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第25章 新たなる世界へ
第377話 三公爵筆頭撃滅戦①
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「やれ! やつらを始末しろぉお!!」
ボーネス公爵の怒号で、甲板にいる魔法使いが火球魔法を放ってきました。
もうこのレベルは、恐れることもありません――
「ハァアア!」
バシンッ!
――自分は拳で、その火球魔法を弾き飛ばします。
「ば、馬鹿な!? こ、ここ、こんな落ちこぼれの小僧が、なんでこんな真似を……!?」
「今の自分は強いです。魔法使いだったあの頃よりも――ずっと……!」
ボーネス公爵は怖気づいていますが、気を抜くわけにはいきません。
この人は"三公爵"の筆頭とも言える人。部下にも優秀な人が揃っているはずです。
「お、おい! もっと一斉に全力で攻撃しろ!」
「し、しかし、そんなことをしては船が――」
「構うものか! 貴様らが踏ん張らねば、わしは終わりなのだ! 言う通りに動かぬか!」
そんなボーネス公爵ですが、船が沈むことなど構わないのか、部下に全力での魔法攻撃を指示してきます。
"三公爵"もここまで落ちぶれましたか……。
哀れですが、向かってくる以上は対抗するしかありません。
部下の魔法使いも仕方なく、魔法の詠唱を始めます。
「敵から高レベルの魔法発動を予期しました。ラルフル様、私の後ろへお下がりください」
敵の魔法が放たれようとする最中、ニナーナさんが自分の前へと出てきました。
両手を広げ、自分を庇うようにしていますが――
「ニ、ニナーナさん!? 危ないです!」
「ご安心ください。<バリアフィールド>、オープン」
ニナーナさんがそう言うと、眼前に膜のようなものが現れました。
バチンッ! バチンッ!
「なっ!? ま、魔法が弾かれているだと!?」
その膜は電撃を放ちながら、飛んできたあらゆる魔法を弾いてしまいます。
こうして自分を守ってくれるニナーナさんを見ると、お母さんに守られているようです。
お母さんが死んだあの日、小さかった自分は何もできませんでした。
そんなお母さんと同じ姿をした、ニナーナさん――
「ニナーナさん。そのまま魔法への防御をお願いします! 魔法使いは自分が倒します!」
「かしこまりました。これより、ラルフル様の防御を優先します」
――そんな人を、自分は失いたくありません。
あの時とは違い、今の自分は戦えます。
ニナーナさんと一緒なら、ボーネス公爵も倒せます!
「テヤァアア!!」
ドカァ! バキィ!
自分はニナーナさんに守ってもらいながら、次々に魔法使いへと飛び掛かります。
懐まで潜り込んでしまえば、自分の方が優勢です。
「グハッ!? つ、強い……!?」
「何をしているんだ!? そんな魔法使い崩れ相手に、なぜ後れを取るのだ!?」
ボーネス公爵は後方で次々に倒れていく部下の魔法使いを見て、慌てふためくばかりです。
ニナーナさんに守られているから、自分は攻撃に専念できます。
気が付けば、敵は残りわずかです。
「ボーネス公爵。大人しく降伏する気は――」
「ない!! わしが貴様らのような落ちこぼれに、屈することなどありえぬ!!」
余裕ができた自分はもう一度ボーネス公爵へ問いかけますが、その声は届きません。
もう身を守る部下も少なく、この船で逃げ切ることも不可能です。
愚かな人ですが、もうここで終わりにしましょう。
「では、覚悟してください。ボーネス公爵……!」
自分は両足に力を込め、一気に地を蹴る準備をします――
「くそぉ! くそぉお!! ここで捕まってたまるか! こうなったら、ジャコウが研究していた副産物で――」
「お、おやめください! あの薬は副作用が――」
「黙れぇえ!! 副作用など気にしていても、捕まるだけの未来など望まぬわぁああ!!」
――そんな時、ボーネス公爵が懐から一本の注射を取り出しました。
部下には止められていますが、あれは一体――
――プスンッ
「うぐぐぅう!? お……オオ……オグォオオオ!!」
ボーネス公爵が自らの腕に注射を刺すと、急に苦しみ始めました。
しかも、その様子はただ事ではありません!
ボーネス公爵の体が膨れ上がり、着ていた服を破るほど巨大化していきます!?
緑色に変色した肌、手から伸びる巨大な爪。
その声も、まるでドラゴンのようなうめき声となり、その存在全てが人からかけ離れて行きます――
「オグァア……! アグァアア!!」
「ボ、ボーネス公爵!? お気を確かに―― ゴハァ!?」
「な、何をなさって―― ゲブゥ!?」
そんな異形の怪物となったボーネス公爵は近くにいた部下を腕で薙ぎ払い、軽々と海へと落としてしまいました。
「アグァアアア!!」
「こ、ここまでして、自らの身を守りたいのですか……!?」
自分も思わず怯んでしまいます。
目の前にいるのは、最早人ではありません。
ブォオン!!
「し、しまった――」
そんなボーネス公爵の姿に驚いていたせいで、振り下ろされた巨大な爪に気付くのが遅れました。
マズいです。この速さは――
「ラルフル様、お下がりくださ――」
ドギャァン!
「ニナーナさん!?」
そんな自分を、ニナーナさんが庇ってくれました。
ニナーナさんに突き飛ばされたことで自分は助かりましたが、ニナーナさん自身が――
「想定以上の……ダメージです。システム……エラー発生……」
ボーネス公爵の怒号で、甲板にいる魔法使いが火球魔法を放ってきました。
もうこのレベルは、恐れることもありません――
「ハァアア!」
バシンッ!
――自分は拳で、その火球魔法を弾き飛ばします。
「ば、馬鹿な!? こ、ここ、こんな落ちこぼれの小僧が、なんでこんな真似を……!?」
「今の自分は強いです。魔法使いだったあの頃よりも――ずっと……!」
ボーネス公爵は怖気づいていますが、気を抜くわけにはいきません。
この人は"三公爵"の筆頭とも言える人。部下にも優秀な人が揃っているはずです。
「お、おい! もっと一斉に全力で攻撃しろ!」
「し、しかし、そんなことをしては船が――」
「構うものか! 貴様らが踏ん張らねば、わしは終わりなのだ! 言う通りに動かぬか!」
そんなボーネス公爵ですが、船が沈むことなど構わないのか、部下に全力での魔法攻撃を指示してきます。
"三公爵"もここまで落ちぶれましたか……。
哀れですが、向かってくる以上は対抗するしかありません。
部下の魔法使いも仕方なく、魔法の詠唱を始めます。
「敵から高レベルの魔法発動を予期しました。ラルフル様、私の後ろへお下がりください」
敵の魔法が放たれようとする最中、ニナーナさんが自分の前へと出てきました。
両手を広げ、自分を庇うようにしていますが――
「ニ、ニナーナさん!? 危ないです!」
「ご安心ください。<バリアフィールド>、オープン」
ニナーナさんがそう言うと、眼前に膜のようなものが現れました。
バチンッ! バチンッ!
「なっ!? ま、魔法が弾かれているだと!?」
その膜は電撃を放ちながら、飛んできたあらゆる魔法を弾いてしまいます。
こうして自分を守ってくれるニナーナさんを見ると、お母さんに守られているようです。
お母さんが死んだあの日、小さかった自分は何もできませんでした。
そんなお母さんと同じ姿をした、ニナーナさん――
「ニナーナさん。そのまま魔法への防御をお願いします! 魔法使いは自分が倒します!」
「かしこまりました。これより、ラルフル様の防御を優先します」
――そんな人を、自分は失いたくありません。
あの時とは違い、今の自分は戦えます。
ニナーナさんと一緒なら、ボーネス公爵も倒せます!
「テヤァアア!!」
ドカァ! バキィ!
自分はニナーナさんに守ってもらいながら、次々に魔法使いへと飛び掛かります。
懐まで潜り込んでしまえば、自分の方が優勢です。
「グハッ!? つ、強い……!?」
「何をしているんだ!? そんな魔法使い崩れ相手に、なぜ後れを取るのだ!?」
ボーネス公爵は後方で次々に倒れていく部下の魔法使いを見て、慌てふためくばかりです。
ニナーナさんに守られているから、自分は攻撃に専念できます。
気が付けば、敵は残りわずかです。
「ボーネス公爵。大人しく降伏する気は――」
「ない!! わしが貴様らのような落ちこぼれに、屈することなどありえぬ!!」
余裕ができた自分はもう一度ボーネス公爵へ問いかけますが、その声は届きません。
もう身を守る部下も少なく、この船で逃げ切ることも不可能です。
愚かな人ですが、もうここで終わりにしましょう。
「では、覚悟してください。ボーネス公爵……!」
自分は両足に力を込め、一気に地を蹴る準備をします――
「くそぉ! くそぉお!! ここで捕まってたまるか! こうなったら、ジャコウが研究していた副産物で――」
「お、おやめください! あの薬は副作用が――」
「黙れぇえ!! 副作用など気にしていても、捕まるだけの未来など望まぬわぁああ!!」
――そんな時、ボーネス公爵が懐から一本の注射を取り出しました。
部下には止められていますが、あれは一体――
――プスンッ
「うぐぐぅう!? お……オオ……オグォオオオ!!」
ボーネス公爵が自らの腕に注射を刺すと、急に苦しみ始めました。
しかも、その様子はただ事ではありません!
ボーネス公爵の体が膨れ上がり、着ていた服を破るほど巨大化していきます!?
緑色に変色した肌、手から伸びる巨大な爪。
その声も、まるでドラゴンのようなうめき声となり、その存在全てが人からかけ離れて行きます――
「オグァア……! アグァアア!!」
「ボ、ボーネス公爵!? お気を確かに―― ゴハァ!?」
「な、何をなさって―― ゲブゥ!?」
そんな異形の怪物となったボーネス公爵は近くにいた部下を腕で薙ぎ払い、軽々と海へと落としてしまいました。
「アグァアアア!!」
「こ、ここまでして、自らの身を守りたいのですか……!?」
自分も思わず怯んでしまいます。
目の前にいるのは、最早人ではありません。
ブォオン!!
「し、しまった――」
そんなボーネス公爵の姿に驚いていたせいで、振り下ろされた巨大な爪に気付くのが遅れました。
マズいです。この速さは――
「ラルフル様、お下がりくださ――」
ドギャァン!
「ニナーナさん!?」
そんな自分を、ニナーナさんが庇ってくれました。
ニナーナさんに突き飛ばされたことで自分は助かりましたが、ニナーナさん自身が――
「想定以上の……ダメージです。システム……エラー発生……」
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