
「"ミラクル魔法少女"ね……。それなら、ラルフルが持ってたウィッチハットとか、被るといいんじゃないかしら?」
さらにミリアさんからナイスアイデアです。
なんだかんだで付き合ってくれるのですね。
「ですが、自分が魔法使い時代に使ってたウィッチハットなんて、自分でもどこに片づけたか――」
「あっ。それならここにあるわよ」
そう言って、ミリアさんはウィッチハットを取り出しました。
それは紛れもなく、自分が魔法使い時代に被っていたウィッチハットです。
いやいや……。なんでミリアさんが持ってるのですか?
自分でも半ば存在を忘れていたのに……。
「ミリアさん。それをどこで手に入れたのですか?」
「…………」
「あのー……ミリアさん?」
「…………」
だから! お願いですから! 返事をしてください! ミリアさん!!
なんだか、ミリアさんもリョウ大神官に毒されてきていませんか?
もう、深いことは考えないようにしましょう。
「じゃあ、ミライちゃん。アタシがこの帽子を被せてあげるわね」
「わはーい! かぶる! かぶる!」
「いや、それは自分の帽子なんですが……。いいですけど……」
ミリアさんはもはやどこ吹く風と、ミライちゃんに帽子を被せることを優先します。
あれ? でも、ミラちゃんって頭の先端に、大きなアホ毛が二本ありますよね?
帽子をかぶっても、ちゃんと収まるのでしょうか?
ぴょこん!
「わはーい! ラルフルにいちゃんの帽子ー! わははーい!」
「ア、アホ毛が帽子を貫通した……!?」
なんということでしょう。
ミライちゃんの二本のアホ毛は、帽子を貫通して外に出てきました。
恐る恐る確認してみますが、どうやら帽子に穴は開いてないようです。
それでもアホ毛はちゃんと外に出て、ピョコピョコ動いています。
流石は仮にも【伝説の魔王】と【慈愛の勇者】の娘なだけのことはあります。
自分達の常識が通用しません。
「不思議なアホ毛なのです……。まあ、いいのです! 他の配役を決めるのです!」
いいんですか、ガルペラさん……。
確かに深く考えても、仕方のないことな気はしますが……。
ともかく、今はミライちゃんと一緒にヒーローショーごっこを楽しみましょう。
「ミリア様は"囚われの聖女"役でお願いするのです」
「"囚われの聖女"って……。まあ、確かに一応アタシは聖女だけど」
ミリアさんにはピッタリな役ですね。
でも、ご自身で『一応』って言っちゃいますか?
「そして、ラルフル君は"聖女を攫った悪役"をお願いするのです」
「あっ。自分が悪役なのですね……」
配役の都合上仕方がないとはいえ、自分がミリアさんを攫った悪役ですか……。
ちょっと嫌ですけど、ミライちゃんのためです。
ここは甘んじて受け入れましょう。
「それでは早速始めるの――」
「わはーい! ラルフルにいちゃん! かくごー!」
ガルペラさんの合図も聞かず、ミライちゃんが走り出しました。
トタトタ走りながら、自分の方に向かってきます。
そして地面を蹴り、頭から突っ込むこの技は――
「<ミラ・イッテキマス>!!」
「やっぱりですか!?」
ぼごむぅ!!
ミライちゃんの<ミラ・イッテキマス>が自分のお腹に直撃しました。
すごく……痛いです。
なんでこの子、すぐにロケット頭突きをしたがるのでしょうか?
こんなに小さい体なのに、凄まじい力ですし、そもそも<ミラ・イッテキマス>って技名は何ですか?
もう色々ツッコミを入れたくて仕方ないです。
ですが……今は突っ込まれて苦しいです。
「ミ、ミライちゃん? まずは自分も悪役っぽい前口上を――」
「さらにー! <ミラ・インザ・スカイ>!!」
自分が口を挟む間もなく、ミライちゃんは自分の頭上へと飛び上がりました。
びたんっ!!
そしてそのまま、自分の上へとフライングボディプレス。
こんなに小さな体なのに、物凄く痛いです。
後、この子は技名に『ミラ・イ』ってつけないと気が済まないのでしょうか?
そんなことより、そろそろ目が霞んできました――
「ラルフル!? しっかりして!? ラルフルゥーー!!」
自分の隣でミリアさんが必死に叫んでいます。
もう配役なんて関係ないですね。
ですが、自分はここまでのようです――
「ミ……ミリアさん……。自分の死因は……"事故"でお願いしま……す……」
この事態をミライちゃんの責任にしたくはありませんからね。
それだけ言い残して、自分は目を閉じました――
「し、死なないでー! ラルフルゥーー!!」
静かにしてください、ミリアさん。
そろそろ自分も疲れたので、一休みしたいんです。
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