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第24章 常なる陰が夢見た未来

第356話 全てが揃ったこの人は……?

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 ゼロラさんは元魔王軍四天王のダンジェロという人と戦った後、何も言わずに先へと進んでいます。
 さっきの部屋を抜けた先にあったのは、長い長い廊下――
 そこをゼロラさんを先頭に、自分達五人はどんどんと突き進んで行きます。
 辺りに立ち込め、どんどんと濃くなっていく<ナイトメアハザード>――
 その根源がこの先にいることを物語っています。

 ゼロラさんだけが光魔法に守られず、なおも生身のままで突き進んでいます――

「もうすぐだ。もうすぐ会えるんだな――」

 ゼロラさんの表情からはどこか複雑な思いを感じます。
 不安と期待、焦りと喜び――
 いろいろな感情をその表情から伺えます。

「ゼロラさん……。なんだか、普段と様子が全然違う……」

 そんなゼロラさんを、お姉ちゃんは不安そうに見ています。

「おそらく、記憶が戻ってきているんだ。だからゼロラ殿の頭の中は今、様々な思考が入り乱れている。その思考に自らの体を動かされているのだろう」

 リョウ大神官は心配しながらも、今のゼロラさんについて分析してくれます。
 先頭を行くゼロラさんは、ただ前だけを見て、急ぐ気持ちを抑えるように歩いています。
 ゼロラさんに自分達の会話は聞こえていないようです。
 それほどまでに体を動かすものが、この先にあるのでしょう――

「ゼロラの記憶か……。<ナイトメアハザード>が効かなかったことといい、ダンジェロの動きを読んでるようだったことといい―― もしかしたら、ゼロラは本当に生き残った歴代の勇者の一人だったのか……?」

 ジフウさんもそんなゼロラさんの姿を見て、ゼロラさんの正体について考えます。
 確かにジフウさんの言う通り、ゼロラさんが勇者だったのならばそれらのことに納得できます。

 この<ナイトメアハザード>はおそらく、<魔王の闇>と近い性質を持つ力――
 その力の中にあっても、勇者だけが持つ<勇者の光>があれば、無力はできるでしょう。
 先程のダンジェロという人との戦いで見せた、相手の技を読むような動き――
 あの人と戦ったことがある人は、おそらく歴代の勇者やジフウさんのようなその仲間達でしょう。



 ――ですが、自分は"もう一つの可能性"を考えます。
 <魔王の闇>が効かず、魔王軍四天王のことを知っている――
 それに当てはまる人は、勇者以外にも存在します。

 そして、もし自分の考えが正しければ、ゼロラさんの正体は――



「あの……皆さん。もし、ゼロラさんが記憶を取り戻して、"本当は誰だったのか"が分かった時。皆さんは"ゼロラさんが何者であっても"、これまで通りに接しますか?」

 自分は胸の中にある不安を、ゼロラさん以外の三人に吐き出しました。

「ああ、変わらないな。ゼロラが例え過去に大罪人であったとしても、俺は今のゼロラを認めてる」

 ジフウさんは普段通りの表情で、ゼロラさんへの気持ちを語ってくれました。

「ボクもジフ兄と同意見だね。ゼロラ殿がたとえ何者だろうと、ボクは"今のゼロラ殿"を慕っている。その気持ちは変わらないし、もしこの先にあることでゼロラ殿に変化があっても、ボクは受け止めるよ」

 リョウ大神官も兄であるジフウさんと同じ意見です。
 この人は本当にゼロラさんのことが好きなんですね。

「ラルフルだって同じ気持ちでしょ? お姉ちゃんも同じよ。ゼロラさんの正体が誰であっても――私はその事実を受け止める!」

 お姉ちゃんも他の人と同じです。
 お姉ちゃんだってリョウ大神官に負けないぐらい、ゼロラさんのことが好きです。

 そしてお姉ちゃんが言う通り、自分も皆と同じ気持ちです。

「皆で受け止めましょう。ゼロラさんが失った記憶と過去――そこにある、ゼロラさんの正体を――」

 今は自分にできることをしましょう。
 自分の役目はガルペラ侯爵から受け取った<転移魔法陣>のお札を使い、先に玉座の間にたどり着いているレイキース様を追い払うこと――

 それが自分に託された役目。
 ゼロラさんにとっての、最大の手助けなのですから――
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