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第26章 追憶の番人『斎』
第389話 諦めたくない思い
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「はぁ~~……」
「長い溜息だね、マカロン」
私は今日、リョウさん向かい合って王都のカフェで話をしている。
ミライちゃんも落ち着いてきたし、どうしてもリョウさんと話したいことがあった。
「リョウさん……。ゼロラさんへの思いって、今もありますか?」
「あるね。前にも言った通り、ボクはゼロラ殿が何者であっても受け入れる。ボクが好きなのは、今も変わらないゼロラ殿さ」
リョウさんは平然とそう言いながら、カップのコーヒーをすする。
私とは違い、迷いなんてない表情が羨ましい――
「でもね、ゼロラ殿のことは諦めようと思うんだ」
「え!? ま、まだ好きなのに!?」
「ゼロラ殿はそもそも結婚してたからね。奥さんは亡くなったけど、娘のミライちゃんはいる。そして何より、今も奥さんのことを愛している。ボクはそういう間に、割り入る主義じゃないんだ」
カップを置いたリョウさんは、また平然と言ってのける。
この人は引き際をわきまえている。なんとも大人な女性の考え方だ。
それに比べて、今だに諦めきれない私のなんと幼稚なことか――
「マカロン。君はゼロラ殿を諦めたくないんだね?」
そんな私の心を見透かすかのように、リョウさんは尋ねてきた。
「はい……諦めたくありません。本当に私って、子供っぽいですよね……」
「それでもいいんじゃないかな? むしろボクみたいに、あっさり諦められちゃう方がどうかしてるよ」
リョウさんは私の思いを肯定してくれている。
あっけからんとした表情で、どこか達観した考えを述べてくれる。
「それにね、マカロン。ボクは君なら、ミライちゃんの"新しいお母さん"になれるとも考えてるんだ」
「え!? わ、私が!? ミライちゃんの!?」
「そう。ミライちゃんは君によく懐いている。ユメ様という実の母がいたとしても、あんなに小さい子には母親が必要なのさ」
リョウさんが言うことも分からなくはない。
だけど――
「そんなの、私みたいな子供っぽい女に―― 痛っ!?」
私がリョウさんに思いの丈を話そうとしたら、急におでこに何かが当たった。
「な、何をしたんですか!? リョウさん!?」
「<魔法デコピン>」
よく見るとリョウさんは、右手でデコピンのポーズをしていた。
この離れた距離でデコピンって……。本当に魔法に関してはこの人って天才ね。
「子供っぽくていいじゃないか。何よりも重要なのは、『ミライちゃんがマカロンを受け入れてくれる』こと。そして、そんなマカロンを『ゼロラ殿も認めてくれている』ってことだよ」
私の話をデコピンで遮ったリョウさんは、自らの考えをかぶせてくる。
「確かにボクは、ゼロラ殿にユメ様という奥さんがいたから諦めた。でも、君も同じように諦める必要なんかない。ある意味これで、ボクは君の恋を純粋に応援できるよ。クフフフ」
リョウさんは笑いながら語ってくれたが、その表情はどこか物憂げだ。
この人が諦めると言った以上事実なのだろうけど、やっぱり思うところがあるのだろう――
「さてと……。ボクはそろそろお暇させてもらうよ。ちょっと用事があるからね」
「用事? 何の用事ですか?」
席を立って離れようとするリョウさんは、振り向きながら私に答えてくれた。
「荷物をまとめるんだよ。ボク、また旅に出ようと思ってね」
「え!? なんでまた旅に!?」
「まあハッキリ言うと、傷心旅行だね……」
私に答えてくれるリョウさんの目は、どこか寂しそうだった。
やっぱりリョウさんもショックだったんだ。
ゼロラさんに奥さんがいて、子供までいたことが――
「マカロン。改めて言うけど、君がゼロラ殿を諦める必要はない。むしろ……諦めないでほしい。ゼロラ殿とミライちゃんを支えられる人間なんて、君ぐらいだろうからね」
「旅に出ても……また、会えますよね?」
「そうだね。ジフ兄もシシ兄も、しばらくはこの国にいるだろうし、気が向いたらまた戻って来るよ。まあ、旅立つ前に挨拶ぐらいはしに行くよ」
戻ってくるとは言ってるけど、それでもやっぱり私も寂しい。
ゼロラさんとの恋のライバルだったけど、今となっては私の良き友人――
そんな人との別れは名残惜しい――
だけど、この人ならすぐにいい相手が見つかるだろう。
後私にできるのは、この人の幸せを願うだけ――
「でも、寂しいからマカロンから記念に何か欲しいな? パンツとか一枚貰ってもいいかな?」
――この変態性さえなければな~……。
「長い溜息だね、マカロン」
私は今日、リョウさん向かい合って王都のカフェで話をしている。
ミライちゃんも落ち着いてきたし、どうしてもリョウさんと話したいことがあった。
「リョウさん……。ゼロラさんへの思いって、今もありますか?」
「あるね。前にも言った通り、ボクはゼロラ殿が何者であっても受け入れる。ボクが好きなのは、今も変わらないゼロラ殿さ」
リョウさんは平然とそう言いながら、カップのコーヒーをすする。
私とは違い、迷いなんてない表情が羨ましい――
「でもね、ゼロラ殿のことは諦めようと思うんだ」
「え!? ま、まだ好きなのに!?」
「ゼロラ殿はそもそも結婚してたからね。奥さんは亡くなったけど、娘のミライちゃんはいる。そして何より、今も奥さんのことを愛している。ボクはそういう間に、割り入る主義じゃないんだ」
カップを置いたリョウさんは、また平然と言ってのける。
この人は引き際をわきまえている。なんとも大人な女性の考え方だ。
それに比べて、今だに諦めきれない私のなんと幼稚なことか――
「マカロン。君はゼロラ殿を諦めたくないんだね?」
そんな私の心を見透かすかのように、リョウさんは尋ねてきた。
「はい……諦めたくありません。本当に私って、子供っぽいですよね……」
「それでもいいんじゃないかな? むしろボクみたいに、あっさり諦められちゃう方がどうかしてるよ」
リョウさんは私の思いを肯定してくれている。
あっけからんとした表情で、どこか達観した考えを述べてくれる。
「それにね、マカロン。ボクは君なら、ミライちゃんの"新しいお母さん"になれるとも考えてるんだ」
「え!? わ、私が!? ミライちゃんの!?」
「そう。ミライちゃんは君によく懐いている。ユメ様という実の母がいたとしても、あんなに小さい子には母親が必要なのさ」
リョウさんが言うことも分からなくはない。
だけど――
「そんなの、私みたいな子供っぽい女に―― 痛っ!?」
私がリョウさんに思いの丈を話そうとしたら、急におでこに何かが当たった。
「な、何をしたんですか!? リョウさん!?」
「<魔法デコピン>」
よく見るとリョウさんは、右手でデコピンのポーズをしていた。
この離れた距離でデコピンって……。本当に魔法に関してはこの人って天才ね。
「子供っぽくていいじゃないか。何よりも重要なのは、『ミライちゃんがマカロンを受け入れてくれる』こと。そして、そんなマカロンを『ゼロラ殿も認めてくれている』ってことだよ」
私の話をデコピンで遮ったリョウさんは、自らの考えをかぶせてくる。
「確かにボクは、ゼロラ殿にユメ様という奥さんがいたから諦めた。でも、君も同じように諦める必要なんかない。ある意味これで、ボクは君の恋を純粋に応援できるよ。クフフフ」
リョウさんは笑いながら語ってくれたが、その表情はどこか物憂げだ。
この人が諦めると言った以上事実なのだろうけど、やっぱり思うところがあるのだろう――
「さてと……。ボクはそろそろお暇させてもらうよ。ちょっと用事があるからね」
「用事? 何の用事ですか?」
席を立って離れようとするリョウさんは、振り向きながら私に答えてくれた。
「荷物をまとめるんだよ。ボク、また旅に出ようと思ってね」
「え!? なんでまた旅に!?」
「まあハッキリ言うと、傷心旅行だね……」
私に答えてくれるリョウさんの目は、どこか寂しそうだった。
やっぱりリョウさんもショックだったんだ。
ゼロラさんに奥さんがいて、子供までいたことが――
「マカロン。改めて言うけど、君がゼロラ殿を諦める必要はない。むしろ……諦めないでほしい。ゼロラ殿とミライちゃんを支えられる人間なんて、君ぐらいだろうからね」
「旅に出ても……また、会えますよね?」
「そうだね。ジフ兄もシシ兄も、しばらくはこの国にいるだろうし、気が向いたらまた戻って来るよ。まあ、旅立つ前に挨拶ぐらいはしに行くよ」
戻ってくるとは言ってるけど、それでもやっぱり私も寂しい。
ゼロラさんとの恋のライバルだったけど、今となっては私の良き友人――
そんな人との別れは名残惜しい――
だけど、この人ならすぐにいい相手が見つかるだろう。
後私にできるのは、この人の幸せを願うだけ――
「でも、寂しいからマカロンから記念に何か欲しいな? パンツとか一枚貰ってもいいかな?」
――この変態性さえなければな~……。
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