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第25章 新たなる世界へ
第376話 ルクガイア沖海戦⑥
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「へ、陛下が乗ってる船ですか……?」
「はい。ドクター・フロストも一時釈放され、同乗しております。フレイム様は現在も整備中のため、不在です」
自分はニナーナさんに抱えられながら、空の上で戦況を教えてもらいます。
陛下自らが国章を掲げ、ボーネス公爵との戦線の場へと出てきている――
陛下はご自身が生み出してしまった過去への清算のためにも、ここに現れたのでしょう。
ボーネス公爵のような、傲慢な貴族の繁栄との決別。
陛下もそんな思いを込めているように感じます。
「あ、あれ? リョウ大神官は? リョウ大神官はどこですか!?」
陛下の船に気をとられていた自分ですが、辺りを見回すと、同じように空を飛んでいるはずのリョウ大神官が見当たりません。
ま、まさか……やられてしまったのですか……!?
「スコープによる確認結果を報告します。リョウ大神官の情報と一致する人物を発見しました。現在、国王陛下の船で手当てを受けています」
「ほ、本当ですか!? よ、よかった……」
ニナーナさんの話を聞く限り、リョウ大神官は一度やられたようです。
ですが、陛下の船に救助されたのですね――
落ち着いた自分は、再度上空からそれぞれの船を確認します。
一隻はすでに船体がほとんど沈んでいます。
時折、青色と黒色の風魔法が見えることから、ジフウさんが乗り込んだ船でしょう。
その近くの一隻の上で、シシバさんが戦っています。
甲板の上を猛スピードで往復しながら、人も物も薙ぎ払っています。
さらに反対方向。自分が本来乗り込むはずだった船も、沈みつつあります。
そしてその横にある船も、どんどんと沈んでいます。
……甲板の上で、サイバラさんが怒鳴り散らしながら砲弾を投げつけてますね。
やっぱり生きてたんですね、あの人。本当に頑丈です……。
「ボーネス公爵が乗る旗艦も、国王陛下の船より攻撃を受けております。すでに船底は大破。ドクター・フロストとバクト公爵により、甲板上の船員も残り二十パーセント程です」
「バクトさんも来てるのですか!?」
「国王陛下はボーネス公爵の動きを事前に想定。バクト公爵に秘密裏に協力を依頼。ドクター・フロストが一時的に釈放されたのも、その影響です」
自分では遠くて見えないボーネス公爵が乗った旗艦の状況も、ニナーナさんは教えてくれました。
これだけの人達が、自分達のために集まってくれたのですか――
なんだか、感慨深いです。
「ん? あれ? 旗艦の近くにある船が、急に離れて行きますよ?」
「旗艦より離れた一隻を、目標として補足しました。――ボーネス公爵が乗っています」
「ボーネス公爵が!?」
ニナーナさんが教えてくれた内容から、おおよその状況は理解しました。
ボーネス公爵は逃げるつもりです!
こんな状況で逃げ道はないはずですが、それでも逃がすわけにはいきません!
ゼロラさんやミライちゃんを襲った人を――見過ごすことなんてできません!
「ニナーナさん! あの船まで自分を運んでください!」
「承知いたしました、ラルフル様。これよりこのニナーナ、ボーネス公爵が乗る船へと接近いたします」
自分の願いを聞いて、ニナーナさんは自分を抱えたまま、ボーネス公爵の船へと接近します。
ボーネス公爵はこれまでの貴族の腐敗の象徴とも言える人です。
自分の手で、その人を打ち倒してみせます!
■
「おい! もっとスピードを出せ! 早くここから――」
「ボーネス公爵! 逃げるつもりですか!?」
船上で怒鳴りながら指揮を執るボーネス公爵の前に、自分とニナーナさんは降り立ちました。
周囲には大勢の魔法使い―― 風魔法を使って、船の速度を最大限まで上げているようですね。
「き、貴様は確か、勇者パーティーの落ちこぼれだったか!? 貴様のようなクズが、わしに歯向かうつもりかぁあ!?」
「『落ちこぼれ』でも『クズ』でも、なんでも結構です。ですが、自分はあなたを逃がしません」
ボーネス公爵は鬼気迫る形相で、自分を睨みます。
以前の自分なら、怖気づいて引き下がってしまったでしょう。
ですが、今は違います。
今の自分には確かな自信があります。
肉体的にも、精神的にも、自分は数段成長しています。
――自分はボーネス公爵を睨み返します。
「くぅ……!? こんな小僧が、わしに逆らうとは……!? ええい! 貴様ら! わしを守れ! そして、この者達を始末しろぉお!!」
ボーネス公爵は部下に命じて、自分とニナーナさんを囲んできました。
敵のほとんどは魔法使い――
まるで、昔の自分を相手にするようです。
「ラルフル様。このニナーナ、戦闘モードに移行します。ラルフル様を援護します」
「ありがとうございます! ニナーナさん!」
ですが、不思議と負ける気はしません。
あの時より強くなった自分。傍で力になってくれるニナーナさん。
自分達二人で、ボーネス公爵を倒します!
「はい。ドクター・フロストも一時釈放され、同乗しております。フレイム様は現在も整備中のため、不在です」
自分はニナーナさんに抱えられながら、空の上で戦況を教えてもらいます。
陛下自らが国章を掲げ、ボーネス公爵との戦線の場へと出てきている――
陛下はご自身が生み出してしまった過去への清算のためにも、ここに現れたのでしょう。
ボーネス公爵のような、傲慢な貴族の繁栄との決別。
陛下もそんな思いを込めているように感じます。
「あ、あれ? リョウ大神官は? リョウ大神官はどこですか!?」
陛下の船に気をとられていた自分ですが、辺りを見回すと、同じように空を飛んでいるはずのリョウ大神官が見当たりません。
ま、まさか……やられてしまったのですか……!?
「スコープによる確認結果を報告します。リョウ大神官の情報と一致する人物を発見しました。現在、国王陛下の船で手当てを受けています」
「ほ、本当ですか!? よ、よかった……」
ニナーナさんの話を聞く限り、リョウ大神官は一度やられたようです。
ですが、陛下の船に救助されたのですね――
落ち着いた自分は、再度上空からそれぞれの船を確認します。
一隻はすでに船体がほとんど沈んでいます。
時折、青色と黒色の風魔法が見えることから、ジフウさんが乗り込んだ船でしょう。
その近くの一隻の上で、シシバさんが戦っています。
甲板の上を猛スピードで往復しながら、人も物も薙ぎ払っています。
さらに反対方向。自分が本来乗り込むはずだった船も、沈みつつあります。
そしてその横にある船も、どんどんと沈んでいます。
……甲板の上で、サイバラさんが怒鳴り散らしながら砲弾を投げつけてますね。
やっぱり生きてたんですね、あの人。本当に頑丈です……。
「ボーネス公爵が乗る旗艦も、国王陛下の船より攻撃を受けております。すでに船底は大破。ドクター・フロストとバクト公爵により、甲板上の船員も残り二十パーセント程です」
「バクトさんも来てるのですか!?」
「国王陛下はボーネス公爵の動きを事前に想定。バクト公爵に秘密裏に協力を依頼。ドクター・フロストが一時的に釈放されたのも、その影響です」
自分では遠くて見えないボーネス公爵が乗った旗艦の状況も、ニナーナさんは教えてくれました。
これだけの人達が、自分達のために集まってくれたのですか――
なんだか、感慨深いです。
「ん? あれ? 旗艦の近くにある船が、急に離れて行きますよ?」
「旗艦より離れた一隻を、目標として補足しました。――ボーネス公爵が乗っています」
「ボーネス公爵が!?」
ニナーナさんが教えてくれた内容から、おおよその状況は理解しました。
ボーネス公爵は逃げるつもりです!
こんな状況で逃げ道はないはずですが、それでも逃がすわけにはいきません!
ゼロラさんやミライちゃんを襲った人を――見過ごすことなんてできません!
「ニナーナさん! あの船まで自分を運んでください!」
「承知いたしました、ラルフル様。これよりこのニナーナ、ボーネス公爵が乗る船へと接近いたします」
自分の願いを聞いて、ニナーナさんは自分を抱えたまま、ボーネス公爵の船へと接近します。
ボーネス公爵はこれまでの貴族の腐敗の象徴とも言える人です。
自分の手で、その人を打ち倒してみせます!
■
「おい! もっとスピードを出せ! 早くここから――」
「ボーネス公爵! 逃げるつもりですか!?」
船上で怒鳴りながら指揮を執るボーネス公爵の前に、自分とニナーナさんは降り立ちました。
周囲には大勢の魔法使い―― 風魔法を使って、船の速度を最大限まで上げているようですね。
「き、貴様は確か、勇者パーティーの落ちこぼれだったか!? 貴様のようなクズが、わしに歯向かうつもりかぁあ!?」
「『落ちこぼれ』でも『クズ』でも、なんでも結構です。ですが、自分はあなたを逃がしません」
ボーネス公爵は鬼気迫る形相で、自分を睨みます。
以前の自分なら、怖気づいて引き下がってしまったでしょう。
ですが、今は違います。
今の自分には確かな自信があります。
肉体的にも、精神的にも、自分は数段成長しています。
――自分はボーネス公爵を睨み返します。
「くぅ……!? こんな小僧が、わしに逆らうとは……!? ええい! 貴様ら! わしを守れ! そして、この者達を始末しろぉお!!」
ボーネス公爵は部下に命じて、自分とニナーナさんを囲んできました。
敵のほとんどは魔法使い――
まるで、昔の自分を相手にするようです。
「ラルフル様。このニナーナ、戦闘モードに移行します。ラルフル様を援護します」
「ありがとうございます! ニナーナさん!」
ですが、不思議と負ける気はしません。
あの時より強くなった自分。傍で力になってくれるニナーナさん。
自分達二人で、ボーネス公爵を倒します!
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