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第24章 常なる陰が夢見た未来
第362話 【正義が生んだ怪物】④
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「アアァアァアァアアアァアッ!!??」
バリアが砕かれ、ミライが絶叫をあげる。
バリアもまた<ミラークイーン>の一部だったのか、ミライは両手で顔を押さえながら悲痛な叫びをあげる。
勝利を確信した俺の体から、<黒色のオーラ>も消えていく。
この子の叫びを聞くのは辛い。
だが、これでようやく終わる――
ビキッ―― ビキキッ――
空間にヒビが入り、ミライによって作り出された世界が崩壊していく。
巨大化していた<ミラークイーン>も霧のように消えていき、俺とミライは元いた魔王城の玉座の間へと戻っていった――
■
「ゼ、ゼロラさん! 無事ですか!?」
「あの女の子と一緒に消えて……。自分達、ずっと心配だったんですよ!」
玉座の間へと戻った俺に、マカロンとラルフルが慌てて駆け寄ってくれた。
ジフウとリョウも俺の傍へと近づいてきた。
どうやら四人とも無事だったようだ。
そして、俺の目の前にいる少女へと目を向ける――
「なあ、ゼロラ……。あの女の子――ユメ様の娘、ミライはどうなったんだ……?」
「さっきからあの子、ずっと地べたに座り込んでるけど……」
目線の先にいるのは、ミライ。
俺に敗れたことで、完全に戦意を喪失したのだろう。
ずっと下を向いたまま、地べたに座って固まっている。
「アアァ……ナゼ……ナゼなんダァ……。ドウして人間如きニ、ワタシが負けるンダァ……。ウアァァアアン……!」
暫く黙っていたミライだが、現状を理解し始めると、上を向いて泣き始めた。
その両眼から大量の血の涙を流し、年相応の人間の少女のように、ワンワンと泣き続ける。
「自分……この子が悪いようには見えません。だってこの子はご両親が死んでから、ずっと一人っきりだったんです……。自分よりもずっと小さい、こんな女の子が一人で……」
ラルフルはミライの姿を悲しそうに見ている。
「私だってラルフルと同じ気持ちです……。この子は勇者に――人間の正義によって、怪物にさせられてしまった……。多くの人々を苦しめた、<ナイトメアハザード>の元凶だけど……!」
「ボクもこの子を恨む気持ちにはなれないよ……。魔幻塔でボクを操った元凶だけど、両親を人間に奪われたこんなに小さな女の子を恨むなんて……。むしろ、ボク達が恨まれるのも仕方ないよ……」
マカロンとリョウも、ラルフルと同じ気持ちだ。
ミライへの敵意などない。
あるのはただ、両親を人間に奪われ、自らも半分は人間であることさえ忘れてしまった、ミライへの憐み――
【正義が生んだ怪物】への悲痛な思い――
「ゼロラ……俺からも頼む。ミライはあの【慈愛の勇者】――ユメ様の娘だ。どうか、悪いようにだけはしないでくれ……」
ジフウも悲痛な表情で、俺へと訴えかけてくる。
「今さらワタシに情ケをカケルなァ……! モウ、殺してクレェ……! ワタシを父ト母のモトへと、連れて行ッテくれェ……!」
そんな四人の言葉を聞いたミライだが、この子はこの絶望した世界に完全に嫌気がさしたようだ。
自らを殺すよう、俺達へと泣きながら迫ってくる――
「早ク、殺シテくれェ……。ヒッグ! ワタシの世界ハ、終ワッタ――」
「そんなことを言わないでくれ、ミライ」
俺は腰を落とし、座ったまま泣きじゃぐるミライと目線を合わせる。
そして、その目をジッと見つめる――
こんな時、ユメならば「そんなこと言うんじゃありません!」と言って、ミライを叱るんだろうな。
だが――今の俺にそれはできない。
俺がいなくなったあの日から、今日までこうして生きていてくれた。
俺にとっては、そのことだけが他の何にも代えられない――
それだけが、ただただ嬉しい――
そんな思いを込めて、俺はミライの体を抱きしめた。
優しく、でも力強く。ミライを暖かく包み込むように――
「ナ、ナンのツモリだ……?」
「ごめんな……ミライ……! 一人っきりにさせて……!」
『俺が何者なのか?』――
その答えは、もう出ている――
バリアが砕かれ、ミライが絶叫をあげる。
バリアもまた<ミラークイーン>の一部だったのか、ミライは両手で顔を押さえながら悲痛な叫びをあげる。
勝利を確信した俺の体から、<黒色のオーラ>も消えていく。
この子の叫びを聞くのは辛い。
だが、これでようやく終わる――
ビキッ―― ビキキッ――
空間にヒビが入り、ミライによって作り出された世界が崩壊していく。
巨大化していた<ミラークイーン>も霧のように消えていき、俺とミライは元いた魔王城の玉座の間へと戻っていった――
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「ゼ、ゼロラさん! 無事ですか!?」
「あの女の子と一緒に消えて……。自分達、ずっと心配だったんですよ!」
玉座の間へと戻った俺に、マカロンとラルフルが慌てて駆け寄ってくれた。
ジフウとリョウも俺の傍へと近づいてきた。
どうやら四人とも無事だったようだ。
そして、俺の目の前にいる少女へと目を向ける――
「なあ、ゼロラ……。あの女の子――ユメ様の娘、ミライはどうなったんだ……?」
「さっきからあの子、ずっと地べたに座り込んでるけど……」
目線の先にいるのは、ミライ。
俺に敗れたことで、完全に戦意を喪失したのだろう。
ずっと下を向いたまま、地べたに座って固まっている。
「アアァ……ナゼ……ナゼなんダァ……。ドウして人間如きニ、ワタシが負けるンダァ……。ウアァァアアン……!」
暫く黙っていたミライだが、現状を理解し始めると、上を向いて泣き始めた。
その両眼から大量の血の涙を流し、年相応の人間の少女のように、ワンワンと泣き続ける。
「自分……この子が悪いようには見えません。だってこの子はご両親が死んでから、ずっと一人っきりだったんです……。自分よりもずっと小さい、こんな女の子が一人で……」
ラルフルはミライの姿を悲しそうに見ている。
「私だってラルフルと同じ気持ちです……。この子は勇者に――人間の正義によって、怪物にさせられてしまった……。多くの人々を苦しめた、<ナイトメアハザード>の元凶だけど……!」
「ボクもこの子を恨む気持ちにはなれないよ……。魔幻塔でボクを操った元凶だけど、両親を人間に奪われたこんなに小さな女の子を恨むなんて……。むしろ、ボク達が恨まれるのも仕方ないよ……」
マカロンとリョウも、ラルフルと同じ気持ちだ。
ミライへの敵意などない。
あるのはただ、両親を人間に奪われ、自らも半分は人間であることさえ忘れてしまった、ミライへの憐み――
【正義が生んだ怪物】への悲痛な思い――
「ゼロラ……俺からも頼む。ミライはあの【慈愛の勇者】――ユメ様の娘だ。どうか、悪いようにだけはしないでくれ……」
ジフウも悲痛な表情で、俺へと訴えかけてくる。
「今さらワタシに情ケをカケルなァ……! モウ、殺してクレェ……! ワタシを父ト母のモトへと、連れて行ッテくれェ……!」
そんな四人の言葉を聞いたミライだが、この子はこの絶望した世界に完全に嫌気がさしたようだ。
自らを殺すよう、俺達へと泣きながら迫ってくる――
「早ク、殺シテくれェ……。ヒッグ! ワタシの世界ハ、終ワッタ――」
「そんなことを言わないでくれ、ミライ」
俺は腰を落とし、座ったまま泣きじゃぐるミライと目線を合わせる。
そして、その目をジッと見つめる――
こんな時、ユメならば「そんなこと言うんじゃありません!」と言って、ミライを叱るんだろうな。
だが――今の俺にそれはできない。
俺がいなくなったあの日から、今日までこうして生きていてくれた。
俺にとっては、そのことだけが他の何にも代えられない――
それだけが、ただただ嬉しい――
そんな思いを込めて、俺はミライの体を抱きしめた。
優しく、でも力強く。ミライを暖かく包み込むように――
「ナ、ナンのツモリだ……?」
「ごめんな……ミライ……! 一人っきりにさせて……!」
『俺が何者なのか?』――
その答えは、もう出ている――
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